公共性の高い取り組みを目指して
2011年に設立したNPO法人ゲーム保存協会は、これまで、日本の貴重なゲーム資料を保存するため、公共性を保ち中立的な立場から活動を続けてきました。2015年には、所蔵する雑誌・書籍のうち、国会図書館などにも収蔵がない資料を含む2200冊を一般公開し、現在も資料を必要とする一般の利用者が無料で閲覧できる資料室として本部の一部を開放しています。
そして2017年、いよいよNPO法人ゲーム保存協会のゲームソフト・アーカイブの公開が決定しました。今週11月25日から、一般の利用者の受け入れを開始します。
ゲームはともすると商品として扱われ、利益と離れた真面目な研究や調査のために資料を閲覧したい人たちがいても、一般図書館や博物館に収蔵されていないなどの理由から、無料で資料を見られる場所がほとんどありません。ゲームの歴史を残すには、私利私欲から離れてゲーム保存の未来のために何が出来るか考え、行動する必要があります。NPO法人ゲーム保存協会は以前から、団体が所蔵するゲーム・ソフトを、それを必要とする多くの人と共有したいと考えてきました。
アーカイブの意義
現在、日本の各市町村には一般市民が必要に応じ自由に図書を閲覧できる図書館があります。古今東西の名画や歴史資料を展示する美術館や博物館では、多くの人に自由に資料を見てもらえるよう展示が行われ、こうした文化の共有が、次世代の文化活動を活性化し豊かな未来を作っていくと言われています。図書館や博物館のように、資料を蓄積し展示や貸し出しができるよう管理する機関を、アーカイブと呼びます。この社会に活きる全ての人が必要な時に必要な資料を手に取れることは、平等な社会を作るためにとても重要なことですが、ゲームに関しては、これまでそうしたアーカイブが存在しませんでした。レトロ・ゲームとも呼ばれる古いビデオ・ゲーム資料はオークションで高値で売られ、一般の図書館や資料館には所蔵がありません。これから発展していくであろうゲームの歴史研究や、これから作品を作る若いクリエイターを育てるには、一般の利用者が限られた予算でもゲーム資料を見ることのできる環境作りが大切です。
ゲーム保存協会の公開資料
誰もが活用できるゲーム・アーカイブを作る。これはNPO法人ゲーム保存協会の長年の夢でした。ただでさえ資料数が多く収集も修復も困難なゲームのアーカイブは、様々な困難を伴う壮大な計画ですが、今回はその記念すべき第一歩として、NPO法人本部にあるアーカイブの一部を公開します。
世界でもゲーム・ソフトを一般公開しているアーカイブ機関は非常に少なく、日本ではNPO法人ゲーム保存協会が初のアーカイブ機関となります。また、今回公開するのは80年代を中心に日本独自の発展を遂げたPCゲームソフトのアーカイブで、日本のPCソフトを閲覧可能なアーカイブは、NPO法人ゲーム保存協会が世界で唯一となります。
公開するのは本部アーカイブ室にある2万本以上の資料のうち、一般公開の準備ができている6300本のソフト。20世紀のPCゲームの歴史における重要な資料の数々が含まれています。
閲覧可能なアーカイブのリスト(ゲーム)
閲覧可能なアーカイブのリスト(雑誌)
これからにつながる取り組み
今回の公開は、あくまでも最初の一歩でしかありません。アーカイブには今後も閲覧可能な資料を追加していく予定です。さらにこうした貴重な資料を劣化消失から守るための保存作業も続けていきます。このアーカイブをきっかけに、ゲーム研究のフィールドが広がること、そして、このアーカイブを活用して、次世代のクリエイティブな動きが起こることを願っています。今まで、手に取ってみることのできなかった古いゲームソフトを、実際に見たり、遊んだりできる活きたアーカイブとして、意義ある取り組みを続けていきたいと思いますので、この活動に意味があると感じる方には、ぜひNPO法人ゲーム保存協会のサポーターとして継続的なご支援ご協力をお願いいたします。
アーカイブの利用について
今回公開するNPO法人ゲーム保存協会のゲーム・アーカイブは、磁気媒体のソフトや壊れやすいハード機器など脆弱な資料を扱う専門のアーカイブです。多くの利用者に自由に資料を閲覧いただくことが理想ではありますが、資料の性質上、また管理運営の問題から、現在はいくつか利用の制限を設けています。
