ファンキーモンキー
ポリシーより1984年3月に発売
真似ゲーは本家を超えられるか? 否、超えられない。
コピーゲームは日本のゲーム業界において避けて通れない問題である。コピーゲームとは、アイデアや画面構成がほとんど同一のゲーム内容を、制作メーカーの許可なしに発売したものである。ポン、ブロック崩し、風船割り、インベーダーゲーム・・常にヒットするゲームが現れると、それを模倣したゲームが別のメーカーから安価で作られる。日本という国柄は、人のアイデアを発展させて自分の技術にしてしまうのが得意だし、何の分野でもヒットした商品があればそれに乗じて同じものを作り、儲けようとする。だから今の世の中でもコピーは絶えない。
パソコンゲームに関して言えば、その黎明期からほとんどのゲームが、なにかしらのアーケードゲームまたはアメリカのパソコン、アップルIIからのコピーゲームである。雑誌I/Oに掲載されるゲームは、たいてい流行りのアーケードゲームのコピーであったし、それどころかゲーム名まで一緒だったりした。
パソコンゲームのコピーゲーム
このファンキーモンキーであるが、恐らく日本で初めてアーケードゲームではなく、有名パソコンゲームのアイデアを拝借したゲームだろう。これはつまり、コピーする価値があるほど良質なパソコンオリジナルのゲームがやっと登場したという裏返しであるとも言える。
またアーケードゲームの話になって恐縮だが、コピーには、いわゆる「デッドコピー」といわれるゲームをそのままコピーしたものと、少し内容を改変(改良または改悪)したものがある。デッドコピーで有名なのは、「ゼビウス」のコピーの「ゼビオス」「バトルズ」や、「ディグダグ」のコピーの「ジグザグ」などというものがある。改変したもので有名なものは、「パックマン」のコピーで「スキャンダルマン」「ハングリーマン」というワープトンネルが3つもあるものがある。コピーする業者もそれなりに技術があって、制作に努力している様が感じ取れるものもあるのだ。
ファンキーモンキーは、あの大ヒットした「ロードランナー(システムソフト)」のいわばコピーゲームだ。しかも88版のロードランナーの発売よりも早く発売したため、「ロードランナー」が「ファンキーモンキー」のコピーではないかと思う人もいたぐらいだ。
ファンキーモンキーは、上記のコピーのうち、後者の「改変」に属するものである。ファンキーモンキーは、発売前は本当にロードランナーのデッドコピーのようなゲームだったらしい。そのため発売前にシステムソフトにクレームをつけられたという話がある。そして急遽アイデアをプラスした。そのアイデアというのは、「画面のブロック移動」というものであった。
しかし、発売後にも結局システムソフトからクレームが付けられ、わずか数千本程度の出荷にて発売自粛になっというが真偽のほどは確かではない。
※余談だが、ファンキーモンキーは、雑誌Oh!PC 1984年10月号にそのリストが公開され、あくまでプログラム部分はオリジナルであるという資料を提示している。
ロードランナーとの違い
ファンキーモンキーは、ロードランナーでいうマイキャラ(兵士)を猿にして、敵を飼育係にし、金塊をリンゴに置き換えたものである。ロードランナーに見られるような金塊をとるさまざまなテクニックは存在するのだが、機能追加のために失敗している部分が非常に目立つゲームである。ファンキーモンキーには、クレームを逃れるために「画面のブロック移動」という苦肉の機能がつけられた。これは画面を9分割し、そのブロックをキーで移動させるというものだ。これにより、画面内の構成を自由に組替えることができる。しかし、ロードランナーは面全体が1つのパズルとして考られ、その金塊の取り方にさまざまなテクニックを駆使するゲームである。面の構成がリアルタイムでグルグル変わってしまう、ファンキーモンキーのゲーム性はどうだろう。面全体のパズルという構成は打ち砕かれ、9つの画面の組み合わせ方という、複雑以外の何物でもない要素が残ってしまった。はっきりいってパズルというにはあまりにも難しすぎ、楽しめる域に昇華していないと思う。
つまりこのゲームはルールこそロードランナーにそっくりであるが、その攻略、おもしろさは全く異なるゲームなのだ。
最悪のキーボード操作
ファンキーモンキーをダメにしているもう1つの原因はキーボードである。作者が「テンキーだけがゲームじゃない」といい張って使用した「IJKL」の上下左右移動は、使いにくいことこの上ない。また、穴掘りは「UO」キー。ブロック移動は「ESDF」キーという、両手の筋肉が痙攣しそうな配置であった。
動きを速くするプログラム
ファンキーモンキーは初代88でもけっこう処理速度が速い。これは、いくつかのテクニックが使われているためだ。キー入力をROMルーチンを使用せずに独自のキーボードマップから入力チェックを行い、処理を高速化している。また、「アルフォス」で使われたパレットチェンジも使用している。1パレットを梯子の黄色に固定し、残りの2パレットで猿と飼育係を表現している。梯子に飼育係が重なったときは色が赤く変色するが、これはキャラクターの重ね合わせ処理をきちんと行っていないために起こるものである。
また、キャラクターの動きも3枚のパターンを使って順に表示し、なめらかさを出している。
最後に
ファンキーモンキーはオリジナル性をもったコピーゲームであったが、ロードランナーの戦略性は皆無である。
このゲームを制作したポリシーは、固定画面アクションゲームの技術はなかなか優れていたらしく、次々とこのタイプのゲームを発売していったが、いまひとつヒットしたものはなかった、残念なメーカーであった。
Oh!PC 1984年10月号 P.154~一部引用
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