波動の標的

by Baseman氏

プロローグ  作品紹介  ストーリー  登場人物  思い出の日々
印象深かった台詞集  ゲームのポイント  章別攻略法
ミュージックモード  ハマリの標的  あなたのWING度チェック  データ



異変の時が来た!
主人公 草薙に襲いかかる奇怪な事件は「白と黒の伝説」に伝わる
光と闇の戦いなのか
戦いの渦の中で起る 限りない欲望と 善と悪の心の葛藤(かっと
う)で事件は意外な展開へと広がって行く。


プロローグ(マニュアルの導入部より引用)

主人公 草薙史郎は、新聞記者としてベテランも舌を巻く特ダネ
記者だ。彼が歩けば事件に当たると言われるくらいの直感の持ち
主だ。噂では彼に霊が取り付き、その霊感による現象で近い内そ
の霊に取り殺される等と言われている。その為か彼の給料は全て
ネオンの光の中に消えたが、サラ金には手を出さなかった。もち
ろん、彼女など出来る筈がない。そんな彼に不思議な夜が訪れた。
予言とも言える易者の言葉は、泥酔した頭に深く染み込んだが考
える余裕もなく眠りについた。その予言ともいえる言葉が「白と
黒の伝説」の一説と同じであった事を知るよしもなかった。
 
 「白と黒の伝説」とは、あまりにも古すぎた書の為、文字が解
読できず、学会はそれを愚書として破棄した。僅かに残った頁を
解読する学者がいたが、なぜかその者を学会が排除するかのよう
な行動を示した為、以後 禁断の書とされ今日ではそれを知る人
もいなくなった。しかし「波動の標的」のゲームを買った、あな
たには「白と黒の伝説」の一部を解読した彼からの話しを伝えま
す。彼の名前ですか?お知らせ出来ません。彼は、話しの内容が
信じていただけない時、精神異常者だと言われるのを恐れていま
す。勘弁してください。
 
彼の話しでは、「白と黒の伝説」は、地球を含む宇宙全体の歴史
書で「光と闇の戦い」を後世に知らせる為、書き続けられている
伝書で、解読できた頁だけでも その戦いの為、地球は幾度も作
り変えられた。それと同じくして人間も転生を繰り返し、光と闇
の中で戦った。人間の中には、「白と黒の伝説」を守り書き続け
た者もいた。次の世代に二度過ちを起こさない為に。しかし、こ
れを読む者書く者は、超能力者に限られていた。なぜなら文字に
よる文章でなくイメージ・メッセージにしなければ、一冊になら
ないからだ。超能力を持つ者が見ると、イメージが広がり次元を
越えて書いた者からの言葉と時には情景すら見えてくる。
彼は言った。人間はいつの時代でも使命を持って生まれて来る。
波動は、それを見逃さない。人間に限りない欲望を植え込み使命
を忘れさせる。しかし波動は見逃した。使命を自覚した人間が現
れた。大衆は彼を救世主として迎え、欲望の中で自我が広がる。
人間は、民衆の中で偽りの善と悪を作る。その為、欲望の渦の中
で心の戦いが始まり、波動の標的にされていく。全ての人間が欲
望を捨て去り使命を自覚した時、光と闇の戦いがおわり、宇宙と
人間の心が、一つになり永遠の安らぎが来る。その願いを込めて
「白と黒の伝説」は、書き続けられている。現代も誰かが書き続
けていく筈だと。それは、あなたかも知れない。



作品紹介

 当初MSX系のアドベンチャーを発売していたソフトスタジオWINGは、「魔界復活」で初めてPC88対応の作品を出しました。
 「波動の標的」はその「魔界復活」の流れを受け継ぐコマンド選択式アドベンチャーで、前作に比べ操作性、サウンド、シナリオ、感情移入度が格段に向上しています。
 特にサウンドは「ウイング・サウンド・エフェクト・システム」という専用のシステムを組み込み、非常に深みのある音を聞かせてくれます。低音に弱いというFM音源の弱点を感じさせないとともに、PSGを駆使した効果音も大変リアルです。そして、ゲームにありがちなBGMの冗長性といったものもなく、場面とのミスマッチもない、レベルの高い楽曲が使われています。
 12章に及ぶストーリーも、破天荒ながら現実感があるという絶妙なバランスで構成されており、アドベンチャーにしては進行が速いこともあって、かなり密度の高い内容となっています。
 進行が速いことにあわせ、メッセージにも次にすべきことが暗示されていたり、88では微妙にBGMが変化していったり、他にも77AVなどDMA非対応のマシンではディスクアクセス時に音楽が途切れるのですが、エンディングでディスクをあらかじめ全部読んでおいて途切れなく演奏させたりと、プレイヤーに対する配慮も相当なものです。
 最後の選択肢によってエンディングが2種類あるというのも、当時としては画期的なことでした。
 惜しむらくは、これだけの作品であるにもかかわらず、市場にあまり受け入れられなかったこと、そしてこの作品を生み出した会社がすでに存在しないことです。
 ですが、いまだに根強いファンを持ち、この作品に惹きつけられるプレイヤーが数多くいます。それは作品自体の出来とともに、WINGのソフトに一貫して流れる「反骨精神」「社会風刺」といったこだわりが感じられるからではないでしょうか。


