ドーム

by Baseman氏

プロローグ  作品紹介  思い出の日々
ゲームのポイント  あなたのドーム度チェック  データ



ドームに描かれた反核二元論は、
人類存続への希望かもしれない。


プロローグ(マニュアルより)

 1984年12月。
翌年の3月に迫った筑波科学博覧会を控えて、広
通は大いそがしの一年であった。あと4箇月もな
い開幕日にそなえて、現地筑波には事務所もで
き、広通の主力はほとんど博覧会にかかりっきり
になっていた。
 広通と、スポンサーの会社と、現地と、この3
つの地点をいったりきたりしているだけでも、あ
っというまに時間がなくなってしまう。
 しかし、仕事はもちろんそれだけではない。い
つもの仕事、そしてそれ以外にも新しい仕事、体
を休める暇もないのである。
 今日もまた新しい仕事が一つやってきた。
 専務直々にご指名がかかった打ち合わせ、そし
てその内容については一切不明。極秘事項が多い
この業界ではあったが、これほどなにもわからな
い話も珍しいことであった。
 いったい専務直々の打ち合わせとは何だろう
か?会社に向かう道すがら、そんな思いが脳裏を
よぎった。
 打ち合わせの相手は日清建設。日本で最大手の
建設会社である。専務のお相手としては不足はない。
 しかし、広通にはすでに日清建設の担当チーム
が存在している。それを差し置いて、なんで別の
打ち合わせがあるのだろうか?多分、普通の広告
やPRの話ではないのだろう。
 それにしても、わざわざ暮れも押し詰まった今
ごろ……
よほど大きい話に違いない。



作品紹介

 アドベンチャーゲームはコマンド入力型からはじまりました。言葉探しの謎解きの意味を含むこの形式は日本人の性にあわなかったのか、いつしか限られたコマンドを選ぶことでゲームを進めていくコマンド選択型に変わり、現在の主流は、突き詰めた形で具体的な行動を選択することによりその後のシナリオの変化を楽しむというところになっています。この変革が進むにつれ、純粋に物語を楽しめるようになった反面、自由度が失われていくことになりました。
 ドームはこのコマンド選択型と行動選択型を併せ持ち、通常はコマンド選択でそれなりの自由度を約束しながら、イベントシーン等では具体的な行動を選択することで感情移入しやすくなっています。行動選択分岐システムはゲームブック等ではよく見られたもので、現在パソコンでもコンシューマーでもアドベンチャーゲームの主流となっていますが、コンピューターゲームとして形にしたのはこの「ドーム」が元祖といえるでしょう。
 さて、夏樹静子原作の同名小説をもとに、金策の部分のみを掘り下げてシナリオを分岐させ、ゲームとして完成させたのが「ドーム」です。マルチウインドウシステム、マルチエンド、多機種展開と様々な試みとともに鳴り物入りで宣伝されたノベルウェア(システムサコムの命名した、パソコンで読む電子小説?)ですが、市場にはあまり歓迎されなかったのか、ノベルウェアのシステムは存続したものの中盤からは規模縮小から対応機種もX68000とTOWNSに絞り込まれるなど、苦戦を強いられたようです。


思い出の日々

 アドベンチャー好きにとって、ドームはかなり斬新なシステムだった。一応コマンド選択形式となってはいるものの、何をしたらいいのか分からない。とりあえず考えてみて、ああ、こうやるんだと納得しているうちに月日が経ち、よく分からないままにゲームオーバーになってしまう。マニュアルには「考える」コマンドを使えと書いてはあるものの、考えても「まだ分からない…」とかリアクションが帰ってくるとやる気なくなる(^^;)。とはいえ、大枚はたいたゲームはクリアするのが信念。とにかくやった。そのうち、ははぁ、ここはこうするんだなぁということが少しは分かった。しかし、サポートセンターにお世話になった部分も少なくはない。もっとも、マスターディスクがプロテクトにひっかかる症状を尋ねたついでなので…ま~よかろう(^^;)。
 なんにしても、与えられた状況が組み合わさっていくとどんどんゲームは進んだ。確かにハマリの場所もあって最初からやり直したりもしたが、アドベンチャーの基本である「見る・聞く・調べる」をやり通すことで進展していった。
 そして気づいた。このゲームはノベルウェアなどと銘打ってはいるが、他のアドベンチャーゲームに比べるとはるかにアドベンチャーしていると。しかし、アドベンチャーだけではない。「ドーム」はプレイヤーが林の行動を演じるロールプレイングゲームであり、あるいは、その行動が後々まで影響を及ぼしてくるシミュレーションゲームなのだと。
 そう気づいた時、やはりのめり込みやすいタイプである私として、林になりきって歩き回り、情報を集めて業界人とやりあった。本音をぶつけて同意を得られた。計画が成功して祝杯を挙げた。現実に戻ったとき、やはり「ドーム」は期待を裏切らないゲームであったとしみじみ思った。


ゲームのポイント

 自由度が高い分、なにをしたら分からないままにゲームオーバーになってしまうことも多いのがこのゲームの特徴です。マニュアルにもあるように、とにかく「考える」ことが重要となります。きちんと対処しないとゲームオーバーになるポイントの他、おざなりにしていてもゲームが進行するかわりに最終的なところで寄付額に関わってくる細かい部分もありますので、とにかく重要な話はメモをとり、特にドームの意義や構成、数値あたりはしっかりとおさえておきましょう。
 また、このゲームの特徴として業界の人脈が露骨に表現されているという点があります。社内の権力抗争や、マスメディアとの駆け引きなど、結構のめり込める部分となっています。社内から情報を漏らしている人物を突きとめるあたりなどは、ゲームクリアの条件には関係ないながらもきちんとシナリオが変化するという丁寧な作りです。
 なんにせよ、やはりゲーム。基本は正攻法で攻めることです。圧力を使いすぎると逆効果になる設定は、シナリオライターの良心なのでしょうか(^^)。
 ゲームのエンディングですが、バッドエンドが新聞社に漏れたネタを抑えられなかったとき・週刊誌に漏れたネタを抑えられなかったときの2カ所、ベターエンドとベストエンド(当時サコムに問い合わせたときそういう表現をされていました)が存在します。ベターとベストは、最終的な寄付額により分岐します。
 バッドエンドの回避方法ですが、上に書いたように正攻法で攻めるのが一番です。また、情報屋ともいえる業界人から数多くの情報を入手しておいて、それをもとに判断することも重要となります。


おまけ・・・あなたのドーム度チェック

1.背景が白くて文字が黒というのは読みやすいと思う
2.たとえ圧縮表示の漢字でも読めればいいと思う(^^;)
3.マルチウインドウは素敵だ
4.新規ゲーム開始のたびに長~いデモを見るのもいいもんだ
5.原作を読んだ
6.ドームの直径・高さ・収容予定人口を覚えている
7.ドーム発案者の名前を覚えている
8.局長が林に見せた雑誌の名前を覚えている
9.ベストエンド・ベターエンドともにクリアした
10.このチェックを最後までやってしまった

一つでもあてはまるようなら、「ドーム」に入る資格があります。
半分以上あてはまるようなら、人類を救う資格があります(^_^)?


データ

対応機種:PC-8801mkIISR、X1、FM-7、MSX2、PC-9801
発売時期:1988年
発売元:システムサコム
価格:9800円


※ 画面写真はすべてPC-8801mkIISR版のものです。
※ 引用文は、一部を除き原文のままです。


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文章:Baseman氏

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