まず、資料の安全性を守るためにも、アーカイブを利用される方には出来る限り、NPO法人ゲーム保存協会へのサポーター登録をお願いしております。
次に、利用時には資料の閲覧理由と閲覧資料名を明示いただきます。特に閲覧理由には、記事執筆のための調査、論文資料としてなど、最終的に公開・発表されるプロジェクトをお尋ねしております。著作権など権利をお持ちの方からの各種お問い合わせもお受付けいたします。
実際の資料閲覧は、予約フォームからいくつか必要事項を送信いただいたのち、アーカイブ担当者との日程調整をお願いしております。その後、決められた日時に世田谷区の本部にて資料を閲覧いただきます。資料閲覧時に必要なハードウェアがある場合は、本部にてご用意いたします。
アーカイブ利用の予約フォーム
なぜサポーターが必要なのか
世界初となるPCソフトのアーカイブは、国の図書館でも博物館でもなく、一般のNPO法人が運営しています。最近になってようやく、文化庁が主体となってゲームを文化として認めるよう動き出してはおりますが、ゲーム作品の閲覧ができる国立のアーカイブが実現するまでにはまだ長い時間がかかるでしょう。ゲームの場合、国のアーカイブ建設を待っていては、資料が散逸し収集は不可能となり、劣化が原因で貴重なデータも消滅してしまいます。
NPO法人ゲーム保存協会は、そうした悲劇から一つでも多くの資料を救い、一刻も早くゲームの歴史研究や価値の見直しといった文化活動が広がってほしいと考えています。そのために、NPOとして、アーカイブを開きました。
開かれたアーカイブの維持にはお金がかかります。日常的かつ恒常的に続く資料の管理、保存活動、予約者の受付など、ボランティアの労力だけでは賄えない部分も多々あります。公平な運営方針のもと、自由に資料閲覧ができる開かれたアーカイブを守るため、サポーターの皆様からのご支援が必要なのです。
サポーター登録することは、単にプロジェクトに資金的援助を行うというだけではありません。サポーター登録は、アーカイブを継続してほしいと願う声を送ることです。私たちは、いただいたご支援を、今後も資料を保存しアーカイブを大きく育ててほしいという皆さんの声として受け止め、真摯に取り組みを続けていきます。
まだご支援ご参加いただいていない方、ぜひご登録をお願いいたします。
サポーター登録へのページ
カテゴリーアーカイブ: 報告
特別講演「伝説のゲームクリエイターに聞く」第2弾を終えて
2017年7月22日にマイステイズ御茶ノ水コンファレンスセンターにてゲーム保存協会主催による講演イベントを開催しました。
毎年7月に開催しておりますイベントですが、活動開始5周年となった昨年は日高徹さんをお迎えして講演を開催し、大変好評いただきました。
そこで今年もゲストを迎えての講演を企画させていただきました。メンバーやサポーターの方々から広がったコネクションによって、今回は3人ものゲストをお迎えすることが出来ました。
「天才プログラマー」「スタープログラマー」の名をほしいままにした元日本ファルコムの木屋善夫さん、同じく元日本ファルコムで数々の名作グラフィックを手がけて来られた山根ともおさん、そしてお二人をよくご存知のログイン元編集長 新井創士さん(ほえほえ新井さん)という3名の豪華ゲストの方々です。
当日は午前に正会員のみによる総会を開催し、午後よりイベントを開催しました。講演に先立って13時より「ファルコム黎明期―初期のゲームソフトを振り返る―」展を行いました。資料展示室にて協会メンバーが所蔵している日本ファルコム作品の貴重なバッケージを説明とあわせて展示させていただきました。初作ギャラクティックウォーズ1は非情にレアな初期版の紙パッケージ展示もあり、資料価値はかなり高い展示であったと自負しております。
また展示室にはPC-8801を2台をセッティングし、木屋さんの処女作ギャラクティックウォーズ1と2作目のぱのらま島をプレイできるように用意させていただき、多くの方に楽しんで頂くことができました。
講演は展示会場と同フロアーにあります会議室を利用し、100名分のお席を用意させていただきましたが、事前の予約で満席となる盛況ぶりでした。
