ポートピア連続殺人事件 by 平井氏
エニックスより1983年6月に発売
堀井雄二氏のアドベンチャーゲーム
堀井雄二氏制作のAVGとしてかなり有名なゲーム。ただ、あまりポートピアは関係ないところが昔のゲームらしくて良い(逝)
何が不親切かというと・・・。ファミコン版ではキーボードが無いという制約上、文字の入力は出来ない。そのためにコマンド選択式が導入されていた。そのためにファミコンプレイヤーは、文字合わせに悩む必要がない。しかしパソコン版では、ファンクションキーに選択できるコマンドがあるとはいえ、文字入力である。それに加えて、パソコン版はヒントが少ない。打ち込んだ&考えたコマンドがあっていなければ、ヒントがなかなか導き出せないのである。
しかし、作っているのはかの堀井雄二氏。色々と他のAVGにはない特徴がある。
そしてこのゲームのキモ。部下の『ヤス』という存在。普通、AVGというのは、プレイヤーがコマンドを入れるとその回答をするのは、よく考えると不自然な存在の『第三者』である。コンピュータが返しているケースが殆どであったはず。もしくは自分が独り言を言っているというイメージだろう。
『クロノトリガー』というゲームをご存じだろうか?
この話からも分かるように、感情移入を大切にする堀井氏は、『ヤス』という部下を使い『第三者』を予め用意し、その結果、プレイヤーをよりゲームの世界に入りやすくしたのである。ドラマや小説でベテラン刑事に新人の部下が付き、命令するという設定はよく見られる。これを利用し、尚かつゲームにうまく取り込んだのである。この
『ヤス』の存在により、ゲームの中にプレイヤー自身の存在感を与えたと私は思っている。間違った言葉を入れても返事が帰ってくるのが、コンピュータかゲーム内のキャラかではかなり違うと思う。
コマンドがわからない、暗号がわからない(機種ごとに違うし)という難しさはあるが、主人公とヤスのやりとりは、砕けた感じでとても面白く、殺人事件をテーマにしながら殺伐としない雰囲気を醸し出していたのは、シナリオのうまさですな。
<文章:平井氏>
「ポートピア連続殺人事件」に関連するすべての画面写真、パッケージ写真の著作権は株式会社エニックスに帰属します。
さてさて。まず、私の評価は、世間一般の評価とは違ったりする。このゲームが名作として認知度が高いのは、ファミコンでAVGが出ていない時期に発売され、アクションゲームしかプレイしたことがないファミコンユーザーにはとても新鮮に映ったからだと思っているからだ。もちろん、シナリオの面白さという点でつまらないということは無いのだが、パソコン版はファミコンに比べてとても不親切なので、とてもパソコン版だけでは有名な作品になる可能性は低かったと思われる。ましてや、プレイしたことが無い人でも犯人の名前を知っているレベルの認知度まで行くにはパソコン版では無理だったはず>断言(逝)
昔のAVGは殆どがこういうタイプだったので、『ポートピア~』自体を批判する要素にはならないかもしれないが、ここまでの認知度になるはずのないゲームであったと、私に認識させる要素にはなっている。
まず、場所移動方法。当時のAVGでは、移動方法は『キタ』とか『W』とか、方向を指示する物が主流だった。しかしこのゲームは"地域"を移動するという内容を生かして、"場所"を指示させた。
つまりコマンドは『キョウトニイケ』とか『コウベニイケ』ということになる。
これによりプレイヤーは、移動距離にしたら長いはずの場所へ瞬時に移動しているという感覚を得られた。
この何気ない感覚は結構大事だと思う。当時出ていたAVGとは違う移動方法をすんなり受け入れされるという事は評価しても良いと思う。
スーパーファミコンで発売されたゲームなのだが、スクウェア社と堀井雄二氏、鳥山明氏という『ドラゴンクエスト』+『ファイナルファンタジー』というドリームタッグの手によって作られたゲームだ。このときに堀井氏は、映画的表現を求めるスクウェア社に対して・・・つまり台詞を主人公キャラに喋らせることを希望していたスクウェア社に対して、頑として"喋らせない"という事にこだわった。そのキャラは自分であるはずなのに勝手に喋るのは変だという、つまり感情移入の要素を非常に大切にしたのである。
そして最後までこの『ヤス』をうまく使ったところに、堀井氏のゲームクリエーターの才能の凄さを感じされられたはずである。・・・私だけ?(逝)