ファンタジアン by焼津陣Zin.氏


クリスタルソフトより1985年2月に発売


ファンタジアンと私

 ファンタジアン、このゲームがあったからこそ、私は88を買うことを決意した。決意した直後にSRと「テグザー」が発表されたことは幸運であったといえる。一歩間違えたらmk2を買っていたことだろう。そうしたらその後の人生経路は大きく変更されていたはずだ。考えてみれば、このゲームがなければ、私の人生はもう少し健全であったことになる。
 本題に移ろう。ゲームシステムは、ぶっちゃけて言えば「ウイザードリィのダンジョンシステム」と「ウルティマ戦闘システム」の混合である。同社の「夢幻の心臓」が「ウルティマのマップ」と「ウイザードリィの戦闘」を足した形であることの逆の組み合わせだ(ただし「夢幻の心臓1」はパーティ制ではない)。
 やはり戦闘における戦略を取り入れた点が一番斬新といえる。職業と種族の考え方は、まだウイザードリィが出ていない状態の88RPG界に劇的なショックを与えた(と私が決めている)。
 パーティも五人制で、戦士系二人、盗賊、魔術師、僧侶と限定される点が重要だ。戦士一人では戦いにくいし、三人では簡単すぎる。人数が減った分だけパーティ組み合わせの自由度はウイザードリィに劣るが、ダンジョンは地下5階(20×20)と狭い。しかし、その分中だるみのない展開が楽しめた(ウイザードリィ1などでは、5~8階をほとんど歩かないでもいいという無駄がある)。



ゲームバランスなど

 ゲームバランスは秀逸の一言。魔力の上限値は100であるが、レベルアップによって消費魔力が減ることで、呪文の難易度を表現している。ちなみに最高レベルは10。クラスチェンジ後の最高レベルも10。元の職業の上級職にしか就けない。無駄に強くなりすぎないように制限がかけられているのだ。
 基本操作すべてをテンキーのみでできるようになっている点も、オンメモリであるために速度のストレスを感じない点も、非常に評価できる(カセットテープでロードする時代だけにオンメモリ機能は必要条件だったのだろうから、怪我の功名というところか)。


問題点

 さて、ここまで誉めてきたが、問題点もある。
 問題点その一。クラスチェンジについての細かい言及が、まったくマニュアルにない。なんのアイテムが必要かを書けとは言わないが、ウイザードリィすらも知らない幼稚なプレイヤー(私)などには、非常に困った問題点であった。能力値が最高で、何故クラスチェンジできないのか分からなかったからだ。質問の手紙で聞き出して初めて謎のアイテムがクラスチェンジに使うものだと知ることができた。
 問題点その二。アイテムを売り払うと、ゲーム上から完全になくなる。オンメモリであるための問題点というべきか、セーブデータをキャラクタのみに限定したクリスタルソフトの不備かは知らない。おかげで重要なアイテムを持たせておくためにキャラクタがたくさん作られた。他のセーブデータとキャラクタの交換ができないのも悲しい点といえるが、これは贅沢な要求であろう、気にするまい。アイテム探しの楽しみが少ないのは、一応問題点といえるだろう。
 問題点その三。武器の能力である。戦士系はすべてのアイテムを装備できるといっていいのだが、初めはロングボウを持たせることになる(盗賊はショートボウ)。何故か。遠隔攻撃ができ、接近戦でもロングソードよりも強いからだ。これは現実的にはありえない。せめて隣のマスは攻撃できないようにしてあれば、剣の優位性が保証されただろう。
 実際、上記の問題点の多くは、アドヴァンストファンタジアン(随分あとに発売された)によって解消されている。シナリオ制が導入されて、よりテーブルトークRPGに近くなったおかげで、問題点自体が生まれる土壌(アイテム探しやクラスチェンジ)がなくなったのだ。人によっては悪い変化というだろう。しかし、戦闘の戦略性を非常に重要視した結果、別種の進化を遂げていた。しかしそれは他の話題である。
 全体的に見て、88におけるRPGの黎明期のソフトとしては最高といってもいい出来だった。海外作品の問題点をシェイプアップして面白いエッセンスのみを取り出し、RPGが面白いということを広く知らしめた名作である。今でこそ文句は出るが、わずかにリメイクするだけで大ヒットしてしまう可能性をもったすばらしいゲームのひとつである、と私は個人的に思っている。


レビュー:焼津陣 Zin.氏


おまけ

ファンタジアンについて、少々補足を。
ファンタジアンの発売は1985年の2月という、ロールプレイングの第1次ブームに乗り遅れた感のある時期であった。クリスタルソフトは、「夢幻の心臓」を1984年に発売し、これがヒット。このあとの同社のロールプレイングゲームに期待が持たれていた。「夢幻の心臓」は残念ながらほとんどベーシックで書かれていたため、描画の速度、レスポンスなどの点で多いに不満の残る内容であった。ファンタジアンはその欠点を見事に克服している。ファンタジアンはインタプリタ形式の独自形式の言語を使用して作成されている。これはさまざまなルーチンの簡略化(スピード化)のためと思われるが、これが功を奏して見事な速度を実現している。また、画面も先進的なウィンドウ形式、戦闘もリアルタイムコンバット形式と、「ウィザードリィ」や「ウルティマ」のおいしい部分をうまく拝借した形となっており、これらのソフトに多大に影響を受けているのは周知の事実である。(Y.ROMI)

ファンタジアンに関連するすべての画面写真、パッケージ写真の著作権はクリスタルソフトに帰属します。