14時からNPOの2016年度年次報告を正会員の日下よりプレゼンテーションさせていただきました。レトロPCの修理・メンテナンス資料をまとめるというプロジェクトの説明を行った際に「修理が必要なレトロPCを持っていますか?」という質問を来場者へさせていただいたところ7割近くの方が挙手されておられましたことは、NPOとしてのプロジェクトを進める必要性を強く感じました。
年次報告を終えて、続けて3名のゲストにご登壇いただき、ゲーム保存協会特別講演「伝説のゲームクリエイターに聞く」第2弾と題しまして、木屋さん、山根さんが日本ファルコムに在籍しておられた当時のお話を中心にご講演いただきました。
はじめに木屋さんの歴史を振り返る形でお話をお伺いさせていただきました。
PCでプログラミングを始める前のころのお話から、当時の日本ファルコムの環境や開発環境などお答え頂きました。講演で印象が強かったお言葉は「アセンブラが一番簡単な言語でしょ?」でした。やはり天才プログラマーです。
山根さんにも同じく日本ファルコム入社以前の活動からお伺いし、日本ファルコムでのグラフィック開発環境やチーム毎のカラーの違いなどについて興味深いお話を頂きました。「下絵などはなく、いきなりドットを打っていた」という作風で様々なキャラクターを作成されていたことに驚きました。
お二人にお話いただく中、新井さんからは雑誌のランキングに関するお話や他紙との関係、日本ファルコムの取材に関してなど、当時の雑誌編集を行っていた方でしかわからないようなエピソードを教えて頂きました。特に「ファルコムは取材の対応も良く、発売延期がないメーカーだった」というお話は日本ファルコムの姿勢を伺えるお言葉でした。
一時間ほどの講演の後、小休憩を挟み、続いて木屋さんと山根さんが作成された個別のゲームソフトについてのお話をお伺いしました。
ギャラクティックウォーズ1から始めさせて頂き、ぱのらま島、ドラゴンスレイヤー、ザナドゥ、ソーサリアン、ロードモナーク、風の伝説ザナドゥなどの木屋さんの作品だけではなく、太陽の神殿、イース、スタートレーダーといった山根さんがグラフィックや原案に携わった作品についても、制作にまつわる思い出や当時の苦労、雑誌での評価などについてもお話いただきました。
一部は黒歴史となっているような部分、80年代であったことによる緩さなどのお話もお伺いできました。自分としては、もうすこし突っ込んだ内容についてもお聞きしたかったのですが、お二人の作品が膨大なために時間的に割愛せざるを得ないことが多く、消化不良ぎみでした。
司会進行の不手際で予定公演時間をオーバーしてしまいましたこと、最後の方は急いで進行してしまったことを当日ご参加いただいた方々にお詫びします。
最後に「お二人にとってのゲーム制作とは?」とお伺いしたところ、山根さんからは「楽しんでくれる人のためにやっていること」。そして木屋さんからは「趣味」というお答えでした。
講演終了後は会場を移して、サポーターの方々とカクテルパーティで二次会を行いました。
こちらの席でも講演ではお話いただけなかったような話題も飛び出し、新井さんからは「当時の雑誌編集者を集めて話をすることなんかも面白いかも」というような、今後のイベントへ繋がるようなお話もいただけました。
こちらで1時間半ほど歓談の後、NPO正会員を中心としたメンバーで居酒屋にて打ち上げを行い、解散となりました。
非常に充実したイベントで、司会ながらに楽しむことが出来た1日でした。
今回のイベントへご来場、参加くださった多くの方々へ感謝いたします。
ゲーム保存協会はゲーム保存活動や研究のみならず、講演などを通じてゲームの歴史を掘り起こし、伝えていく活動も精力的に開催させていただきたいと考えております。こうした取り組みはサポーターの皆さまからのご支援により実現するものです。ゲーム保存協会の活動にご支援ご協力いただいている皆さまには、協会員一同、深く感謝いたします。そして、これからもこうした取り組みを継続できるよう、これからもどうぞよろしくお願いいたします。
事前に頂いた質問は可能な限り講演中にお伺いしましたが、いくつか漏れがありました。後日、ご回答をいただきましたので、質問と回答を記載させていただきます。
■なぜX1用テープ版ザナドゥを販売することになったのでしょうか?テープ版開発時に苦労したことはありますか?
