ガルフォース


スキャップトラストより1987年7月に発売


セッション61の野望

「ガルフォース」は、7人の少女たちを主人公にしたSFアニメーションである。これをパソコンゲーム化するという話が1986年冬あたりに、各パソコン雑誌に掲載された。その内容は、ガルフォースという明確なストーリーを持ったアニメを、異なる性格をもつRPG、ADV、ACTの3つのタイプのゲームで制作するというものだった。同じテーマを基にして何種類ものゲームを同時に作ろうという企画はこれまで見られなかったものだし、しかもPC98、PC88、FM7、X1の各機種で同時制作しているというのも驚きべきことだった。これを制作したのは「セッション61」というプロジェクトチームだった。
セッション61とは、実は全国各地の有名ソフトハウス8社が団結したもので、8社とはクリスタルソフト、シンキングラビット、BPS、システムサコム、ハミングバード、ボーステック、マイクロキャビン、システムソフト。そもそもライバル同士の会社がどうして協力してソフトを制作することになったのか。
セッション61以前に、パソコンソフト会社は頻繁に協力体制を作っていた。たとえば関西のソフトメーカーを中心にした「TRINITY」、関東のソフトメーカーを中心にした「SST」などといったグループである。各ソフトメーカーはまだこのころは規模も小さかったため、各社がそれぞれ協力して、流通コストを下げたり、技術的に交流を持とうという目的があったようだ。
このような各グループに、ユーザーから「有名なソフトメーカー同士が協力しあえばもっとすごいソフトができるはずだ。ぜひやってくれ」という内容の手紙がたくさんあったというのだ。そこで「ガルフォース」というテーマを基に、ゲームをみんなで作ろうという企画が起こったときに、話がうまくまとまり、このようなプロジェクトが実現したのだ。


アドベンチャーしか発売されなかった悲しい運命

さて、こうして意気揚揚と企画された「ガルフォース」だが、まずはじめにアドベンチャーゲームが発売された。続いて、アクションゲームとロールプレイングゲームが発売される予定だったのだが・・・開発中止となってしまった(MSXでアクションゲームは発売)。とりあえず、各ゲームの内容をみてみよう。

アクションゲーム「虹のかなたに・・」

「指令を受けた惑星カオスに向かう途中、7人の乗る宇宙巡洋艦スターリーフ号のGキャンセラーが故障、修復の最中に敵に襲われて応戦」というのがアクションゲームの設定である。ゲームはロングレンジ、ミドルレンジ、ショートレンジの3つのモードで展開される。ロングレンジはいうなれば、大規模戦。20機からなる船団を組み、まずは船団単位の戦闘を行う。ここではどの船団をどこに配置するとか、敵をどう取り囲むかといった戦略が必要。シミュレーション色の濃いステージとなる。画面では敵と自分を真上から見下ろした図が表示される。ミドルレンジでは一歩進んで、宇宙船内から見た敵の様子が表示される。ここは集団ではなく、個人の戦い。正面から向かってくる敵を撃つ。3Dで迫力のあるシーン。
ショートレンジはミドルレンジで派遣した救援ロボットが敵と戦う様子を真横から見た画面である。つまりプレイヤーは宇宙船の中にいて、ロボットを上下左右に操る。こうして無事に敵の一団を倒すと、次の船団目指してロング、ミドル、ショートの繰り返しとなる。
上がだいたいの概要だが、当時の画面写真が残っているので、それも掲載しておいた。ある程度形はできていたようだが・・。


アドベンチャーゲーム「創生の序曲」

ガルフォースのストーリー全体をゲーム化したもの。ガルフォースはアニメや小説で楽しめるが、パソコン版はどちらかといえば小説寄りの内容である。もちろん小説そのままではなく、いろんな仕掛けを用意している。ゲームは数シーンで構成され、シーンごとに主人公は違うけれど、ラミーかラビィがメインキャラクターになる。メインキャラクターが死んでしまうと、他のキャラクターが生き残っていてもゲームオーバーとなる。ゲームはコマンド選択式で進行する。


ロールプレイングゲーム「怒涛のカオス」

さて、最も期待の高かったロールプレイングゲームだが、内容はこうだ。原作後半部分の、カオスに着いてからのストーリーが中心。プレイヤーは7人のうちから好きな女の子を選び(原作では3人しかいなかったのだが)、パーティを組むが、カオスは何もない星である。RPGにつきものの酒場や武器屋も、その他モロモロのすべての条件が全部欠けている。要するにゲームキャラクターの成長要素が何もないということなのだ。では、どうするのかというと・・・「ガルフォースでは既成の概念を打ち破った新しい試みがそれているのだ!」とある。どうも人間の内面的成長が重要であるということらしい。敵とのからみや仲間との交流にその要素を求めている。だから単純に闘っていればよいというわけでもない。つまり見えないパラメータが用意してあり、プレーヤー自身も成長していからければならないらしい。
さて、こんなゲームだが、開発段階の画面写真を入手したので、掲載しておく。


ということで

アドベンチャー版の「ガルフォース」のレビューをここで書くのが妥当なのだろうが、正直いってあまり書こうと思わない。というのも、このゲームは基本的に原作どおりに進行するゲームで、まじめにプレーしたら2,3時間で終わってしまう。サックリと遊べるのはいいが、内容的に取りたてて特筆することはない。
結局「セッション61」と原作の人気で、このゲームは有名になりそこそこの売り上げはしたのだと思う。ところが、残り2つのゲームは結局発売延期のまま、いまだにその姿を現さない(今さら現したら怖いが)。結局、このような連携プレーで制作しようとした場合、各メーカー同士のコミュニケーションが重要になる。そして開発期間内にも「仕事の分担がうまくいかない」といった予想通りの障害が現れていた。結局各メーカーの利害関係にヒビが入り、そのままうやむやになってしまったというのが関の山なのだろう。実際私がメーカーにいたわけではないので、これはあくまで推論にすぎないが・・。ただ、各メーカーが連携したことで、各社とも他社スタッフの意見により、それなりの刺激を受けたというのはいいことだったと思う。ただ、ユーザーサイドから見れば、この連携がなにか恩恵をもたらしたかというと、取りたててない。アドベンチャーゲームの出来はちょっと期待ハズレだったし、期待だけさせたアクションやロールプレイングは発売延期(中止)。結局、話題だけ大きくて、その後いつのまにか消えていったという、パソコンゲーム業界ではよくあるほんの1つの出来事で終わってしまった。

画像:MOG氏
参考文献:ログイン86年12月号P.20ページより引用、コンプティーク86年12月号、87年1月号、ポプコム86年11,12月号

「ガルフォース」に関連するすべての画面写真、パッケージ写真の著作権は株式会社スキャップトラストに帰属します。