軽井沢誘拐案内 by 若林氏


ENIXより1985年5月に発売


概要

 軽井沢の別荘に、恋人のくみこをたずねて軽井沢へ。甘い時間を楽しむのもつかの間、妹のなぎさが帰ってこない。誘拐か? と調査を始めるうちに複雑な背後関係が明らかになってゆく。

 堀井祐二による「ポートピア連続殺人事件」「オホーツクに消ゆ」に続くミステリもの第3弾。残念ながら第4弾となるはずだった「白夜に消えた目撃者」は発売されることは無かった。


寄せ鍋システム

 フィールド移動はドラクエ風二次元マップ、駅やホテルなどのポイントでは1枚絵+コマンド選択、が基本システム。この時点で既に2つのシステムが存在するわけだが、話はそれだけでは終わらない。

 第5章では、「調べる」コマンド実行時に、「何を?」と聞かれる代わりに、画面内にカーソルが表示される。これを動かし、怪しい場所を指定すると何かが見つかることがある。ただし、実際には手当たり次第に探さないと、目的を果たすことはできなかった。

 第6章になると、ゲームシステムそのものが変わってしまう。RPGになってしまうのだ。2次元フィールドに敵キャラがいて、隣に行って「たたかう」ことで敵を倒していくのだ。もちろん、敵を倒すたびに自分は強くなっていく。ちょうど、敵の本拠地に乗り込むためのアクションシーンのかわり、といったところだろうか。

 好意的に解釈すれば、プレイヤーを飽きさせない工夫、とも解釈できるが、特にRPGについては賛否両論となった。お話を楽しみたいプレイヤーにとっては、「寒い」足かせとなってしまったものだから。


お色気、という概念

 ゲームがコンシューマに移ってしまった現在、「お色気」というのはとんと見かけなくなった。このころのゲームというのは、べつに18禁、というわけではなくても意味無くお色気要素が含まれるゲームが少なくなかった。

 とくにこの作品ではその傾向が顕著で、冒頭の選択しに「キスする」が存在したり、第3章をまるごとベッドシーン(というほどでもないか)に使ってみたり、「パンチラ みせる」といったコマンドが、ゲームを解くために必須であったり…

 やはり堀井祐二の趣味なのであろうか。ドラゴンクエストシリーズの「ぱふぱふ」や「あぶない水着」にもそのなごりが見受けられる。


では、ミステリとしての醍醐味は?

 第6章のオープニングで、「謎解き」を要求される。6問の問いに連続して答える必用があるのだが、これをどれくらい難しい、と見るかで難易度は変わる。かなり露骨なヒントは提示されるのだが、それでもいちど前の章にもどってやりなおさないと正解できないプレイヤーも多かったであろう。実際、当時の筆者もかなり「はまった」口である。

 また、ある人物が「知っているはずがないこと」をしゃべるのだが、それを指摘する必要があり、これはなかなか心憎い演出であった。

 さて、ストーリーの方は、というと。基本ラインはさすがに堀井祐二、よくできている。両親の死、会社乗っ取り、大麻パーティー、自殺した会社員の子ども…といった要素が上手く絡み合っている。

 ただし、「ゲーム」でしか許されない演出も少なくない。あるシーンで、露骨にあやしい人物を追求すると、煙とともに消えてしまう。「神様」的な存在がいる。普通の登場人物がいきなり「ゲーム」のヒントをしゃべるといった「メタキャラクタ」としての振る舞いをする。などなど、これらの要因があるため、これを「しらける」ととるか、「ゲームとして楽しい」ととるかで、ゲームシステム同様、プレイヤーの評価は二分されるであろう。


まとめ

 当時のアドベンチャーゲームで、これだけ筋が通ったお話を楽しませてくれるゲームはなかった。それでも、あくまで「お話」ではなく、「ゲーム」として楽しませよう、という意気が感じられる。アドベンチャーゲーム、というものがどんどん「お話」のゲームになっていく中、あくまでもゲームであり続けた時代の佳作の1つであろう。


おまけ・ヒント集

・第2章では最初に歩いてうろついておきましょう。選択枝に現れない場所を先に知っておいた方がよいです。
・第4章でも最初にうろついておきましょう。手間が省けます。この章では、いかにも「推理」らしいある行動を要求されます。
・第5章では、ひたすらカーソルをたたいてください。見つけるべきものは結構多い。
・第6章では、ある人の特徴あるセリフを思い出すことを要求されます。どうしてもわからない場合、一度2章にかえりましょう。マニュアルプロテクトとして、一度ある「地名」を要求されるが、ゲーム中に登場する地名であるし、軽井沢近辺の地名を片端から入れていけばなんとかなるであろう。最後の敵には、あるアイテムを見つけておかないと勝てません。

<文章 若林氏>


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