ファイアードラゴン


ブレーンメディアより1984年4月に発売


ブレーンメディアに隠れた名作あり!!

「ブレーンメディア」というブランドをご存知でしょうか? 秋葉原のパソコンショップでいまもなお一大勢力を誇っているあの「LAOX」のソフトブランドネームです(だと思う。というのもはっきりとした記事をみたことがない)。LAOXは1983年2月に第1回NECディスクソフトコンテスト(NECのパソコンで動くビジネスソフトやゲームソフトのコンテスト)を開催して、いろいろなプログラムを全国から集めました。このときの特賞の賞品は、PC-9801基本セット。そして一等はPC8801でした(しかし、実際このコンテストでなにが入選したのか分からないのですが・・・)。おそらく、このときの入選作品にこの「ファイアードラゴン」があったのだろうと筆者は予測しています。
ちなみにブレーンメディアは隠れた名作をたくさん発売しています。このファイアードラゴンもそうですが、「大石油王」は初期のシミュレーションとしては大変おもしろいものでしたし、「THE FAR WAY」はPC-8001で本格的なアドベンチャーができると話題になりました(ただ、「ギャラクトロン」だけは妙につまらないゲームでした)。
またしても余談ですが、昔LAOXで買い物をすると「ラミック(LAMIX)」という会員のカードをもらえて、このカードを何かを購入するときに見せると、多少値引きをしてくれるという特典があった記憶しています(私ももっていました)。数年前に友人がラミックのカードで買い物をしようとしたら「これなんですか?」とさすがに言われたそうです(笑)←当たり前。



すばらしいアイデア

ファイアードラゴンのゲームの説明です。ゲームがはじまると、ファイアードラゴンの導火線が迷路の中央に現れ、じわじわと燃え始めます。自分のあやつるメカは「ポルコン」というロボットで、走行型ヘルメットをかぶった地球人型生物(?)です。このポルコンを操って、導火線を引きながらファイアードラゴンを誘導します。そして敵キャラクターを避けつつ、ファイアードラゴンを敵にぶつけて殺すというものです。
ゲームが開始されると、ファイアードラゴンは卵からふ化し、導火線を伝わって燃えていきます。導火線が切れると、小さくなって燃え尽きてしまいます。ポルコンはかなり丈夫にできており、敵にぶつかったり、ファイアードラゴンにぶつかっても、しばらく気絶(ロボットが気絶するのもちょっと変ですが)するだけで死ぬことはありません。死ぬのは導火線がなくなって、画面内にファイアードラゴンが一匹もいなくなったときだけです。
このゲームでは、自分は何回死んでも、ゲームオーバーになることはありません。ここがミソで、いかに自分よりもファイアードラゴンを長く生き延びさせるか、そしていかにファイアードラゴンを敵にぶつけるか、という点にプレイヤーは神経を集中させることになります。だからといって、敵にぶつかって気絶しまくっていると、大幅にタイムロスをしてしまい、その間にファイアードラゴンが燃え尽きてしまいます。この微妙な関係がこのゲームをおもしろくしている要因でしょう。
ちなみにアーケードゲームでこのようなゲームがあったかと思い浮かべてみたのですが、思いつきません。もしこれがオリジナルのアイデアならば、製作者はすばらしいアイデアの持ち主でしょう。

次に導火線ですが、ファイアードラゴンがすばやく進む導火線と、ゆっくり進む導火線の2種類があります。アーケードの名作「QIX」にも導火線の「遅い速い」という特徴がありましたが、そこからアイデアを拝借しているのかもしれません。しかし、通常使用するのは、ほとんどが遅い導火線です。速い導火線は自分の3倍ほどの速さでファイアードラゴンが移動しますが、あるテクニック(後述)を使うとき以外はほとんど使用しません。



敵キャラクター

敵キャラクターもそれぞれに特徴があります。この時代のゲームは「パックマン」に影響されてか、敵が4種類ほどいて、それぞれ攻撃パターンが違う固定画面ゲームが多いのですが、これもそうです。自分をしつこく追いまわすものと、しばらくすると自爆して四方八方に破片を飛び散らす敵がいます(この破片にあたると当然ポルコンは気絶します)。でも、この自爆する敵以外は、あまり思考パターンに明確な差異がなく、もう少し明確にキャラクターの特徴づけが出来ていたら、もっと楽しめたものになったかもしれません。
また、面が進むと、敵の基地のようなものがあって、そこのシャッターが開いて敵が出現します。この基地を破壊しない限り、敵が永遠に出現します。シャッターの上に導火線を引いている最中に、敵が出現した場合、いきなり気絶してしまうので、けっこうスリリングです。



