サバッシュ by M.DO!氏


ポプコムソフトより1988年12月に発売


はじめに

「サバッシュ」はポプコムソフトから発売された、極めてオーソドックスなタイプのフィールド移動型RPGです。この頃コンピューターゲームに対して熱い情熱をかけられていた三遊亭円丈師匠自らが原作を担当していますが、実際の開発元がグローディア(の面々)であるため、「エメラルドドラゴン」の原型ともいうべき特徴が随所に見受けられ、ゲーム自体は非常に遊びやすいものとなっています。ただし、その圧倒的ボリュームに打ち勝つことが出来ないとエンディングまで到達することは難しいですが。(円丈師匠の後の談話によると、「プログラマの池亀君のせいでわしのアイデアが半分以上削られた。続編を作るときは血を吐かせてもわしのやりたいようにつくらせるんじゃ」みたいなことを言ってました。残念ながら「サバッシュ2」は88版が発売中止となってしまったのですが、こちらは正に円丈師匠の思うままに作られており、現在でも目新しいと思わせる要素に満ちた作品となっています)


ゲームの背景

主人公はマーディという少年。彼は「トマの村」に住んでいた。村は折しも年に一度の祭りの日。また、その日は彼の姉であるラーナが婚礼をあげる日にもなっていたので、村は総出の賑わいを見せていた。マーディも祭りの雰囲気を楽しんでいたが、彼が教会の屋根で休んでいると、俄に騒々しくなり、下を覗くと村人が魔王軍に襲撃されているところだった。少年はあまりの恐怖に身を震わせ屋根で息をこらしていると、漸く魔王軍は退いていった。村人と共に家族をも失った少年は村を襲った魔王への復讐(ZAVAS)を誓う。

マーディは魔王に会うために旅を始めるが、ただの少年が魔王にたどり着けるはずもなく、あてど無く彷徨ううちに遊神プートスに遭遇する。魔王を倒すまで彼の魂をラモ神に預けることで不死の体を手に入れた彼はアランパルチャで仲間を揃えるように言われ、自分の体もアランパルチャへ移動させられる。そして彼の魔王討伐の長い旅が始まる・・・(ストーリーをマニュアルから抜粋)


ゲームの特徴

ポプコムソフトといっても前述のように、基本的にはグローディアが開発しているため、秀作「テスタメント」にポプコム編集部(円丈師匠)のエッセンスを詰めた作品、というイメージです。たださすがに技術力は高く、色眼鏡で見なければ相当イケるゲームであったことは間違いないです。

1.そのボリューム

特筆すべきはそのフィールド画面の広さにあります。簡単なRPGならこのゲームでは大陸の1地方に入ってしまうほどのだだっ広さ。これがアランパルチャ大陸に4地方もあり、更に海を越えたドルゲスタン大陸に2地方あります。そこには無数の塔やら館やら城やら砦が建ち並び、その建物がまた広い。「ハイドライド3」で有名なハーベルの塔(200階)を多分に意識したストゥーパ210(210階)や、建物の中だけで1地方の広さがあるといわれた果てしない砦など、これでもか、これでもか、と登場し、探索のオンパレードが続くのです。

更に建物の中は宝箱が無数に置いてあり、ゲーム終了時に開けた宝箱の数はなんと2000個から3000個になります。まさに超弩級のボリュームといえます。

2.そのBGM

このゲーム、OPN音源としてはかなりいいセンいっています。特にオープニングで奏でられる口笛の音色は出そうと思ってもなかなか作れるものではありません。通常流れているBGMについても、雰囲気がとても良く、特にドルゲスタン大陸のBGMは格好良い音楽が揃っています。難点としては、ドラム部をSSGで奏でているのでちょっとクセがあるかも知れない、というところでしょうか(PC-8801版)。

また、有名な隠しコマンドとして、「K」キーを押しながらゲームを立ち上げるとミュージックモードに入り、全ミュージック(エンディングも含めて)を聴くことが出来る、というものがあるので、途中であきらめてしまったプレイヤーももう一度引っぱり出して、是非聴いてみて下さい。もう一度プレイしたくなること請け合い?です。

3.そのシステム

このゲームのプレイヤーは自分一人なので、パーティーを組むためには仲間を雇う必要があります。当然雇うからには報酬を払う必要があるわけで、これはキャンプをはって休む時に今までパーティーとして稼いだ分を分配する、というちょっと変わったシステムとなっています。仲間になるキャラは強さや成長の仕方によって報酬に差があり、それぞれ一日の報酬の何%という値なので、例えばキャンプを張るまで、宝箱をあけまくって150万ティラ程稼いでも、分配した結果70万ティラくらいしか自分の手元には残らないことになります。しかも分配した後のお金じゃないと使うことは出来ないので、必ず分配しなければいけません。

一度パーティーからキャラを外すと、そのキャラのレベルは元に戻ってしまうので、分け前の時だけ外して・・・というズルはできません。念のため。

ここで納得いかない点を一つ。自分の仲間の装備を買う時も何故か自分の所持金を使うことになります。折角分配しているのに、装備品まで自分で払わなければいけないのです。なんてガメツい奴らなんだ!! また、このゲームはザコキャラが出ない仕組みとなっており、自分のレベルが一定値を越えると、その地方の敵キャラと全く遭遇しなくなります。それはそれで素晴らしいことなのですが、若干ゲームバランスが悪く、まだもう一レベルは上げておきたいのに敵キャラが出なくなってしまうこともあるので、そう言う時は覚悟を決めて新天地の戦いに挑むか、わざわざ洞窟や建物に入ってザコを探すことになり、ちょっと面倒。