【答え】
ハードウェアへのアクセス部分(当時BIOSと呼んでいました)が完全に分離されていましたのでそれを活かすことにより比較的簡単に対応できたので挑戦してみました。
実際、数週間で動かすことができたのですが、やはりテープは遅いwで、その調整に結構手間取ったと思います。
■家庭用ゲーム機での開発で、 パソコン向けとは違ったご苦労などのエピソードはございますか。(特に「ドラゴンスレイヤー」のスーパーカセットビジョン版・ ゲームボーイ版に興味がありますが、 これらに直接関わられていないのであれば申し訳ありません)
【答え】
ドラゴンスレイヤーのSCVもGBも関わっておりません。
PC用の開発もゲーム専用機も当時はICEなど高価な機械を使用しておりましたので特に違いは感じませんでした。
ただ、生産ロットの単位が大きいのでバグを仕込んでしまうと損害が大きく、そのへんは慎重にならざるを得ませんでした。
■月刊BEEPに「ぱのらま島では技術が追い付かず、 やりたいことがほとんどできなかった」 とインタビューに答えておられましたが、実際にプログラム技術が追い付けば、 どんなアイデアを盛り込んだゲームを完成させたかったんでしょうか?
【答え】
覚えてないです。
■当時のクリエイティブの根源と、今のゲームクリエイティブにアドバイスしたい事があればぜひお聞きしたいです。
【答え】
そんな偉そうなものはないです。
ただ、仕事としてとか、知名度を上げたいとか、稼ぎたいとかではなく
自分が作りたいものを作っていただけですので…
■当時日本ファルコムで3チームでの開発に携わっておられますが、チームの制作環境の違いや戸惑ったこと、印象に残っているエピソードなどありましたら教えていただけますと幸いです。
【答え】
ファルコムに入って初めて組んだのが木屋さんになりますが、第一印象は『おっかない人』でした。
他人を拒絶してるヤンキーのイメージが近いですね。
当初は会話は必要最小限に限られ、私的な話はそれ程していなかったと思います。
トミオービルに移った頃は結構フランクになっていたようにも思いますが、私的には最後までおっかない人の印象は無くなりませんでした。
木屋さんとのエピソードで語れるようなもの(?)は、遅刻貯金箱、倉庫冷房攻め、グラディウス暴行事件以外ではすぐ思いつくものはありません。
また、これは最近になって再会した音楽の阿部さんから聞いた話ですが、「とにかく山根さんの木屋さんからの扱いが見るに堪えないほど酷く」て、私の事を30年たっても思い出せたそうです。
たしか木屋さんの机で勝手にファミコンかなんかを遊んでいたら物凄い突っ込みを食らったとか、そんな状況だったかと思いますが。
木屋さんに押さえつけられて自由な製作が出来なかった(と当時は考えた)私は、新たに入社してきた橋本さんと組めば自由に作れると思って、ロマンシアの後に橋本さんとイースを作る事になる訳です。
橋本さんと初めて一緒に仕事をしたのは太陽の神殿になりますが、これはアステカの二作目として基本的にオリジナルとは捉えてませんでしたから、(当時の私は)自由に作っていたとは考えなかったのですね。
橋本さんはスタッフの言う事を良く聞いてくれ、いろいろと盛り込もうとしてくれました。故にスケジュール的には問題となる事もあったりしましたが。
絵のデータやメモリ領域もデザイナーの要望をなるべく叶えるべく試行錯誤してくれました事は、当時からものすごく感謝していました。
橋本さんはご自宅にスタッフを招いてゲームで遊ぶやら、ビデオを楽しむやら、とてもフレンドリーなお付き合いをさせてくれました。
カトービルの頃(Ys開発中か?)、MSX2のコナミの新作が出る度に会社に2人で居残って徹夜してエンディングまでPLAYしたものです。んな事してるからYsが1パッケージに入らなくなってしまった気もしますが。