面構成

実はこのゲーム、パズル的な要素もあります。そんなにひねったものではないのですが、面によっては通り道が迷路のようになっていて、道がどのような繋がっているのかわからなかったり、敵の基地に行くのに道が一本しかなくて、どうやってそこに敵に接触せずに進入するかを考えたり・・・。極めつけの面は、敵がすべて自爆するヤツばかりの面で、しかも敵とは完全に道が隔離されていて、全員自爆するまで耐え抜くという面もあります。これはアイデア賞ものです。
面数は全部で50面。この50面の迷路と配置を考えただけでも、かなり大変だったと思いますし、この迷路自体がよく出来ているので、作者は相当のツワモノだと思います。
他にも、「橋」という要素があります。橋は敵が通過するとき遅くなる(これも「パックマン」のワープトンネルがヒントになっていると思います)という特徴のほかに、1度ファイアードラゴンが通過すると、橋が壊れて渡れなくなるという特徴があります。これをどう戦略に活かすかはかなり難しいのですが・・・。



コンストラクション

このゲームにはまだまだ機能があります。当時流行ったコンストラクション機能がついており、面マップを自分でエディットできます。このコンストラクションは、「ニュートロン」のコンストラクションと比べても、それ以上に楽しめます。とても面構成が作りやすいばかりでなく、作った面で遊ぶのがとても楽しいからです。



ゲームのコツ

このゲームを攻略するのはなかなか骨が折れるのですが、私なりのテクニックを紹介します。まず導火線は基本的に遅い方で引いていきます。ゲームが始まったらできるだけ敵にぶつからずに長く伸ばすことが大切です。このゲーム開始後にすぐに敵にぶつかって気絶してしまうと絶対にアウトです。ある程度導火線を延ばしているうちに、敵が勝手にファイアードラゴンにぶつかって死にますので、それを待ちます。また自爆する敵は、時間が経つと勝手に自爆しますので、その破片に当たらないように気をつけます(爆発する前に予兆があります)。
ある程度長く導火線を引いたら、ぐるっと一周、環状線のようなものを作り、ファイアードラゴンの真後ろにつきます。あとはファイアードラゴンの後をくっついて導火線を延ばしていくと、敵が勝手に寄ってきてファイアードラゴンに突撃してくれます。ただ、自分の後ろから来た場合は、敵とファイアードラゴンに挟まれますので、絶対に気絶しますが、構わずに気絶します。そのときにファイアードラゴンに当たって気絶しては絶対にいけません。ファイアードラゴンが分離して逆方向にも向かってしまいます。気絶しても、その分環状線を長くしているので、気絶が回復したらすぐにまだファイアードラゴンの後ろにつくようにします。
最後の一匹になったら、自殺テクが有効です。ファイアードラゴンを自分にできるだけ近づけ、隣り合わせ状態で導火線を引いていきます。敵が正面から突っ込んできたら、こちらも気絶しますが、そのあと敵がファイアードラゴンに接触して面クリアです。ファイアードラゴンを近づけるときに速い導火線を使うと効果的です。



最後に

このゲームのアイデアはとても独創的で、作者はとても発想がユニークであったと思います。まさに隠れた名作です。
このゲームの一番の特徴は「ファイアードラゴン」がまったく中立の立場で「敵」でも「味方」でもないということです。そしてそのファイアードラゴンを生かすためにどのように移動して敵を倒すかという戦略性とパズル性を兼ね備えた部分にあると言えるでしょう。このゲームはどの面からでもスタートできます。普通、面のセレクトというのは、先の面をみたいからプレーするというユーザーの意欲を削いでしまうと考えられるために、敬遠されがちな機能です。思いきってこの機能をつけたという点でも、作者がこのゲームに自信があり、逆にこのようにした方がこのゲームが長く楽しめるということを自分なりに発見したからでしょう。
いきなり50面からはじめるとどうやってクリアするのか悩むことになると思います。このゲームの後に開発されたアーケードゲームの名作「グロブダー」を思い出します。

「ファイアードラゴン」に関連するすべての画面写真、パッケージ写真の著作権はブレーンメディアに帰属します。