FANFUN


エニックスより1983年10月に発売


Story

いよいよ明日から夏休み。町に出て何かいいアルバイトがないかなと、捜していると、目に付いたのが風船工場のアルバイトの張り紙だった。「時給800円か、いいアルバイトだな、よしやってみるか!」と安易な気持ちで引き受けたのが悪かった。風船工場の建物はとても立派できれいな外壁をしていたが、工場の中はただの風船工場ではない。なんと床には針の山。それに風船も直径が2メートルもある巨大な風船なのだ。これを工場内のラジコン扇風機「FANFUN」を使って穴まで運ぶ仕事なのだ。(ストーリーをマニュアルから抜粋)


ゲームの特徴

ENIXが主催した第2回ゲームホビープログラムコンテストの最優秀プログラム賞を受賞した作品です。ENIXは第1回の同コンテストで、「ドアドア」「森田のバトルフィールド」などの数々の名作を生み、一般のプログラマーが作成したゲームソフトを発売するという形態を確立しました。この「FANFUN」も一般プログラマーが作ったとは思えないようなアイデアと完成度を持った作品でした。当時はすでに8801が主流でしたが、このゲームは8001用のゲームです。しかし、8001とはいえ、このゲームのアイデアと完成度はタダモノではありませんでした。


作者さんは?

プログラマーは宮田康弘さんという方。開発当時、名城大学理学部の1年生だったそうです。最初に考えていたゲームはビリヤードゲームだったらしいのですが、勉強部屋でぼけーっと天井をみていたらこのゲームを思い付いたらしいです。本当かは不明ですが・・。ビリヤードは玉と玉を当てて、穴に落とすゲームです。玉を穴に入れるという点では、ビリヤードと同じですが、キュー(スティック)を天井にあるファンに置き換えてしまうところなど、すごい想像力です。
ちなみに宮田氏は、このあと同社から「ザクサス」というUFO型の自機を操って、脱走兵を捕獲ビームで捕まえる任意横スクロール型のアクションゲームを制作しています。ザクサスはおそらくPC-8001のゲームの中でもテクニックにおいては最高峰のものといえるでしょう。その布石となったのがFANFUNともいえます。


ゲームの内容は、床の扇風機を動かして、上部の出口から次々に生産されてくる風船を左右の穴に収めるというものです。風船は一定の間隔をおいて作られます。リズムよく左右の穴に入れていくことが重要です。また、スペースキーで羽を飛ばすことができ、羽にぶつかった風船は上方に押しもどすことができます。ただし、この羽を使うと必ず次の風船が出てきてしまうので、できるだけ使わないようにするべきです。
このゲームのポイントは、ともかく風船を画面上に2つ出現させないことです。2つの風船を操るのは至難の技です。次の風船が出てくるまでにはけっこう時間がありますので、なんとか入れてしまいましょう。
このゲームは細かいところがよくできています。まず、風船自体です。風船には人の顔が描かれているのですが、笑い顔だったり、怒った顔だったり、ウインクしていたりとさまざまです。しかも、回転しているので、それがぐるぐると回ります。8001のグラフィックで、ここまでの演出を高速で実現してしまうあたりがすばらしいところです。風船にはきちんと重力計算がされており、ここも見逃せません。風船の顔によって重さが違うようで、きちんと落下スピードも変わってきます。また、高次の面で出現する別のファンや横の壁などもきちんと物理計算ができていて、違和感を感じさせません。
また、ゲーム性を考慮して、風船の出方が微妙に変わるのもおもしろいです。風船はただ下に落ちるのではなく、ちょっと左右に振られた角度で落ちてくることがあります。これは一定パターンを崩すための処置だと思いますが、これによって、常にファンの角度をコントロールするという作業が発生します。また、高次の面の看板や、棒、横にファンがついたりとおじゃまキャラが多数登場し、こうしたアイテムをみるのも、このゲームの楽しみであり醍醐味の1つです。


ボーナス面

このゲームのもう1つの特徴がボーナス面です。この面は、いままで風船を入れるという受身一方の作業から一転し、風船をバンバンと割っていくのです。これがまた快感!「こんにゃろう」とストレス発散できます。まるでノリはあの「ギャラガ」のボーナス面です。というか、ギャラガの真似だと思うんですが。風船が飛行パターンを組み、その飛行パターンを知っておかないと、なかなか全部の風船の割るのは難しいのです。サラっとあるボーナス面ですが、ここだけでもそれまでの8001のゲームとのレベルの違いを見せ付けてくれます。



最後に

このゲーム、点数が1点刻みで、パソコンゲーム史上最低の点数争いだったのではないかと思います(風船1個で1点)。まぁ余談ですが・・(笑)
その他にも、テープロード後、自動的に起動する部分も目を引きます。また、高次の面の看板などでは、グラフィックがちらつくものの、8001のグラフィックの、キャラクタ単位でしか色をつけられない制約の中で、うまく表現している部分などはテクニックとしてもかなりのものでしょう。まぁこの作品に関しては、あまりコマゴマとしたキャラを多様していないので、その分表現がしやすい題材だったとも思われますが。しかし、宮田氏の次回作である「ザクサス」「チョップリフター」を彷彿とさせるスーパーゲームで、キャラクタ単位の色付けをまったく感じさせないすばらしい作品になっています。こんなスーパーテクニックをもっていた彼はいまどこで何をされているのでしょうか・・・。

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