ALICE(アリス)


PSKより1984年7月に発売


ロリータの巨匠・武市氏の第3作

武市好浩という名前をご存知だろうか?パソコンゲームのロリータブームの火付け役といえばこの人である。
1981年、「ロリータ」という野球拳ゲームを発売。もちろん女の子はロリータキャラ。続いて1982年に「ロリータ2」というテキストアドベンチャーゲームを発売。これはテキストアドベンチャー中に、たまに女の子の画像が出てくるというもの。女の子をロープやハンマーで襲うというちょっと過激な内容だった。
そして第3弾がこの「Alice(以下アリス)」である。武市氏に関して詳しくは、最後の項を参照してもらうとして、アリスについてちょっと触れてみたいと思う。
アリスは、ルイスキャロルの「不思議な国のアリス」を題材にしたロリコンアドベンチャーゲームである。ゲームの序盤はその物語と同様に進行する(たとえばウサギ(アリスではバニーガールなのだが)を追って穴に落ちていったり)。
ゲーム形式はいたってシンプル。入力は英語入力で、「動詞+名詞」。マニュアルに使う動詞一覧などがあり、言葉で悩む場面はあまりないのが特徴である。これは武市氏が、「従来のアドベンチャーゲームのように言葉で悩むなどナンセンスだ」という考えによっているのだと思う。



絵はゲームの命です

このゲーム、アドベンチャーゲームとしての出来はなかなかすばらしいのだが、それよりもなによりも、女の子の絵のかわいさは、当時でも群を抜いてすばらしかった。この絵をすべて描いたのはもちろん武市氏で、開発期間全体の約9割をグラフィックに費やしたという。ちょっとでも気に入らない部分があると書き直し。こんな作業をしていたら時間がかかるのも当たり前で、1年以上の期間をかけて納得のいくものを作ったという。
驚くことに、武市氏は「ロリータ」を制作する前には絵を描いたことがないという、にわかに信じ難いエピソードもある。そんな人がこんなかわいい女の子の絵を画面上に再現してしまう(普通に描くのだって大変なのに、ましてやコンピュータ上で表現するのだから・・)あたり、先天的な絵の才能に加えて、ロリータに対する恐ろしいほどの情熱があったのだろう・・。
また、武市氏自身、本業はプログラマーではなく、医療関係の仕事をしていた。つまり趣味がてらに作っていたソフトだった(ちょっと悪い言い方だが)のである。しかし、これは逆に会社という組織に制約させたり、納期を気にしたりする必要もあまりなく、マイペースで自分の納得のいく「作品」を作ることができたというプラスの面がよい結果に結びついたものともいえる。
まぁ絵に関しては人それぞれの観点なので、この絵が気に入る人もいれば、気に入らない人もいる。でも、私はこの絵は最近のアニメーションの線の細かい女の子や、Windowsソフトの美少女ゲームの女の子なんかより、よっぽどすばらしいと思うし、芸術的であるとさえ思うのだが(あれ、私もロリコンだったのか?)。



アドベンチャーゲームとして

アリスは先にも書いたように非常にオーソドックスなスタイルのアドベンチャーゲームになっている。ストーリーもウザキを追ったアリスが穴の中に落ちてしまい、鏡の世界に入って元の世界に戻るという、きちんとしたものがある。また、コマンドがあらかじめ与えられているので、それほど言葉で悩むことはない。ロリコンゲームの割には、きちんと引き出しをあけてハンマーを取ったり(武市さんはハンマーが好きですな)、机の上の鍵をとったり、マットを動かしたりと地味な作業の方がメインである。なまじ変にアドベンチャーゲーム的要素を付け加えたようなものでは、興ざめしてしまうところだが、アドベンチャーゲームとして見ても、アリスはかなり出来はよいのである。
ただ、ちょっと難しい謎が後半に出てくる。石版に書かれたjawon文字の解読である。これは簡単に言えば、アリスの世界の言葉で、その石版の文字を解読しなければならないのだが、ちょっと頭をひねらないと解読できない。実は、この文字、高校時代に武市氏が友達と授業中にやりとりした暗号だとか・・(何をやりとりしていたんでしょうか・・・)。
武市氏自身、アリスでは、「解けない謎をおかないこと」「ひねった考えが必要なものはやめる」という考えがあったようだ。ただし、筆者から見れば、いくつか難しいトリックがあって、なかなか先に進まない。でも、個人的にはアドベンチャーゲームのこういったトリックが好きだし、他のエッチゲームが、単にジャンケンだけだったり、ナイフを投げるだけだったりしたことを考えると、武市氏の「ロリコン+α」のこだわりは、大いに評価するべぎではないだろうか。



エッチ画面も満載

このゲームは、アドベンチャーゲームの利点を生かして、いろいろなエッチな遊びがついているのもポイントである。たとえば「RAPE ALICE」などと入力すると、アリスが一人エッチを始めたり、出てくる女の子をみんなレイプしたりできる(ただし、レイプするとゲームオーバーになったりする)。また、最後の場面でバニーガールが「このままお帰りください」と言うのだが、ここでまたもや「RAPE BUNNY」とすると本筋とは違った過激な場面に進んだりと、おもわず笑ってしまう。


