The Black Onyxby 来栖氏


BPSより1984年1月に発売


私に「RPG(ロールプレイングゲーム)」の楽しさを教えてくれた名作

日本に「RPG」の楽しさを広めた作品・・・、それこそが「ザ・ブラックオニキス(通称:ブラオニ)」だったのではないでしょうか。
日本初の「パソコンRPG」は「光栄」の「ドラゴン&プリンセス」ですが、世に広く「RPG」を知らしめたのは、間違い無くこの作品だと思います。

今回は「懐ゲーレビュー」第一回目ということで、同作の日本における功績を称えると共に「ブラオニ」の魅力について語ってみたいと思います。


-概況-

「ブラオニ」の発売当時は「PC-8801」、「FM-7」等の「8ビットパソコン」の全盛期であり、まだ「RPG」というジャンル自体が確立されていない時代であった。
先にも言った通り、このゲーム以前にも「RPG」は発売されていたが、とてもブームを起こすとかのたぐいではなく、依然として「ACT」や「ADV」がしのぎを削る時代だったのである。

そんな中「ブラックオニキス」は発売された。

だか゛、まだ「RPG」の魅力に気付いてなかった日本人は「ブラックオニキス」に関心を示さず、売上は低迷する。
売れないのだから当然記事にならない、記事にならないから売れない、そんな悪循環が数ヶ月続いた・・・。

しかし「奇跡」は起こった!!

「メーカー(BPS)」の営業努力、そして「ブラックオニキス」を愛したユーザーやライター達の口コミや応援によって、文字通り「アッ」という間に売上No.1となるのである。
このあたりの話は、当時色々な雑誌に裏話として登場していたのでご存知の方も多いと思う。
又、「売上No.1ソフト」ということでパソコン誌に攻略や紹介の記事が多数掲載され、発売後1年近くたっても安定した売上を残し、その後の「BPS」の方向性を決定付ける事となる。

しかし、その「BPS」が「テトリス」一辺倒になるとは・・・、それは後の話としよう。


-プロローグ-

その町はごく平凡な町であった、ある出来事が起こるまでは・・・・その町の名は「ウツロ」と言う。

ある日突然、町外れに出現した黒い塔・・・。

それはまるで侵入者を拒むかのように、絶えず周囲に稲光が走る、さながら悪魔のようなたたずまいを見せていた。
この入口どころか窓さえも無く、何も見えない黒い塔を、人々は「ブラックタワー」と呼び、誰も近づく者はいなかった。
いつの頃からだろう、酒場に集う冒険者達の間で「町の中心に有る廃墟からブラックタワーに行くことが出来」、そして「ブラックタワーの中には不老不死の力を得る事が出来るブラックオニキスがある」という噂話が聞かれはじめた。
そして、噂は瞬く間に広まる・・・。
平和な町「ウツロ」は、世界各地から冒険者の集う町、そして欲望の渦巻く町へと変貌を遂げるのである。

前置きが長くなったが、プレイヤーはそんな「ウツロ」の町にやって来た冒険者の一人なのである。


レッツプレイ



このゲームでは、まずはじめに自分の分身を作る事から始まる。

「名前」、「顔・髪型」、そして「服装」を決める・・・、今となっては良くあるキャラクターメイクだが、当時は非常に新鮮に感じられた。

又、ステータスバーやキャラクターウインドを表示する事によって、常に命や自分の分身を意識させられ、いつのまにかキャラクターやパーティに感情移入しているのである。

この演出は、今も多くの「RPG」に使われており、この事からも数字や文字では無く、グラフィックを使った解りやすさに主眼を置いた作りが、当時「RPG後進国」だった日本において、いかに効果的だったかが解る。





そして、まずは「ウツロ」の町へ!!



今となっては懐かしい線画で描かれた3Dマップだが、「ウイザードリィ」より日本人向けという感じ。

町を歩いているといきなりの遭遇!!