ストーリー

 物語は、繁華街で泥酔した草薙が易者に妙な話を聞くところから始まる。
 翌日、「メサイヤ教団」で謎の集団殺人事件が起こる。早速取材を開始する草薙だが、聞き込みを続けるうちに教団の祭壇、そして不思議な絵を見つける。この絵こそが、草薙の真の姿を暗示するものであった。
 ベトナムに飛んだ草薙は、「黒い塔」の力で異変が起きていることを知る。ジャングルが異常成長し、異形の生物が生まれている。しかし草薙の隠された能力が目覚め、怒りの波動で塔は消え去った。疲れ果て全てが終わったと思う草薙のもとに、日本に「黒い塔」が出現したという知らせが舞い込んだ...。


登場人物

草薙・・・主人公=自分。そのせいかあまりゲーム中には顔が出てこない。感情移入するためには皆無にしてもよかったような気もする。(画像は電話中)

坂本・・・草薙のパートナーのカメラマン。結構いいコンビだと思えるが、埋め立て地でトランクを奪おうとするなど先走った行動も見られる。加茂屋敷以降行方不明だが、11章で草薙の部屋に電話をかけてくる。待っていると銃撃を受けることから、洗脳された可能性が高い。

村上・・・草薙と顔なじみの刑事。煙草をくゆわせるところなかなか渋い。草薙の影響を受け、超常現象にも興味を示している。料亭の前ではそういった話を聞ける。

神谷深雪・・・政府のESP情報局の一人。身分を隠して草薙に近づく。顔の画像に統一感がないため、変装の名人という気もする。(画像は9章以降のもの)


吉野・・・ベトナムからメリム川にかけて一緒に行動してくれる案内人。警察署に何度も足を運んで顔を覚えられるあたり、よく言えばマメであり、悪く言えばせっかちである。

加藤・・・メリム川に入る時、ランチを操縦してくれる船長。深雪と同じくESP情報局員らしい。ベトナムの黒い塔に飲まれて以来行方不明。

加茂・・・加茂屋敷でいろいろ話を聞かせてくれる老人。実は闇の波動を呼び寄せようといろいろ画策している。深雪および紗夜姫の祖父にあたる。

紗夜姫・・・深雪とうりふたつの女性。加茂屋敷では深雪のふりをして草薙のエネルギーを吸い取ろうとする。ここで調子に乗りすぎると9章で痛いしっぺ返しを食らうことになる。

白井・・・地下道の壁から現れる光の戦士。テレポートが得意。台詞だけ聞いていると沈着冷静なタイプだと思う。

雪沢・・・SPの黒服。やはり光の戦士。透視能力を持つ。総理官邸で出会う。

白鳥・・・弾薬庫をうろうろしてると出会う光の戦士。結界を張ることができる。

光本・・・草薙の部屋で手荒い挨拶とともに現れる光の戦士。念動力を使う。新宿に行って拳銃を使おうとすると、その力を見せてくれる。


思い出の日々

 波動の標的に出会ったのは、まだ学生の頃だった。
 某雑誌のレビューを見て、アドベンチャーに飢えていた私は速攻で購入した。早速マニュアルを見てびっくり。地味な装丁ながらこういうマニュアル類には珍しく青色の紙に描かれた導入部(「プロローグ」の項参照)は、他のアドベンチャーゲームのストーリーとは一線を画しており、ただものではない雰囲気を漂わせていた。
 立ち上げ後のWINGのロゴ、オープニングの新宿街、易者の言葉。すべてが衝撃だった。
 それまでのアドベンチャーといえば、宇宙でエイリアンに襲われるとか、アメリカでヤクがらみの事件が起こるとか、はたまた遠い未来で革命が起こったとかいうのしかなかったのに、設定がいきなり現代社会である。のめりこんでしまった。
 ゲームを進めていくと、これがとにかく面白い。シナリオに振り回されるほど進行が速いが、それゆえ多少の矛盾点を考える暇もなく、先へ先へ進んでしまう。
 某ソフトハウスのように文字表示が遅いこともないし、快適。ゲームオーバーのポイントが多いのも、すぐロード画面になるので気にならない。
 ...しかし、辛い。
 ゲーム中に知り合う人が、すぐ離れていってしまうのである。
 ようやく集結した光の戦士たちも一人残らず命を奪われてしまい、唯一行動を共にしている深雪も、最後にどういう選択肢を選ぼうとも波動の中に消えていってしまうのだ。
 スタッフロールを見ながら涙したのは、この作品の中に生きていた者たちがリアリティを持ち、草薙と同化した自分と確かに一緒に生き、行動していたからに違いない。