おまけ!!序盤攻略(ネタバレあり)

1. はじまり

アリスは本の扉を開くところから始まる。このこだわりが他のゲームと違っていてすばらしい・・・。「OPEN BOOK」。



2. バニーちゃんの画面

「ウサギが時計を気にしています。」とある。ここで「N」として北へ行っても行けるが、バニーが逃げてしまうので、バニーの後を追うしかない。「FOLLOW BUNNY」。ただし、「RAPE BUNNY」で犯すことも可能。



3. 穴の場面

ウサギが穴に入っていくので「ENTER HOLE」として追いかける。しかし、自分がアリスなのに、自分が画面に表示されるところなんぞ、アングル的におもしろい。。



4. 穴の場面2

穴に入ると真っ暗。ここはとりあえず先に進むしかない。「FORWARD」。



5. 穴の場面3

穴に落ちていく。適当にコマンドを打つと先に進む。



6. 部屋1

ちょっと普通のアドベンチャーゲームっぽい画面。机の上に鍵があるので、「GET KEY」。どれかのドアに入ろうとしても、どのドアも鍵がかかっている。しかも、今とった鍵はつかえないようだ。この場面はちょっといじわるで、後ろを振り向けばいいのだ。「TURN」。



7. 部屋2

実はこのドアの鍵だったのだ。「USE KEY」「OPEN DOOR」。ミステリーハウスのようになってきた。



8. 部屋3

部屋に入ると、ビンが出現。ビンにはjawon文字が書いてあるが、この段階では判別不可能。このビンの中の液体を飲むとアリスが小さくなってしまう。「DRINK BOTTLE」。



9. 小さくなって場面

小さくなってしまったアリス。服のサイズは変わらないので、裸になってます。「ENTER DOOR」。



10. 部屋その2

またまた小さな部屋。まず床にあるマットを動かす。コインが出てくるので拾っておく。続いて、ラックを開くとハンマーが。ハンマーも拾っておこう。このハンマーを使って鏡を割る。「BREAK MIRROR」。「ENTER MIRROR」でいよいよ別世界へ。



とまあ、序盤はこんな感じです。ロリコンアドベンチャーといいつつ、実にアドベンチャーゲームの基本の要素が多く含まれています。そのあともちょいと・・。



魔導師がいろいろなものを売っているのだが、ここでなにを買うかが重要。また、buyと入力すると、後ろの文字が「いつもニコニコ現金払い」と書いてあることがわかる。ここからjawon文字を推測できるか?



jawon文字はいろいろなところにあるのだが、これも推測する材料になる。



これって次回作の宣伝だったのか・・・。今から見るとよくわかる・・。しかも武市さんまで出演。



砂漠にはなぜかスペースシップもあったりする。こんなSFチックなところもアリスの見所のひとつ。




作った人・武市好浩

武市好浩氏は、どんな人だっただろうか。
武市氏の本業は病院の検査技師であった。つまりプログラムは副業ということになる。本業の傍ら、趣味的にパソコンでプログラムを組み、納得するものを作るというのが彼のスタンスだったようだ。
彼はもともとインベーダーゲームをパソコンでやりたくて、VIC-1001というパソコンを購入。そのカートリッジで遊んでいた。その後、MZ-1200、FM-8と購入した。彼のデビュー作はFM-8版の「ロリータ」である。FM-8は当時最もグラフィックがきれいなマシンであったため、武市氏はまわりの連中を驚かそうと、女の子の絵を描いたのである(なぜ女の子かというと、宇宙船の絵のようなものはいっぱいあったのに、女の子の絵はまだあまりなかったし、その方が好きだったからということ)。これがあの「ロリータ」へと発展することになったようだ。
武市氏は実際ロリコンの怪しい人物なのかと思えば、結婚もしており、趣味は釣りとバイクと、なかなか普通である(奥さんもよくPSKに出入りしていたらしい)。ロリコン雑誌は吾妻ひでお、弧ノ間和歩など絵柄のきれないものを好んで読んでいた。「ロリータ」を制作する前は絵を描いたこともなく(本当なのか?)、漫画のキャラクタを模写をして自分のキャラクタを作るという練習をしつづけたらしい。
アリスに関しては、武市氏はプログラミングはあまり得意ではないため、自分の納得できる絵に集中していたようだ。実際アリスもBASICを使ってプログラムは書かれている。8801のペイントが多少速いのは、別の人が移植を担当したためである。絵は1ドットでも気に入らないと、あれこれ試行錯誤でやり直すという念の入れようであった。ともかく本業の中で自分の気に入った作品を時間をかけてつくる。武市氏は有名人でありながら、そのプログラムのスタンスは実に異色であったと思う。

参考:テクノポリス85年、ログイン84年4月号
武市氏の写真:角川書店「ちょっとエッチな福袋」から引用

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