幻の8インチのゲーム

1970年、IBMによって開発された8インチディスク。皆さんは子供の顔ほどもあるこの巨大なフロッピーディスクをご存知でしょうか?

一昔前には国産のPCでも8インチメディアが広く採用されており、80年代前半まで、いくつかのゲームも8インチで発売されていました。他のフロッピーと同様に残念ながらこの8インチもドライブ、メディアとも90年代後半には生産がすべて終了してしまっています。

私たちゲーム保存協会では、失われ行く旧世代のゲームを将来に残す活動の一つとして、この珍しい8インチディスクに関する取組みを続けています。 ラボでは様々な技術を駆使して保存活動を行っていますが、今回はそうした取組みの一つであるイメージデータとしての8インチゲームの保存方法について、入手なども比較的容易なやり方での保存方法をざっとお伝えしたいと思います。

必要なものは:

1、5.25インチをサポートしているPC/AT機(DOS/V機) BIOSのFDDの中に1.25メガバイト5.25インチをサポートしたものが必要です。

2、8インチのドライブ これがないと始まりませんよね。今回使用したドライブはNEC製のPC-9881nに内蔵されている「FD1165A」というものです。 PC/AT機と接続する上での注意点は「ドライブ番号」と「VFO」です。 「ドライブ番号」ですが、PC/AT機はケーブルを撚ることでドライブA、Bを分けており、ディスクドライブの基盤上での番号はどちらも「1」になります。 「FD1165A」もドライブ番号を「1」に設定しましょう。 次に「VFO」ですが、これを無効にする必要があります。 ドライブの基盤上に「RD」と記載されたジャンパがあると思います。これを「センターと2」へジャンパすると無効になります。 ドライブの準備はこれでOKです。

3、イメージ化のソフト 今回はエミュレータなどで広く使用されている形式としてイメージ化を試みますので、DOS環境でM88エミュレータの周辺ツールである「DITT」を使用させていただきました。 「DITT」を制作されたcisc氏に感謝いたします。

4、8インチドライブに必要な信号を作成してくれる「D Bit製 FDADAP」アダプター 今回のキモです。 8インチドライブは「TG43」や「motor on」と呼ばれる、3.5インチや5.25インチのドライブでは使用されていない信号が動作に必要です。 PC/AT機と8インチドライブの中間に接続することで、これらの信号を作り出し、ドライブとやりとりしてくれるアダプターです。

5、接続するケーブル50ピンのフラットケーブルはいわゆる内蔵SCSIのもので問題ありません。 その他、PCとドライブを接続するFDDのケーブルは通常のものを使用しました。 今回の場合、ドライブAをDOSのシステム起動に利用し、ドライブBを8インチドライブの接続としました。 イメージ化したファイルの保存先などにUSBメモリーを使用すると作業が楽です。

これらを接続し早速イメージ化です。

1つの注意する点は「FD1165A」と「FDADAP」を接続する際にピンの配置が180度反転している点です。 ケーブルを反転して接続することだけ注意してください(1ピン側を50ピン側にする)。 この際、逆挿し防止の為のノッチ部分は削るなどの加工が必要です。

私の所有している8インチのゲーム「LOCUS-98」をイメージ化してみました。 資料によると1983年の発売とのこと。私は小学校低学年の頃で父のPC-9801でプレイしていました。 フォーマットはPC-98シリーズのディスクBASICのもの、いわゆるIBMフォーマットです。 「DITT」は163トラックまでイメージ化してしまいますが、8インチのドライブは153トラックまでしか存在しません。 154トラック以降は不要ですので、バイナリエディタなどで消去しましょう。

作成されたイメージをエミュレータで確認してみます。 懐かしい記憶が蘇りますね。

ゲーム保存協会では今回例として取り上げた「LOCUS-98」の他にもいくつかのイメージを作成しましたが、8インチメディアは劣化がかなり深刻です。 非常に珍しい8インチディスク版のゲームソフトを苦労して収集しても、ディスク自体の損傷が激しくて読み込めないものも多々あります。こういったディスクはもう諦めるしかないのでしょうか?

ゲーム保存協会では文化研究資料として、そして文化財として、未来に残す資料としてふさわしい形での保存について、国内外の研究者の力を結集し研究開発してきました。現在では、ご紹介した保存方法よりもさらに高精度の保存技術が開発されており、8インチなどの特殊なメディアに関しても、通常のドライブでは読み込めないような深いレベルでディスクを読み取って保存できる特殊な機器を駆使し、保存活動を進めています。 8インチ、そして5.25インチは、フロッピーディスクの経年数や形状的特長から、特に劣化が激しく、保存が急がれるメディアです。 ドライブについても、きちんと動作するものを確保するのはとても大変です。

私たちは、多くの人と協力しながら、未来へとゲームを残して行きたいと願っています。

ゲーム保存協会 福田

FDADAPアダプター: http://www.dbit.com/fdadap.html

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