ハイドライド2 by 若林氏


T&ESOFTより1985年10月に発売


時代背景

「ハイドライド」から半年後、満を持して送り出された続編がハイドライド2である。広大になったフィールド、街や人の存在、綺麗になったグラフィック、魔法の採用、モンスター数の増加、とあらゆる点でスケールアップして登場し、私たちの期待を否が応でも高めた。


新要素の空回り

プレイしてみると、確かに人はいる。街もある。しかし、あの「ハイドライド」にあった「わくわくさせる期待感」が薄い。ないわけではないのだが、長続きしない。とりあえずフィールドを駆け回ってみると同じような地形が延々と続く。「広大な」というより、「だだっぴろい」という印象を受けてしまった。

人は確かにいる。"TALK"モードでつつき回すとしゃべってもくれる。が、10分もすると「会話には何の意味もなさそうだ」と判断せざるを得ない。戦うと"FORTH"が下がる。まだ、このゲームでは人はほぼ飾りでしかなかった。名作「ザ・ブラックオニキス」で、ウツロの街にいるパーティ以下の存在価値しかない。それなのにハイドライド2では人の存在が「売り」の1つにされてしまっていた。

お金、という概念が加わったが、残念ながらこれは「枷」にしかならなかった。問題なのは「お金稼ぎ」が必須であるバランスではない。お金を稼いだ結果である「買い物」による快感が薄いことにある。3000GがんばってためてSTRをあげても、ぐっと伸びるSTRバーほどには戦闘が楽になったという実感がない。意識的にお金を稼がせるのであれば、やはり戦闘は楽になってほしい。同時期に、「買い物」による劇的なカタルシスをもたらすことのできた傑作「ザナドゥ」が登場したことも不運であった。

いずれにせよ、せっかく追加された仕掛けが、有効に機能していたとは言い難い。


ゲーム進行

ゲームの進行としては、レベルアップと謎解きの2本になるのだが、いずれにしてもとっつきが悪い。雑誌が丹念に攻略記事を掲載していたからまだよかったものの、最初から「路頭に迷う」気分が味わえる。初期のレベルアップはほぼ「グールちゃんでぇぇぇぇす!!!(TALK)」の「グール」にたよることになるのだが、前作「ハイドライド」では強敵であったゾンビのいた墓場が初期レベルアップポイントである、ということに気づくには時間がかかった。

謎解きのほうはどうか。序盤、洞窟を見つけるだけでも難儀する。そのうえに、洞窟の中では「すり抜ける壁」を探す必要がある。自力で見つけるにはかなりつらい。そして、前半最大の謎「地下帝国のありか」「パスワードの発見」である。わかってみればまあ解けないこともない、というレベルの謎であるが、当時中1であった筆者にはパスワードはちょっとつらかった。

そして苦労の末にたどり着いた地下帝国。雰囲気ががらっと変わるのはよかった。しかし、ここで始まるのが「第2次経験値/お金稼ぎ」であることを自覚したとき、寒いものを感じたのは私だけではないだろう。

そして、ここからの謎解きは基本的に魔法「サーチ」にたよることになる。「サーチ→MPなくなる→回復まち」の繰り返しである。うーん。トラップもプレイヤーのストレスを高めるのに一役買っている。とくに「とりもちトラップ」。分単位で動けなくなるという極悪のトラップで、引っかかったら通常ロードすることになる。

そして、最後に残る謎「レッドクリスタルは何処?」である。謎単体で取り上げればハイドライドの3匹目の妖精と同じくらいの難易度であろうか。しかし、これを自力で見つけるにはフィールドが広すぎた。こういう、一種偶然に頼った謎解きをさせるためにはハイドライドの「箱庭」フィールドが適当だったのである。それに、あてどもなくフィールドを駆け回るには、この時代、すでにほかにプレイしたいゲームがたくさん出始めていた。プレイするゲームはこれだけではなかったのである。いつまでも見つからないレッドクリスタルにつきあう暇はない人が多かった。