富さんはゼネラルプロダクツ上がりという事もあって、私にとっては3人の中で最も考えを伝え易かった人でした。
ですが、解かっていた上でそれをストレートにネタにする事を憚らない大阪芸人でもありましたので、面倒くせぇと感じる事も多々あったりもしました。
お互い結婚していなかった事もあって、カトービルの近くにある居酒屋一休(今も未だある)でよくお酒を一緒して愚痴を言い合っていたりしましたね。
当時モデムが一般人でも入手できる程度に普及し始めていて、1200ボーレートだったかその程度のモデムを使って、都内のBBSを介してグラフィックデータを送受信してみたりとかもしました。
物凄い長い時間「ピ-ガ-」して、NTTにお金を払ってまで、しょぼい白黒のリボンの絵なんかを受け取ったりしてみたり。
純粋なグラフィックの転送は当時のハードスペックでは無理があると解ってましたけど、試してみたい気持ちが抑えきれなかったりしたもので。
開発環境の違いで戸惑う事はほぼ無かったです。
木屋さんのツールは私にとってはデファクトスタンダードみたいなものでしたし、他のチームでも要望を出せばそれなりに応えてくれましたから。
ですが、X1ザナドゥテープ版のPCG、MSX2イース1のタイトルグラフィックは対応するツールを用意する時間も(おそらく予算も)なかったので、メーカーが本体にオマケで付けるエディターを使う事になって閉口しました。
特にシャープのPCGエディターは、マウス環境に慣れ切って堕落していた事もあってテンキー操作等に暴れたくなりました。
■ザナドゥの隠しネームなど、解析しないと分からないような隠しフィーチャーはファルコムさんやメーカーから情報提供があったのでしょうか、それともユーザーやスタッフの解析だけだったのでしょうか?
【答え】
ザナドゥの隠しネームですが、編集部で解析はしていません。読者からの投稿にあったかもしれませんが、掲載した記憶はありません(記憶がないだけで、掲載しているかもしれませんが。)
日本ファルコムさんからは、いくつかの隠しネームを提供いただきました。画面写真を撮るためにパラメータMAXの隠しネームを使った記憶はありますが、隠しネームの一覧を掲載した覚えはないです。
アイテムショップなどの隠しフィーチャーはファルコムから聞いた情報ではないです。新井の部下がザナドゥをプレイして、たまたま見つけているとか、読者からの投稿を検証していたことはあったかもしれません。
ゲーム保存協会 副理事長 福田
NHKワールドでゲーム保存協会についての30分ドキュメンタリーが放映されました
2017年11月28日、春からの長期取材を経て、ついにゲーム保存協会の活動を紹介するNHKワールドによるドキュメンタリー番組が完成、放映されました。
Inside Lens, Game Preservation – The Quest –
https://www.gamepres.org/media/
日本が世界に誇る一大コンテンツでもあるゲーム。社会現象を巻き起こしたインベーダーゲームから、世界的なヒットアイコンになったスーパーマリオまで、ゲームは日本のポップカルチャーの大事な一要素です。このドキュメンタリーでは、こうした日本の黄金期のゲーム作品とその歴史を保存し残そうとしている当協会の活動が丁寧に紹介されています。
あまり知られていませんが、今のゲーム文化の礎ともなった70年代、80年代の古いゲームは現在、劣化の危機に直面しています。資料の散逸も進み、何もしなければあと数年後にはゲーム黄金期を支えた古いアーケードやPCゲームは壊れて動かなくなり、二度と再現できなくなってしまいます。こうした状況に立ち向かうために作られたのが、ゲーム保存協会です。
