デゼニランド by 来栖氏
ハドソンより1983年12月に発売
その後の「ADVブーム」を決定づけた、傑作「ADV」
その昔、「表参道ADV」、「ミステリーハウス」等、傑作といわれた「ADV」は数多くありました。
「デゼニランド」に関連するすべての画面写真、パッケージ写真の著作権はハドソンに帰属します。
しかし、「ADV」の楽しさを解り易く伝え、多くのユーザーを「ADV」の虜にさせたのは、この「デゼニランド」ではないでしょうか?
「デゼニランド」、「サラダの国のトマト姫」、そして「デゼニワールド」。
これら「ハドソン」の名作ADVから、今回は「デゼニランド」を紹介致します。
-概況-
1983年・・・。
それまで「ADV」を作った事のなかった「ハドソン」が、1本のソフトを発売する。
そのゲームには、それまでの「ADV」には無い魅力がたくさん詰まっていた。
フルカラーにもかかわらず快適な高速描画、100画面にも及ぶ広大なマップや、魅力的なキャラクター、そして緻密なストーリー、それを彩る謎。
そう、それこそが爆発的なヒット作となった、「デゼニランド」なのである。
「デゼニランド」は、「ADV」としては空前の「10万本」を売上げる。
このヒットは、一躍「ハドソン」を全国区にのし上げる事となり、その後の「ハドソン」の方向性を決定付ける事となる。
その後も、「ハドソン」は良質の「ADV」を世に送り出す。
「デゼニランド」と並び傑作と評価される、「サラダの国のトマト姫」もその一つである。
しかし「デゼニ」シリーズ続編の「デゼニワールド」の不振と、コンシューマ機での知名度の向上もあり、「ハドソン」はパソコンゲーム業界から離れていくこととなる。
-プロローグ-
物語はある男の野望で幕を開ける・・・。
埼玉県知事である「岡田ダメ男」。
彼はかねてより千葉をライバル視していた。
しかし、東洋一の巨大遊園地(東京ディズニーラ○ド)の出現により、一気に千葉は一大トレンドエリアへと成長する。
それに比べ、相変わらずの埼玉・・・。
これに危機感をもった彼は、この血で血を洗う(笑)壮絶な争いにピリオドを打つべく、遠大なプロジェクトを推進する。
それは東洋一の遊園地に対抗する、世界一の大遊園地を建設するというものであった。
そう、それこそが今回の舞台でもあり、埼玉が誇る「デゼニランド」なのである。
プレイヤーの目的は、その「デゼニランド」にあるという、秘宝「三月磨臼(みつきまうす)」を手に入れる事なのだ。
-レッツ プレイ-
まず、ゲームシステムについて説明しよう。
この頃の「ADV」は全てそうなのだが、コマンドを英語で入力する。
これは、一部の例外(これがクセ者)を除き、中学生レベルの英語しか使用しない(らしい)ので、当時のユーザー層を考えれば、妥当なシステムと言えるだろう。
そのコマンド入力について、具体的に説明をすると、以下のようになる。
「動詞」
(例/HIT,KILL,THROW,PULL等)
「動詞+名詞」
(例/HIT WALL,GET POT等)
「動詞+名詞+名詞」
(例/KILL LION KNIFE,GET SNAKE POT等)
の、3種類である。
例えば、画面のオヤジ・・・。
いや当時を知る人にとっては超がつくほど懐かしい「ダフ屋」(笑)。
彼は親切にも高値でチケットを売ってくれると言う。
しかし、「BUY TICKET」しようにも、始めプレイヤーはお金も持ち物も無い状態でスタートするので、チケットを買うことが出来ない。
さて、どうすれば・・・。
ここから始まる無限の選択肢・・・。
これこそが、「コマンド入力式ADV」の魅力なのである。
この入場前のシーンで、プレイヤーは7つの場所に行く事が出来る。
プレイヤーはその間を行き来して、入場する為の方法を探らなければならない。
簡単に例を挙げると、
「強行突破して、入る」
「どこか、抜け道を探し、そこから入る」
「隙を見て入る」
「ダフ屋を倒して、チケットで入る」
「お金を手に入れ、チケットを買う」
「他の場所でチケットを探して入る」等など
行動の幅は、まさに「無限大」である。
次に無事入場する事が出来たプレイヤーを待っているのが、「サラトマ」でもお馴染み(笑)の商店街である。
この時点でプレイヤーは、お金をある方法で入手している。
その10,000円で買い物をしなければならないのだが、これが実にくせ者なのだ。
6店舗ある商店ではそれぞれ違う商品を売っており、その中から所持金の範囲内で選び購入しなければならない。
当然、全く必要の無い物も色々と売られているので、ここで誤った買い物をしてしまうと「GAME OVER」になりかねないのである。
ちなみに、この商店街で販売している商品を挙げると。
「コップ/3,000円」、
「ライター/5,000円」、
「トケイ/5,000円」、
「ヘルメット/2,000円」、
「ウキワ/2,000円」、
「三月饅頭/1,000円」
の、全6種となる。
さああなたなら何を買うか?