さてそのレッドクリスタル、兄は自力で偶然発見したのだが、感想は「嬉しい」ではなく、「腑に落ちない」でありました。明らかに開発者の負け。


エンディング

さて今出てきたキーワード、「腑に落ちない」という言葉が一番ふさわしいのはこともあろうにエンディングである。なぜ最重要アイテムであるミスティークドラッグがあんなところにあるのか、なぜああするとエンディングになるのか。無理矢理プレイヤーが理屈を付けて納得するしかなく、満足のいくものではないだろう。「ミスティークドラッグは地下帝国を封印していた」「ミスティークドラッグはモンスターの精神に入り込める薬であり、モンスターを内部から破壊することができる」などと思いこもうとしたところで、「だったらもっとそれらしく…」といいたくなってしまう。



まとめ

「難しいことが売りだった時代の、ちょっとつっぱしりすぎた作品」といったところだろうか。「難しい」事自体は別に悪いことではない。同時期に大ヒットした「ザナドゥ」も難しいゲームであった。しかし、この2つのゲームには1点、大きな差があった。端的に言うと、「快感」の有無である。

ザナドゥの場合は、「快感」には事欠かない。Deg-系の魔法で雑魚を一網打尽にする。ダンジョンを1つ制覇する。デーモンズリングを拾う。デカキャラに遭遇し、倒す。前述の「買い物」もその一つで、ランクが上の武器/防具/魔法、どれを買っても劇的な効果を感じることができた。こういう、細かな気持ちよさと、無駄なアクションをした結果による「手詰まり/閉塞感」というストレスのバランスが非常に良かった。

一方、ハイドライド2は「不快感」には事欠かない代わりに、「快感」はなかなか得られない。重要アイテム、クリスタルを手に入れても、たんにアイテム画面の右下に○が1つふえた、というくらいでしかないし、ダンジョンを一通りあるいても、「もう、これでおわり…かな?」という煮え切らない気分でしか得られない。

さて、それでも「ハイドライド2」はおよそ半年間もの期間、「ザナドゥ」に次ぐ2位、というランキングを維持していたゲームである。私もなんだかんだいいつつ4回は通しでプレイしている。だから、決して悪いゲームではないはずだ。少なくとも、謎をすべて知った状態で、通しでプレイする分には戦闘やお金稼ぎも、まあ楽しめる、かな。煮え切らない表現でしめるのがこのゲームにはふさわしい。


おまけ 最短クリア手順

・グールと戦って、2000Gちょっとためる。
・北の墓場の墓石を破壊しておく。
・フィールド(川沿い)のキー、ランプを入手。
・平原の岩をわって入れるダンジョンで鍵を1つ入手
・タワーでレーザーソードとキー(ORCから、ランダム)を入手
・川の中のダンジョンでグリーンクリスタルを入手
 (キーの入手/使用があってもなくてもよい)
・砂漠(ブラッククリスタル所持)でミスティークドラッグ入手
 おそらく、ここで売ったほうがトータルコストは安い。
 稼いだお金でSTRを3回きたえ、十分な値にする。
・砂漠(ブラッククリスタルなし)の町から地下帝国へ。"HONEST"がパスワード。
・地下帝国1階の鳥でレベル上げ。好みによって2階でも可。
 オイルは1階右上の島で入手可能。
・クラウドが使えるようになったらイカでレベル上げ。
 お金が貯まり次第、魔法/ヘルメット/盾/鎧につぎ込む。順番はとくに決まりはない。
・レベルを十分に稼いだらアイテムを集めて、ゲームをクリアする。
・5階の銅像(たくさん)に5つのクリスタルをはめ、中央のナイトをおすとボス登場。ミスティークドラッグを飲んでつっこんでしばらく待つとエンディング。5階ではバラリスが"FLASH"を使ってくるため、十分な装備/レベルがなければ不用意にセーブしないこと。

地下帝国アイテム
1階 鍵(右下から1つ右)、妖精(右上)
2階 鍵(場所失念)、クリスタル(上中央、3階からワープ)
3階 鍵(中央下の顔面をしたから押して、そのそば)、クリスタル(左の何でもない陸地)
4階 クリスタル(右下、水路)、クリスタル(3階左上からの階段そばからワープしていける広場の右下の顔にFIRE)、ブラッククリスタル(左下、3階左上の階段から、必須ではない)5階への階段(妖精が必要、左上の階段から、左下一つ左)
ブラッククリスタルはFORTHとひきかえにMPを回復するアイテム。探索にあると非常に便利。地下帝国では拾えるのは1回だけなので、拾うタイミングは検討すること。

<文章 若林氏>


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