エルドラド伝奇by 古い男氏
エニックスより1985年4月に発売
衝撃の映像クラッシュ
「うわー、ええのか? ええのんか? コレ・・・」
それがモニターに映った画像を見て、当時私が叫んだ言葉だった。
だってだって、同じ作者による「マリちゃん危機一髪」では最後のパンツで謎のエラーに襲われたし、「女子寮パニック」でもロムちゃんは手で隠したままだった。 そ、それなのに・・・日本の法律ではここまでじゃなかったの? 警視庁!
このシーンに限らず、本作には総じて「ストーリー上必然性があれば、ヌードも全然オッケー!」とゆー制作者の開き直りにも似た主張があり、それはもう胸だろうと尻だろうと出るわ出るわ、
捕まえた娘は当然縛るし、ヒロインの裸で張り付けもお約束である。 うんうん。
まぁ、髪の毛で胸が隠れている辺り「アルファ/スクウェア」のクリスよりはヒロインに対してのいたわりが見えるけど。
中学生日記
さて、のっけから衝撃映像で飛ばしてしまったが、順番が前後したとは言えここで概略を説明しよう。
本作は「エルドラド伝奇/ENIX」、作者はあの槇村ただし氏である。 氏のパソコンゲーム創生期における功績はここで改めて述べるべくもないが、コンテスト入賞作「マリちゃん危機一髪」、次作の「女子寮パニック」に続いて氏が世に送り出したのは、前2作の持つ荒唐無稽で奇想天外なイメージとはうって変わって、純愛を全面に押しだし映画的な展開を意識した冒険活劇であった。 無論、あの槇村氏の作品であるからにして、冒頭で述べた様なエッチシーン満載の、ユーザーの期待を裏切らない作品であるのは言うに及ばない。
「エルドラド伝奇」は、主人公にかかってきた親友の一本の電話により始まる。
親友はエルドラドの秘密に深く関わるあまり、謎の集団に命を狙われ始めていた。 そして雷鳴の轟くある晩に突然・・・! 親友を襲った謎の種族「ネコミミ族」の正体とは!? 一方エルドラド探索のカギを握る、親友の妹で主人公の恋人でもある星子(ホシコ)の行方は!? 単身アマゾンの奥地へと向かう主人公の行く手に、待ち受ける真実とは何か・・・!? といった、誠にアドベンチャーらしいアドベンチャーである。 勿論、星子のアドベンチャーとは何の関係も無い。 と思う・・・
このゲームに関しては、あの頃中学生だった我々は全員体験者だった。 やらせでは無く本当に、周りのパソコン小僧が皆こぞってプレイしていたのだ。 決して調査エリアに偏りがあった訳では断じて無く、丁度、PC-88やFM-7といった主力機が出回り始め、パソコンを持っているという子供がポツポツ出始めた頃でもあり、そんな中に適度なエッチさと純粋な冒険心を併せ持った本作は中学生にとって非常に魅力的に映っていたに違いない。
というのも、同時期に他メーカーから発売されていた例えば「フェアリーズレジデンス/チャンピオンソフト」等は、あまりにもエロゲー然としていた為買うのに余程の勇気がいったし、「オランダ妻は電気ウナギの夢を見るか?/光栄」といったソフトも発売されてはいたものの、完全な中年層を狙ったホンマモンのアダルトゲームだった為、意味が良く分からなかった(何だよオランダ妻って)からだ。
しかしながら、本作とユーザー層が比較的近いと思われる「マイロリータ/ENIX」や「慶子ちゃんの秘密/チャンピオンソフト」等を見てみても、目的が「エルドラド~」より直接的な反面、描写としてはおとなし目というか、こっちの2作の方が余程節度を守っていた様に感じるのが皮肉なものだ。 これに比べると、「エルドラド~」はヌードシーンが実に開けっぴろげだった。 これは考えるに、例えば真面目な映像作品の中には必然性を疑いたくなる様なきわどいシーンが突然飛び出すことがあるが、本作の場合も「黄金郷を見つけだし恋人を救う」という大義名分の中にエロが埋没してしまった格好となり、制作者のリミッターが外れてしまったのかもしれない。
こんな事なら、前2作ももっと大仰なテーマで作って欲しかったと悔やまれる。 「マリちゃん~」も、愛をテーマに謎の殺人鬼に追われる展開にするとか、「女子寮~」も、悪徳女子寮経営者に正義の鉄槌を下すというような内容にしておけば、警視庁の横ヤリも入らなかったに違いない。 返す返すも残念である。
禅僧並の忍耐力