4.その戦闘

戦闘は完全オートマチック方式ですが、この手のゲームにありがちで、あんまりおつむが良くありません。一応目標くらいはこちらから指示できるのですが、いまいち動きが良くないです。敵に「ニンジャ」というザコキャラが出現するのですが、こいつがヒット&アウェイの名手のため、おバカな自分達は囲むことも出来ず、ひたすら逃げられて40分くらい戦っていたことがあります。やっと倒して5歩も歩いたらまたエンカウントした時といったら・・・。

また、このゲームはやたら攻撃をくらうわ、よく死ぬわ、ということで、薬も非常にシンプル。回復薬ザムザムと復活薬テリアカの二つのみ。1ターンに軽く3人も死んだりするので自分はキャラを動かしていなくても常に緊迫感のある戦闘シーンを味わうことが出来ます。なにしろほんのちょっと目を離したスキに全滅、ということが容易に有り得るからです。でも、どのRPGのタクティカル・バトルも絶対使えないと思いませんか?

5.そのシナリオ

シナリオはある意味真面目であり、ある意味おふざけでしょう。大きく見れば勇者として魔王に立ち向かっていくわけなのですが、その中の細かいエピソード一つ一つで遊んでいます。このアソビ部分がポプコムソフトの特色を色濃く現しているといえます。特に円丈師匠の顔をした遊神プートス像がその最たるものでしょう。プートス像は各地、各場所に散らばっており、それぞれに自分のお金を寄進することが出来ます。普通は寄進しても何ともならないのですが、時々非常に重要なアイテムをくれたり、洞窟の道を開いてくれたりするので、いやでも寄進しなくてはいけません。この寄進のためにお金をすり減らし、寄進貧乏となる人もいるほど。

また、アランパルチャ大陸では、わりとイベントが進むようなヒントをくれるキャラがいっばいいるのですが、ドルゲスタン大陸になるとお店の主人も町の人も魔物ばっかり。当然お金の単位も違うので換金する必要があります。この換金レートによっては儲けることが出来るので、ここまで来ると貧乏から一転して大金持ちになることも可能です(努力次第で)。

さて、シナリオに戻りましょう。始めから自分が持っている「アルフール地方の地図」はアランパルチャ大陸最強キャラがうようよしている地方の地図で、始めに突っ込もうものならエンカウントして3秒後には全滅しかねません(マジで)。やはりポイントは自分の伴侶となるべき 族三姉妹の選択でしょう。パーティの中で唯一まともな魔法を使えるキャラとなるのですが、三姉妹の性格はそれぞれバラバラなので、ここの選択によっては戦い方が全く変わってしまいます。

ここでのおすすめはやはり次女のファラナーク。おとなしい性格の彼女は回復,戦闘支援系の魔法を中心に唱えてくれます(ただし気が弱いので、時々失敗することあり)。逆に最も危険なのは三女のアルナワーズ。活発なのは結構ですが、魔法もろくに唱えずに果敢に敵に突入します(あっけなく昇天)。彼女ではラストまでプレイしていませんが、レベルが上がると強くなるのでしょうか・・・。

さて、ラストはお決まりのどんでん返しがある、とだけ云っておきましょう。ここにきて始めて何故自分が「アルフール地方の地図」を持っていたのかが分かるはず。

ラスボスは非常に強力です。私はレベル44で倒しましたが、レベル45はあった方が良いかも知れません(ただし経験値100万ためないといけませんが)。ちなみに2時間くらいは戦ってました。結局シナリオ的にもかなりの「長さ」をもっているのですが、「深さ」はやっぱり「エメ・ドラ」には勝てないですね。

6.ゲームの感想

「非常にやりごたえのあるゲームだった」というのが正直な感想です。実は一時期あまりのボリュームに止めていたことがあるのですが、当時の「POPCOM」に詳細なゲームの攻略が載っていたため、そこから根性入れて解きました。数あるイベントの中で最強最悪なのは「不幸の手紙」の入手。実はドルゲスタン大陸くらいになると「魔法の絨毯」というアイテムを使って空を飛ぶことが出来るのですが、「不幸の手紙」はわざわざ地面を歩いていると風船が飛んできて偶然見つかる、という代物。何しろ場所が決まっているわけでもないし、見つける確率も偶然なので誰も気づかない。敵に逢わない快適な空の移動をするのが当たり前となっているのにこんなのまともにやってて分かるのでしょうか?(むろんこれに関するヒントはまるでなかったような・・・)

他にもアソビが隠れていて、「ドラゴン小国」というドラゴンだけの国がまた別に存在するのですが、ここにはあの「エメラルド・ドラゴン」が居ます。遠い国にいる少女のことを気遣っているようなのですが、やはり「タムリン」のこと?

いまは「ポプコム」自体も無くなって久しいですが(あれ「グローディア」も?)、88全盛の時代は今無きソフトハウスもまた全力で頑張っていた時期でもあります。今の「うちはれっきとした会社です。しっかり作ってます。」という感じのゲームは確かにそつなく作ってあって安心して楽しめるのですが、88には、それがまだ「ソフトハウス」と呼ばれ、作りたいものを作るというパワーに満ちていた作品があります。また、「会社」になりきれず「ソフトハウス」のまま消えていったところの作品も数多くあり、そういった意味では一番パソコンゲーム臭いソフトが揃っている機種だと思います。


あなたもそんな「ソフトハウス」的ゲームの傑作、「サバッシュ」をプレイしてみませんか?


<文章 : M.DO!氏>


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