オランダ妻は電気ウナギの夢を見るか?
光栄より1984年12月に発売
ストーリー
時は199X年、東京では孤独な独身男が謎の死を遂げる事件が多発していた。この事件を重く見た警視庁は、特別捜査本部を設置して事件の解明にあたったが、何の手掛かりも得られなかった。ただ、死んだ男たちが死ぬ直前にダッチワイフを購入していた形跡が認められるにもかからわず、部屋にはダッチワイフが発見されなかったことが唯一の共通点と考えられた。
そんなある日、私立探偵であるあなたに不思議な依頼が持ちこまれた。それはダッチワイフメーカー「オランダ商会」からのもので、「3日以内に当社の製品「北極6号」を3体集めてくれ、その際、午前11時から2時間おきに当社に電話連絡をするように」という指令だった。
この謎の依頼を不信に思ったあなたであったが、恋人のサチコとの結婚を控え、金が必要であったことから、やむなく依頼を引き受けることにする。翌日、東京の歓楽街「カブキチョウ」にあなたの姿があった。(マニュアルより抜粋)
ゲームの説明
このゲームはロールプレイング風になっているために、「体力」「知力」などのパラメータが存在する。そしてこれは、他の光栄のシミュレーションゲームに見られるようなスペースキーを押して値を決定するというシステムで、最初に設定しなければならない。これは、納得の行く値になるまで、何度もトライできる。ここで、「セイリョク」と「テキシュツゲンリツ」というのが非常に大切で、体力などは後から回復できるのだが、この値は重要で後から増やしたりすることはできない。「精力」は「ファックモード」の時に非常に重要だし、「敵の出現率」は、ゲームで敵の出現率に影響し、少ない方がゲーム進行は楽である。このシステムや後で述べる事柄は、このゲームが単なるアダルトゲームではないことを表しているだろう。
画面は動いた場所だけが見えるような方式で、プレイヤーの上下左右の1ブロックが動くたびに表示されていくという、ちょっと変わった形式になっている。画面構成としては、左に「ツヨサ」「スバヤサ」「セイリョク」「イカリ」などのステイタスが表示されており、中央にマップ、右に時間と持ち物といったシンプルな構成である。
実際にプレーをしてみよう
実際にプレーして見よう。上に1コマ移動すると早速、左手にお店があるようだ。名称は「コンマ69」である。何かを感じさせる名前だ・・・。入って見ようとしたが、「大人のおもちゃ屋」だけあって、朝は閉まっていて入れない。先を急ごう。何せ時間は限られている。といっても時間はリアルタイムではなく、1コマ動くと1分ずつ時が流れるので、移動モードではゆっくりとプレーできる。
ちょっと進んでいくと、道に人が現れた。見たところ、コールガールのようだ。話しかけると、「大きいの2枚でどう?」。そこでOKしてみると、女が連れとして加わった。右下に「ツレ」と表示される。
ツレができたら、やはり行くところはホテルだ。カブキチョウには至るところにホテルがあるので(?)、探すのはそんなに苦労しないだろう。ちなみに建物をみるときは「L」キーを押してから方向を押す。ホテルを探していると「ホテル・ナイトライフ」を発見。さっそく入って見ることにしよう。
ホテルに入ったら、店員に話しかける。話のしかたも「丁寧に話す」「普通に話す」「脅して話す」と3種類あるが、ホテルの場合、「普通に話す」が経験的によいようだ。満室で断られる場合もけっこうある。
部屋が運良く空いていた場合、「~の間」という部屋に通される。いまは「ロマンスの間」。ここでうまく話して相手をどんどん脱がしていく。「あなたクチがうまいわね」、「ウーン、素敵な声」、「ああ、もう私我慢できない」なんて言って、女はどんどん脱いでいく。スッポンポンになったら、あこがれのファックモード([F6]キー)にあなたも突入。
ファックモードでは、「なめる」「つねる」「もむ」「腰を動かす」などがあり、相手を先にイカせることが目的。うまく均等に動作をして、早漏になったり遅漏になったりしないように気をつけないといけない。負けると金をふんだくられてしまう。腰を動かすとキチンとグラフィックで腰を動かす。また、器具をもっているとかなり有利に展開できる。「パソリンCUT」の文字が哀愁を漂わせる。ファックに成功すると女は情報をくれる。
依頼主に2時間に一度は電話をしなければならない。電話ボックスはそんなに数がないので、ある場所を覚えてしまうのが得策。電話番号はマニュアルに「55-9635-3347」と書かれている(これはあくまでのゲームの中での電話番号です)。電話をすると、依頼主が銀行に10万円を振り込んでおいたことと、その暗証番号を教えてくれるので、しっかりとメモしておく。ちなみに主人公の恋人にも電話をすることができる。
道にいる人間はヤクザ、コールガール、サラリーマン、警官などさまざま。彼らは話かけると情報をくれることがあるが、ヤクザには話しかけない方がよい。ヤクザに話しかけるとアタックモードになり、戦闘をしなければならないからだ。さらに戦闘で体力を消耗するだけで、なにも経験値がつくわけでもない。アタックモードは、体当たり、蹴る、武器を使うなどのコマンドで行われる。
いろいろな建物がある。電話ボックス、おとなのおもちゃ屋、ハンバーガーショップ、フラワーショップ・・などなど。ハンバーガーショップでは、自分の体力を回復できる。ただし、ハンバーガーなどを食べると「敏捷性」が落ちてしまうので注意が必要だ。また、ハンバーガーショップには、電話があるところもあるので、それを使うこともできる。