「敵か!?」と思うと町の人(笑)。

でも安心してはいけない、なぜならココは欲望渦巻く冒険者の町、「ウツロ」なのである。
運が良ければ仲間になるが、運が悪けりゃ即バトル!!(笑)。

実は、このゲームには「善人」と「悪人」がいるのだが、遭遇してなおそれが分からない。
即ち、よくある「RPG」のように一目で「ソレ」とわかるモンスターや悪人だけでなく、見た目は普通のキャラクターに対しても注意を払わなければならないのだ。
これが、良い意味でのリアリティにつながり、当時のパソコンユーザーを熱くさせた!!
この辺りにも、本物の「RPG」を作ろうとした、「BPS」のこだわりを感じるのである。

しかし、その頃の私は愚かにもウインドゥ内の「NPC」の雰囲気で敵か味方かを判断していた為、続編の「THE FIRE CRYSTAL」でしこたま後悔する事になる、まさに「RPG」恐るべしである。

話はそれるが、私が「ドラ○エ」等に「RPG」を感じない理由は、そういうリアリティの無さにある(「ゲーム」自体は好きだが)。
意外と思われるかもしれないが、はっきり言って「ドラ○エ」等なら「バイオ○ザード」の方が、よほど「RPG」らしいと思う。

「ブラオニ」では、遭遇時にいくつものパターンがあった。
自分、及びパーティの条件、それに対する相手の条件が加わり、その上選択肢まで加わるのだから、「女神○生」も真っ青という感じだ。

余談だが、「ブラオニ」の約3年後に発売された「ドラ○エ」では、遭遇パターンはたった3種類(通常/不意をつかれる/不意をつく(眠っている含む))しかなかった。

そして戦闘。
これは単純にして明快で、「味方1」は「敵3」を狙い、「味方2」は「敵1」を狙うというように、実にシンプルながら熱い戦闘が繰り広げられる。
イメージとしては「ウイザードリィ」を思い浮かべて頂きたい。

そして、町の中、牢屋、墓場、XX等で経験を積んだパーティはいよいよ井戸へ・・・・。

ここで話は前後するがXXがまた素晴らしく、各フロアーになぜか「ブラックタワー」の一部(又は、「全部」)があるのだが、目の前にあるのに入る事が出来ない。

この設定は実に秀逸である!!

考えて欲しい、普通の「RPG」の場合迷宮等で戦闘が続くと、つい本来の目的を忘れて戦いにふけってしまう事があると思う。
しかし、「ブラオニ」の場合は、各フロアー毎に違った形で「ブラックタワー」が現れる事によって、本来の目的である「ブラックタワー」の攻略を、戦いの世界に心を引きずり込まれたプレイヤー達に提示するのである。

よく、登山家が「そこに山があるから登るんだ」と言うが、プレイヤーはそこに「ブラックタワー」があるから進み、戦うのである。

話は戻るが、その井戸の最下層はXXとつながっており、「ウイザードリィ」におけるエレベーターと同じ役割を果たしている。
そして、そこにはファンタジーの定番というべき恐るべき番人が待ちうけている。


そう、その名は「クラーケン」!



「ブラオニ」をプレイした人は、一度はその圧倒的な力の前に、叩きのめされているはずである。

この「クラーケン」、とにかく強い!!

左の画面を見てもらえば分かるのだが、はっきり言って反則である。

私は、最近プレイした時には彼の事をすっかり忘れていた為、見事に全滅するハメに(笑)。

だが、この「クラーケン」を倒す力のあるパーティでないと、「ブラックオニキス」を手に入れる事など到底出来ない。
ある意味では、「ブラックオニキス」入手の為の「リトマス試験紙」なのである。


この後、地獄の「カラールーム」、真っ暗な「ブラックタワー」等、様々な困難を乗り越えた者こそ「ブラックオニキス」を手に入れる事が出来るのである。

ちなみに、私はクリア時のパスワードを送って「終了認定書」をもらい、今も大事に持っている。

そういえば、当時早く「クリア」した人は、本物の「ブラックオニキス(黒メノウ)」がもらえたような気が・・・。
もしも持っている人がいたら、ぜひとも見せて頂きたいものだ。

「ブラックオニキス」、日本初の「本格的RPG」である。

最近の派手なゲームに比べると、レトロな感じは否めないが、それでも1度は触れてみるべき作品だと思う。
皆さんもぜひ一度プレイしてみて欲しい(「ファミコン」版は除く)。

レビュー提供、画像提供:来栖氏


イロイッカイヅツのマップ(提供:虎菊氏)

「ザ・ブラックオニキス」に関連するすべての画面写真、パッケージ写真の著作権はBPSに帰属します。