ドキュメンタリーでは普段はあまり表に出ない協会のメインメンバーたちも紹介され、失われつつある古いゲーム文化とその資料をどうやって残しているのか、修復やアーカイブの作業風景などを見ていただけます。
ドキュメンタリーの中で高井商会の高井さんが語る通り、ゲームの保存にはお金がかかります。本来であれば国などが博物館として資料を守っていかねばならないところですが、そもそも「国」を作っているのは私たち一人ひとりの国民。
このままでは、浮世絵のように資料が散逸し、日本の文化財がこの国からなくなってしまいます。ドキュメンタリー最後に理事長のルドンは次のように語っています。
“ 日本には日本人にしかない感性があります。日本のゲームには日本人にしか作れないような作品があるんです。こうした独自の歴史から再び学び、新しいものを作っていくことはとても大切で、だからこそここ日本での活動に意義があるのです。”
ゲーム保存協会の活動は、はじまったばかりです。日本だからこそ作れた作品をどこまで残せるかは、これからの活動展開にかかっています。そして歴史的ゲームへの再評価が国をも動かす文化的ムーブメントになるかどうかは、実はこの国に暮らす私たち一人ひとりの国民の力にかかっています。
現在、政府ではクール・ジャパン戦略の一つとしてゲームなどサブカルチャーに関する様々な取り組みをはじめていますが、漫画やアニメなどの表現形態にくらべると、ゲームに対する対応は後手に回っているのが現状です。資料の劣化や散逸状態がひどいゲームを考えると、今のままでは文化保護は確実に手遅れとなってしまいます。
ゲーム保存協会はNPOです。市民が、市民とその未来のために積極的に動くことで成り立っています。私たちはこれからも活動を続けますし、国とも積極的にやり取りを続けます。資料の危機的状況を正確に伝え、博物館やアーカイブ、図書館といった資料を永続的に守れる公的な枠組みを得られるよう真摯に取り組んで参りますので、ぜひ皆様お一人お一人の力を貸していただきたいのです。
活動への協力の仕方は様々です。
ゲーム保存協会の取り組みを周囲に拡散いただくことも一つですし、ゲームの歴史や文化に対する関心を他の方々と共有いただくことも一つかと思います。でも、私たちがいま一番必要としているのは、実は、保存活動を支える資金です。
ドキュメンタリーでも映っていた通り、ゲーム保存協会が保管する資料は劣化を避けるための特殊な容器に一つずつ丁寧に収納されています。紙媒体、磁気媒体など媒体ごとに分け、最大限劣化の原因となるガス等の排出を抑える工夫をしていますが、こうした容器は決して安くはありません。
また、活きたアーカイブを維持するため資料はすべてQRコードで管理していますが、資料ごとにつけられる識別番号のシールなど細かな消耗品も多数ございます。
デコカセなど修理が難しい機器には、特殊な用具が必要で、時には生産が終了しているパーツの再生産を行うことも。
どんなに情熱を注いでボランティアで作業にあたるスタッフがいても、その活動を支えるための資金がなければ、実際の作業は進められないのです。
現在、ゲーム保存協会の活動に賛同いただける方に、年会費制のサポーター会員への参加を呼び掛けております。1年に1度、3000円、4000円といったお好きな金額でご寄付をいただき、協会の取り組みを支えていただくシステムで、参加された方には活動内容を伝えるニュースレター、どのように寄付が使われているのかお確かめいただける決算報告などを差し上げております。
「誰かがやっているから、安心。」ではなく「これからも続けてほしいから。」の一言が、ゲームを未来に残す鍵になります。
ぜひ、ご参加をお願いいたします。
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