雑誌内容のキーワード検索サービスと著作権法上の位置付けについて

当協会が今回のクラウドファンディングで実現しようとしているのは、過去に発売された雑誌記事の中から、特定のキーワードがどこにあるのか、その出典を提供する検索サービスです。当然のことながら、雑誌は刊行から数十年たったといえ、権利の存続する著作物です。皆様の中には、著作権法との兼ね合いで、合法的なサービスなのかどうか懸念を持たれる方もいらっしゃると思います。そこで、どのようにして法律を遵守しつつ、サービスを実現するかについて、当協会の見解を説明したいと思います。

私的利用と軽微利用

著作権法上、雑誌をスキャンしてデータ化する行為は複製に当たります。この複製が法的に認められるケースはいくつかありますが、一般に知られるのは私的利用です(著作権法30条)。例えばテレビ放映している番組を家庭で録画する行為は私的利用にあたり、法に抵触することはありません。しかしながら、NPOを含む法人が行う活動は基本的に事業であるため、この私的利用には当たらないという解釈が一般的です。たとえば、新聞記事を社内回覧する目的でスキャンしてメールで送るなどの行為は私的利用にはあたりません。

当協会の予定しているサービスが依拠しようとしているのは、著作権法47条の5(電子計算機による情報処理及びその結果の提供に付随する軽微利用等)という条文です。この条文は、さまざまな情報のデジタル化ネットワーク化が進む中で、著作権者の権利を守りつつ、データを合法的に利用できるようにして社会の利便性を高めようという目的で、平成30年の法改正で施行されたものです。

具体的な内容は、「検索サービス」や「情報解析サービス」や「その他の、新たな知見又は情報を創出し、その結果を提供する行為であつて、国民生活の利便性の向上に寄与するものとして政令で定めるもの」が、合法的な利用として認められています。当協会が実現しようとしているものは、これらに合致するものです。

このようなサービスは他の団体でも検討されており、たとえば日本新聞協会は「著作権法第 47 条の 5 と新聞記事の利用について Q&A」という文章を発表しており、その中で「新聞名」「日付」「見出し」「ごく短い本文」「サムネイル」などが軽微利用として使えるものとして挙げられています。

いずれの解釈においても重要視されるのは、著作権者の利益を害さないことです。オリジナルの著作物の市場に影響があるような利用は法の趣旨に反すると解されるのが適当でしょう。例えば掲載サムネイルを見れば足りるので掲載誌を買わない、などということがあれば、これは著作権者の利益を害していると言えるでしょう。この点につき、当協会はあくまで求めるキーワードが掲載されているページを探すための補助として足りる程度のサイズのサムネイルを作成し、実際の記事の代替とはならないように配慮をいたします。また、キーワードの掲載されたページ全文を表示することはせず、元資料を探すのに必要な範囲でのみ検索結果として表示することを検討しています。

当協会が実現しようとしているサービスに類似したものが少ないのは、掲載ページの全文検索を実現するための作業量が膨大であるからと思われます。たとえば日本語のOCR精度はまだ課題の残る状態で、どうしても人の手が掛かることが予想されます(例えば、ハイフン、ダッシュ、音引きの区別など、OCRでは認識が困難です)。当団体のように、非営利であるからこそこれらの労力をかけ、公共に資するサービスが実現できるものと確信しています。