そして、こういう時にこそ想像力を働かせよう。
この世界においての主人公はプレイヤーであり、危機を予知したり、回避したりできるかどうかはプレイヤー次第なのだ。
さて、無事に(?)買い物を終えたプレイヤーが進む先には、「デゼニランド」のメインである、アトラクションが待ちうけている。
アトラクションは、
「瀬戸内海の海賊」
「ジャングルクローズ」
「ホラマンション」
「スペースリバー」
「梅下パビリオン」
の、5つで構成されている。
ちなみに、上の画面が「ホラマンション」を除いたアトラクションの勇姿(笑)である。
そして、それぞれの「アトラクション」においては、様々な謎がプレイヤーを待ち受けているのだ。
例えば、次の画面のガイコツ。
彼は「瀬戸内海の海賊」でプレイヤーを待ち受けている。
当時の雑誌広告で「ダフ屋」、「受付のネーちゃん」と並んで露出度が高かった(笑)。
各アトラクションについては、あまり説明はしないが、それぞれに謎や罠が仕掛けられており、非常に難解な仕上がりになっている。
余談だが、当時作者(?)は「1ヶ月は当たり前。できれば、2~3ヶ月かけてじっくりとPLAYして欲しい。」みたいな事をパソコン誌で言っていた。
そう言った意味では、「デゼニランド」はまさに狙い通りの作品であったに違いない。
さて、今回のレビューで唯一取り上げるアトラクション。
それが、「ホラマンション」である。
この外観を「忘れたくとも忘れられない」という方も、数多くいるはずである。
話は逸れるが、初めてプレイした時に、私が行き詰まっていたのがココである。
発売当時、まだ攻略記事も無かった為、ひたすらコマンド探しに励んでいた事が思い出される。
だが、それも楽しさの一つであった・・・。
話は戻って、「ホラマンション」だが、まさに謎や罠のデパート(笑)といった感じで、ひたすら難しい。
それだけやりがいもあるのだが、他のアトラクションと比べてもあきらかに難解な作りになっている。
だが難しい分、楽しいというのも事実で、私が「デゼニランド」で一番良かったアトラクションを挙げろと言われたら、間違い無くココを選ぶだろう。
そこで、「ホラマンション」の楽しさと辛さをお見せしようと思う。
「ホラマンション」の真ん中に「RED」、「BLUE」、「GREEN」の3つの「DOOR」がある部屋がある。
この中から「RED」について紹介しよう思う。
「RED」の中は6つの「エリア」に分けられている。
では、ここで「画面」に付けた「番号」を元に、各「エリア」を説明していこう。
[1]意味ありげに並ぶ「墓」、そして「墓石」には「Me」、「Take」、「1983」の文字。
[2]「墓」を掘り起こした跡、そこには「土」が盛り上げられており、「黄色い物」が見える。
[3]「井戸」があり「ロープ」が垂れ下がっている、側には「スコップ」が突き刺さっている。
[4]「線香」が煙る墓地に「オバケ(和風)」がいる、側には「人玉」が漂っている。
[5]生い茂った森の中の墓地を「こうもり」が飛びまわっている。
[6]「墓」から「オバケ(洋風)」が出ている、「墓石」に「文字」。
1つのアトラクションの、その又1室だけで、これだけの情報が溢れているのだ。
しかも、コマンド入力なので行動に制限が無い為、コマンド選択のように近いものを選ばなくても良いのだ。
さて、あなたならどんな行動を取るだろうか?
