ローラーボール
HAL研究所より1985年10月に発売
どんなゲーム?
「ローラボール」はHAL研究所から発売された一風変わったピンボールゲームです。HAL研といえばファミコンの「メタルスレイダーグローリー」が高値で取引されており、会社名をご存知の方も多いと思います。さらに多くの変わったソフトやハードを作っていました。それに関して資料不足なので記述しませんが、「ローラーボール」も一見して「なんだこれは!?」と思わせる、一風変わったピンボールゲームでした。
仕掛けの多さ
このゲームは、3つのピンボール台を1つのピンボール台にまとめてしまったという前代未聞のピンボールゲームです。本物のピンボールにはもちろんこんなものはありません(と思う)。コンピュータならではの発想といえるでしょう。まずゲームをはじめると下写真のような第1画面が表示されます。これは2台のピンボール(ここでは台A,Bとします)が横に並んでいる状態で、もちろん2台のピンボールの間を球が行き来できます。ピンボールAとBをあわせると仕掛けが20種類近くあります。右側のピンボール台Aでは、通過すると点灯するレーンライトやゲートなどの仕掛け、そしてマルチボールプレーになるキャプチャーレーンがあります(マルチボールになると興奮度は倍増!)。一方ピンボール台Bには、スロットマシーンがあります。ここでスリーセブンをそろえるとスロットマシーンの左右に赤い矢印が現れるので、そのときにボールを通すとフィーバーになります。フィーバーになったら、スロットマシーンの左右にバンパーが出現し、高得点をねらうチャンスが増えるわけです。
ボールがピンボール台AまたはBから落ちてしまった場合、普通なら球を失うことになるわけですが、このゲームはまだ下にもう一つピンボール台があります。これをピンボール台Cとします。このCもいろいろな仕掛けがあり、回転させて高得点をねらえるスペシャルターゲット、またピンボール台Bに球を押し上げてくれるキャプチャーレーンもあります。ピンボール台Cで球が落ちてしまうと、はじめて持ち球を失うことになります。球は合計で3つあります。
ピンボールじゃない!?
さて、コンピュータのピンボールゲームを語るときに必ずいわれることですが、ピンボールゲームは大きく分けて2つの種類が存在します。一つは、「David's Midnight Magic」に代表されるリアル追求派のピンボールゲーム。もう一つは、このローラーボールに代表されるコンピュータでしかできないフィーチャーを詰め込んだ見ため重視派のピンボールゲームです(もちろんへんてこなフィーチャーを盛り込んだ実際のピンボールもありますが)。
前者のピンボールゲームは、台の色彩やフィーチャーの数は見劣りするが、ボールの動きを極限まで追求し、本物に近い仕掛けを持ちます。この手のゲームは、球の動きがゲームの命となります。きちんと物理計算をすることにより、かなりリアルなボールの動きを再現することができ、飽きが来ないゲームが多く存在します。現にこの手のゲーム(「David's Midnight Magic」や98の「ムーンボール」など)は今プレーしても非常におもしろいのです。
後者のゲーム(「ローラーボール」、「ボールパニカー」など)は台の色彩はとっても派手で綺麗です。さらに仕掛けの数も圧倒的に多いのです。でも、ダメなんですね。この手のゲームは非常に安易の発想でできているものが多く、台に適当に仕掛けを盛り込み、球をはじきかえすだけでピンボールになっていると勘違いしているものがほとんどなのです。この「ローラーボール」もこの類と言えます。ボールの動きが非常にリアリズムにかけています。球の動きの不自然なピンボールは、もうその時点で死んでいると思います。極めつけは、「ローラーボール」では難易度を選べるのですが、その難易度が重力が変わるだけなのです。要するに初心者はピンポン球のようなゆっくり落下してくるボールをうち、上級者は砲丸球のようなすごい速さで落ちてくる重いボールを打ち返すのです。「ボールの速度の速さ=ピンボールの難易度」と考えたHAL研の安易さは、このゲームの欠陥をさらけ出してしまいました。また、フリッパーに球が跳ねたときも無音でちょっとさびしい感じがします。
初めのコンセプトはどちらだったのか?
このゲームは、本気でピンボールを作ろうとしたら計算がうまく行かなかったために、安易に台を3つつけてごまかしたでしょうか。それとも初めからイロモノのピンボールを狙ったのでしょうか。このゲームが発売される前に、かなりの数のピンボールゲームは発売されていたので、ボールの動きがリアルではないゲームは"売れない"ということはある程度市場調査をすれば分かっていたと思うのです。それを知っていて、敢えてこのようなイロモノのピンボールを作ったとすれば、完全に失敗した一作だったと言えます。
余談ですが、このローラーボール、HAL研が作ったGSX-8800というモジュールをつけるとリアルな音がでたり、トラックボール「CAT」をつけるとトラックボールでプレーできたりといちおう自社周辺機器にも対応していました(一体、この時期何人の人がもっていたのか・・・)
参考文献:月間BugNews1985年11月号
ローラーボールに関連するすべての画面写真、パッケージ写真の著作権はHAL研究所に帰属します。
しかし最近のピンボールゲームは、球の動きとフィーチャーの豪華さを兼ね備えたものもあり、過去の失敗からいろいろ学んでいるのではと思っています。