実は交番に行くといいこともある。金に底がついて、体力が回復できなくなったときに、交番であやしまれると、拘留され、そこで食事をとることができる。これで体力が回復できる。実はよい場所なのであった。しかし、警察と戦闘するような状況にはしないこと。絶対に勝てないだろう。
いろいろな情報をもとに「北極6号」がいるおとなのおもちゃ屋を探していく。おとなのおもちゃ屋に入ると、店員がマスクをしているときがある(何人もの店員のバリエーションがある)。マスクをしていたら、その子は北極6号の可能性があるので、「誘惑する」または「脅して話す」コマンドで試して見れば、その人間がマスクを取り、北極6号かどうかが判明する。人間ならラブホテルに連れ込むことができる。
本題
このゲームは、単なるアダルトゲームではないと筆者は感じる。むしろ正統的ロールプレイングゲームだと思うのだ。使命や他のシステムに関しては上記を参考にしてもらうとして、簡単な流れと解いていくコツに触れて見たい。
このゲームは第1部と第2部の2部構成になっており、基本的に第1部と第2部では世界観は全く異なる。もちろん、画面構成やコマンド等はほとんど変わらないのだが、趣旨が変わってくるのである。
●第1部
ここでは、とにかくマップ内を歩き回り、「おとなのおもちゃ屋」に入り「北極6号」を見つけることが第2部へ行く通り道となっている。店に入るといろいろなグッズを買うことが出来、なかには武器として使用できるものもある。ほとんどの店員の女の子はマスクをつけており、「脅して話す」「誘惑する」を実行するとマスクをとることができ、それで北極6号か否かを調査していくのだ。
ゲームを進行中、ある程度時間が経過すると、依頼者から依頼をキャンセルされる。しかしながら、北極6号を探し続け、三体の「北極6号」をゲットすると、何者かに殴られ、気絶して建物に監禁されてしまう。
●第2部
そして第2部。このゲームでは1度だけセーブすることができ、丁度第1部が終了した時にセーブするかどうか聞いてくる。
いよいよ、第2部である。ここでは、とにかく戦いを避けながら全ての部屋や倉庫のようなところに入り、武器やアイテムを探索していくことでゲームを進行させる。「北極6号」の製造工場等にも入ることができる。
なぜ戦いを避けるのかというと、第2部ではすれ違っただけで強制的にアタックモードに入り、相手もかなり強いので、すぐに体力がなくなってしまうからである。
建物には地下2階、地上3階があり、各階が階段で迷路状につながっている。敵との戦闘で体力が減った場合、ベットのある部屋で休憩をとれば体力を回復できる。ただし、同じ部屋で2度休憩を取ろうとすると、敵が出現してしまうので注意が必要だ。
製造工場で取得できる「ドリル」を持っていると敵との戦闘が非常に楽になるので、まず先にこれをゲットすることが重要である。
部屋にはさまざまなアイテムがあるが、動かすことで必要なアイテムをゲットできる。「書類」「銃」「バズーカ」などがあるので、これらを取得しておく。
途中で彼女が拉致されている部屋があるので、その部屋を探して彼女を救い出すことも必要である。
さて、3階に行くとオランダ商会の社長のいる部屋に入ることができる。彼は究極のダッチワイフの暴走を止めてくれと主人公に依頼し、そのまま息絶えてしまう。
同じ階にある「プレジデントルーム」に入り、最後のハデな服を身にまとったダッチワイフと"ファック"対決をし、勝たなければならないのだ。しかし、ここで勝っても、ある一定時間内に建物から脱出しなければ、建物ごと爆発してゲームオーバーとなってしまう。プレジデントルームから、出口までの道筋をきちっと把握しておかなければならない。しかも再スタートは第2部の最初から。かなり厳しい。
最後に
このゲームをプレイしてみると、古くからロールプレイングゲームを作ってきた光栄の、それまでに培われたテクニック、こだわりをとても感じる。「オランダ妻」は舞台がカブキチョウ、登場人物はサラリーマンやヤクザ、コールガール、お店は喫茶店、銀行、交番など実に生活感溢れる部分が多い。そして、これらの要素が違和感なく「ロールプレイングゲーム」として、ゲームシーンに溶け込んでいる。そして特にこだわりを感じるのは、「ファックモード」だ。通常のコマンド式の戦闘とは別に、リアルタイムの戦闘シーンを作ることにより、男と女の戦いをまざまざとシミュレートしている。ファックモードは最後の戦いにも使われているところからも、光栄のこだわりのようなものを感じることができる。こんなにも個性的で斬新で何でも楽しめる正にマルチジャンルゲームとでも呼べるものは、他に類を見ないであろう。
このゲームは何を趣旨としているのだろうか。正統派アダルトロールプレイングゲームというようなジャンルに属するものなのか。実に個性的なゲームである。自分にはなぜかこのゲームはアダルトゲームとしてとらえることができない。むしろ、アダルトだから何々とうさんくさいというような当時一般的な批判に対して挑んだ作品のようにも思えてくる。成人向けであろうとなかろうと立派なゲームができるのだ、と言うことをこの時代にこのゲームで証明されたというと飛躍しすぎであろうか。「オランダ妻は電気ウナギの夢を見るか?」、これはとても奥の深いテーマが見え隠れする。正にロマンを感じさせてくれるゲームである。
協力:ギニュウ氏
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