「HIT TOMB」、「ENTER WELL」、「GET INCENSE」、「KILL GHOST」等々、思いつくままの「行動」を取って欲しい。
そう、これはあなた(プレイヤー)が作る冒険(ADV)なのだから。
この様に、無限の選択肢こそがゲームを難しくし、そして奥深く、面白くしているのである。
ただし、これには欠点も有り、コマンドを受け付けてくれない場合が多々あった。
これは、ほとんどのシーンを基本的にオンメモリーで処理している為、あまり多くの言葉に反応出来ないというものであった。
従って、そのシーンで受け付けてくれる言葉を捜す事が、必然的に多くなるのだが、逆にそれが最大の魅力になっているという事もADVの面白い点である。
その難解さ、理不尽さがユーザーを奮い立たせ、なにクソとやる気にさせるのである。
そう、これこそ「ADV」のスパイスなのである。
日常ではない、非日常を体験できるから「ADV」であり、ゲームなのだから。
例えば、いつでも体験できるような事を、ゲームとしてやって面白いだろうか。
いや、絶対に面白くないはずである。
現実に近いはずの「ドライブシミュレータ」ですら、レブオーバーする程のハイスピードでコーナーへ進入し、凄まじいドリフトで駆け抜ける。
そして、スピンしようと他車をはじき飛ばしながらゴールへまっしぐら(笑)。
スポーツゲームだって、ジョーダンのようにダンクを決め、150Km/hのボールをバックスクリーンに打ちこみ、そして翼くんも真っ青(笑)なドライブシュートを決める。
う~ん、実に非日常している(笑)。
このように、ゲームと非日常は切っても切れない物なのである。
だいぶ話が逸れたが、「デゼニランド」に戻って、「ホラマンション」の辛さについて話をしよう。
先にも触れたが、私が初プレイ時に詰まったのがココである。
この場面は、「BLUE DOOR」の奥にあり、これまた悪名高いギロチン面とセットになっている。
かたやギロチン面は「GAME OVER」がおいで、おいでしているし(笑)、棺おけ面では十字架を使うのに、「そんな英語あったっけ?」と悩んでしまう程、とてもシビア(笑)な英語力が要求される。
知っている人は懐かしんで欲しいし、知らない人や忘れてしまった人は思いっきり考えて欲しい。
たぶん、解らないだろうけど(笑)。
当然「SET」や「PUT」、「INSERT」等の簡単な動詞では無いとだけ言っておく。
たぶん、そんな人はいないだろうが、どうしても当てたいという人は、「メール」を送ってくれれば、「アタリ」、「ハズレ」を書いて返送するので、物好きな方はどうぞ(笑)。
さて、色々と書いてきたが、実はこの後にも様々な謎が展開される。
そして、それらの謎を解き明かした者だけが、伝説の秘宝「三月磨臼(みつきまうす)」を手に入れる事が出来るのである。
とにかく、昔の「ADV」は謎、又謎のオンパレードであり、悪質なトラップ等も決して少なくはなかった。
でも、困難が有れば有るほど燃えるのが、人間なのではないだろうか?
人は刺激を求める生き物である。
ある時は、痛いと解っていてもトゲに触れ、又ある時は臭いと解っている匂いをつい嗅いでしまう。
そんな人間の好奇心を満たすだけの、謎に満ちた「ADV」が私は好きだ。
最近の一本道の「ADV」に、物足りなさを感じているあなた。
「デゼニランド」を冒険したくありませんか?
もし、冒険をしたいという人が1人でも増えてくれたのなら、このレビューをやった甲斐もあるというもの。
「これからのあなたの冒険に、幸あらん事を・・・」。
<レビュー提供、画像提供:来栖氏>