印象深かった台詞集(すべて原文のまま)

「おごりの夜を果しなく遊び戯むれる滅びの民」
「ベトナム戦争時 植物を殺す薬品がまかれ その土地100年間 草も生えない筈ずなのに...」
「どうですこの日本製の腕時計は? 黙って通して頂ければ差し上げますよ」
「では光である善が正しいと言うのか! 地球の歴史は闇を嫌いながらも血を流してきた 今もそうだ! 善とは何か 権力者である人間が都合よく決めたものだ だから地球までが死にかけている」
「ここは東京オリンピックの時作られた地下街ですが使用されないまま出入り口は埋められ今では忘れられた空間です」
「日本が軍事政権に変ったのを知らないのですか 基本的人権など無視され国民は国家のために尽くさなければ国賊になります 税金は不当に上がり核ミサイルも配備されました すでに日本は軍事大国ですよ」
「黒い塔が現われてから日本が俺の嫌いな世界になっていった 」
その他、喫茶店のママや、日本に帰ってきた時の坂本の会話、村上刑事の話など数多い。


ゲームのポイント

 この作品は、当時の軟弱化していたアドベンチャーに逆らうように、結構ゲームオーバーのポイントがあります。さらに注意すべき点として、こまめにセーブすればいいものではないという事が挙げられます。なぜなら、選択如何では、後々になってゲームオーバーになることもあるからです。
 ですから、複数あるセーブ機能(88は3個所、77AVは4個所)をうまく利用しましょう。章の変わり目の大まかなセーブ、場面が変わるごとのセーブ、死にそうな時のこまめなセーブなどと使い分ければよいでしょう。もっとも、変な気を起こさずに草薙の使命を自覚していれば大丈夫です。なお、セーブは88ではテンキーの[+]、77AVでは[ESC]です。
 ゲームの進行は非常に速く、アドベンチャーゲームにありがちな同じ場所を何度もさまよってストーリーを進行させていくなどといった煩わしさはありません。
 進行状況はメッセージの変化に細かく表われ、さらに88SR版ではBGMも微妙に変化していきます。これをゲーム進行の目安にするといいでしょう。


章別攻略法

 「波動の標的」は、全部で12の章から構成されます。
 ここでは、それぞれの章の攻略法を簡単に説明しましょう。

 第1章 凶運の星
  ビジュアルシーンです。

 第2章 メサイア教団集団殺人事件
  この章は、効率的に進めれば結構速くクリアできます。
  この章に限り、最短の攻略法を掲載します。本来はじっくり解くべきなのですが、途中の章まで速く進みたい方は参考にしてください(88、77AV両対応)。
  ・ 部屋でのコマンドを総当たり。
  ・ 坂本が来たらテレビを見て話すと外へ出られる。
  ・ 教団建物の周り(4個所)で坂本と話す。
  ・ 教団建物に入り、納屋でロウソクと鍵を入手。
  ・ 聞き込みに行く。教会で女性信者に話を聞けばOK。
  ・ 教団内の食堂で鍵と手帳を入手。
  ・ 喫茶WINGで電話(使うコマンド)。テレビを見ておく。
  ・ 殺人現場(死体が片付いている)
  ・ 教団の納屋を調べる(はしごが必要と知る)。
  ・ 教団建物の外ではしごを入手。
  ・ 教団の納屋ではしごとここで入手した鍵を使う。
  ・ 教団の礼拝堂で鍵を入手して使う.さらに紋章も使う。
    (絵が出現したら紋章をとっておく)
  ・ 図書館で話す。
  ・ どこか2個所ほどうろつく(どこでもよい)。
  ・ 図書館で資料を入手。
  ・ 美術館で女性と話す。
  ・ 殺人現場入口で村上刑事に手がかりを話す。
  以上です。
  回り道すると警察署での会見を聞けたり、草薙が食堂の水瓶を推理したりするイベントなどにぶつかります。
  逆にこういうメッセージを探してみるのも一興でしょう。