さて、次にゲーム本編の解説に移るが、このゲーム、前項では皆がプレイしていたと述べたが、同時に、全員全く同じ冒頭部分で進行が止まってしまっていた。 そう、主人公がアマゾンに行く旅費を稼ぐ為のゲームプログラムが、どこにあるか皆目見当が付かなかったからだ。
私は、この謎がこの作品中での一番の謎だと信じて疑わないが、それにしてもゲーム一番の謎を冒頭に持ってくるというゲームデザインには、少々制作者の底意地の悪さを感じてしまう。 さりげなくマニュアルプロテクトを潜り込ませる手腕にも尚更だ。 結局、私はプログラムを解析(BASICだったのが幸いした)して、無理矢理そこの部分を飛ばしてプレイを継続したが、その手段は同時進行していた他のプレイヤーにも広く伝えられ、大変感謝された事をここに付け加えておく。
ここの謎に限らず本作は全体的に難易度が高めで、それも納得のいく解法では無く、ちょっと釈然としないトリックが多かった。 このゲームは、1シーン毎のトリックを解決して順番に次のシーンへと移って行くタイプで、当時はテープ版のソフトが未だ多かった事から、そういう点では非常にテープ向きのデザインとして好感が持てたものだ。 この方法なら、テープ版でも無理なく壮大なゲームを製作出来るからである。 しかしその反面、一画面内で表現できる情報のみで謎の難易度を上げねばならず、殆ど詐欺としか思えない様なトリックが続出し、例えば、背景にしか見えない物体が必須アイテムだったり、何も無い場所をイキナリ掘らないとクリア出来なくなってしまう事もあるかと思えば、極めつけは五つある同じ重要アイテムの内1つだけ中にカギが隠されていて、ちゃんと調べないと永遠に分からないといった様な、責任者呼んでこいっと叫びたくなる様な謎が目白押しだ。 ただ逆に言えば、一画面でこれほどの難易度のゲームは他には無く、そう考えるとパズル的でかえって面白かったとも言えなくもない。
それからもう一つの重要な問題として、セーブの扱いがあげられるが、正直言ってこのゲームは再プレイに対して非常にプレイヤーの負担を強いる。 本作はセーブに章立てのパスワード方式を採用しているのだが、途中で死亡しゲームオーバーになると章の最初から又延々とテープロード、という展開が多い割に、それはもう兎に角良く死んだ。 パラシュート無しで飛び降りて死に、分かれ道を右に行って死に、アイテムを取って死んだ。 その度に虚しく再ロードに向かう姿は、忍耐力の限界に挑戦といっても過言ではなく、むしろ今考えると良くこんな状況で挫けずにプレイしていたものだと自分に感心するが、それでも当時のゲームとしてはそれ程珍しい事でも無かったのだろう・・・エッチな画像に取り憑かれた少年の悲しいサガだったのかもしれないが。
感動のフィナーレ
とまあ、こう書くといかにもゲーム的にはイマイチだった様に思われるが、ゲーム本編に苦労した分、解いた時は素直に感動があった。 しかも、今時の「やれば誰でも解ける」軟弱なゲームでは無く、解くのには膨大な時間を費やし、様々な試行錯誤の末やっと辿り着いた黄金郷である。 感慨もひとしおであった。
さらに加えて言うなら本作はアドベンチャーゲームだったので、例えばファミコンの作品によく見られる「テストプレイ不足のアクションゲーム」的な理不尽さとは違い、システム自体は良く出来ていたし、描画も高速で作品の長さも適当であったので、無事にクリアした後ともなれば、そういった苦労も良い思い出として受け入れられたと感じている。 とりわけ、シナリオにおける構成が、冒険での山あり谷あり水中ありの道中において巧妙に仕組まれており、そういったデザインはさすが漫画家さんといった所だろう。
最近のゲーム、特に18禁ゲームでは、「遺作/エルフ/Windows」を最後にゲームらしいゲームが影を潜め、やれ感動だ、やれ鬼畜だといったといった手軽なノベル物や育成ゲームが幅を利かせているが、この「エルドラド~」の様な古き良き時代のアドベンチャーゲームもなかなか悪くないのではないか、と思ったりする。 むしろこの時代にこそ、再び槇村氏のデザインで間抜けなゲームがやりたいなあ・・・結構面白いモノが出来るんでないか!? と考えてしまう今日この頃である。
文責:古い男氏
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