 第3章 光と闇
  ビジュアルシーンです。

 第4章 密林潜入
  ジャングルに強行突入しようなどと考えず、また裏道を通ろうなど考えず、手がかりを探しましょう。
  やり込むと、ちょっとしたメッセージのヒントが嬉しい章です。

 第5章 メリム川
  マニュアルの地図を見ながらやりましょう。持ってない場合はおとなしくマッピングします(^^;)。
  後退する時によそのルートに飛ばされる時は、むしろ一番下流まで戻った方が迷いません。
  ここでは、「右の水路は本当に進めなかったのか気になる」という旨のメッセージが重要です。

 第6章 魔境の密林
  ジャングルですが、縦横各5マスで構成され、切れ目なくつながっています。
  現在位置により、画像の表示色と位置が変わります。参考にしてマップを書きましょう。
  ガイコツ兵は北(後ろ)から行かないとゲームオーバーになります。

 第7章 追跡
  この章から舞台が再び日本になります。
  ここでは、追跡しようと坂本が言う全ての車を追跡する必要があります。
  竹林に入った場所ではしつこく調べてみましょう。

 第8章 加茂屋敷の謎
  探索型アドベンチャーになります。この章での選択によっては第9章で命を落とすことになります。加茂老人の話が終わったらセーブしておきましょう。

 第9章 逃亡
  うかうかしているとゲームオーバーになるポイントがいくつかあります。物語は佳境を迎えます。

 第10章 光の戦士
  この章で光の戦士が5人そろいます。すべての条件を満たすと、黒い塔から目的地へテレポートできるようになります。
 各場所でのメッセージの変化が重要です。

 第11章 激闘
  ゲームオーバーになるポイントが非常に多い難関です。こまめにセーブしながら進めましょう。ここを抜ければクライマックスです。

 第12章 闇の波動
  最後の選択肢により、エンディングが二つ用意されています。切なく静かな終わり方と、当時としては非常に現実感のある終わり方。ぜひ両方のエンディングを見てください。


ミュージックモード

 立ち上げ時に"FINE STORY & MUSIC"と出るように、WINGの作品の音楽は素晴らしいものがあります。
 そのBGMだけを聞くモードを紹介しましょう。
 88版は[SHIFT]を押しながら立ち上げます。
 77AV版はWINGのロゴ表示時に[ESC]を1回押します。
 適当なキーで曲が進みます。
 目を閉じて、ゲームを思い出しながら聴きましょう。きっと、手に取るように様々な場面がよみがえってくることでしょう。
 (情報を頂いた飯沼氏にこの場を借りてお礼を申し上げます。)



ハマリの標的

 ゲーム進行によっては、まったくシナリオが進まなくなってしまうことがあります。  ここではその症状を紹介しましょう(88版にて確認/77AV版はマスターが立ち上がらなくなったので未確認(;_;))。

 第10章で、「加茂屋敷」→「首相官邸(雪沢と出会う)」→「弾薬庫(白鳥と出会う)」→「黒い塔(白鳥がテレパシーを流す)」→「弾薬庫(『襲うのはあきらめましょう』のメッセージ)」→「草薙の部屋(電話がかかってこなければハマリ)」
 これで、部屋から出られなくなります。


おまけ・・・あなたのWING度チェック

1.送り仮名をよく間違う
2.句点(。)のない文章を書く
3.なにかあると「きゃー 白鳥さんが・・・」と叫ぶ
4.地下駐車場は竹林に続いている気がする
5.色違いの鍵を持っている(持ってみたい)
6.日常会話で「結界」という言葉を使ったことがある
7.ロウソクが気になる(^^;)
8.ゲームのBGMが頭から離れないことがある
9.草薙のアパートとマンションの違いが分からない(^^;)
10.社会風刺やきつめの皮肉が好きである
11.部屋が散らかっている(^^;)
12.ゲーム中でてくる政党名の元ネタ(当時)がわかる
13.草薙の勤める新聞社の名前を知っている
14.このチェックを最後までやってしまった

一つでもあてはまるようなら、WINGERの資格があります。
半分以上あてはまるようなら、立派なWINGERです。


データ

対応機種:PC-8801SR、FM-77AV、MSX2(要漢字ROM)
発売時期:1987年(88版)
発売元:ソフトスタジオWING
価格:9800円


※ 画面写真はすべてPC-8801SR版のものです。
※ 引用文は、一部を除き原文のままです。

文章:Baseman氏

「波動の標的」に関連するすべての画面写真、パッケージ写真の著作権はソフトスタジオWING(現タケダ企画)に帰属します。