テグザー


ゲームアーツより1985年4月に発売


ストーリー

U・D・S・W-0322「レイピナ」は機密保持のため宇宙空間を航行しながら兵器の開発を行う基地である。ある時「レイピナ」は航路上に謎の小惑星が浮遊しているのを発見、探査を計画した。が、数万キロまで接近した途端、突然小惑星は強力な磁力を発し、「レイピナ」を惑星軌道上に補足してしまったのである。窮地に立たされた乗組員たちは、直ちに解決策を練った。調査の結果、磁力線は巨大な建造物にのみ作用することが判明、既存の兵器を使用し惑星上にあると思われる磁力線発生装置の破壊を試みたが失敗に終わった。
そこで「レイピナ」は開発中の新型兵器、ハイパーデュアルアーマー「THEDXER」を始動、一縷の望みをかけ、「ネディアム」と名付けられた小惑星に向けて発進させた。
状況に応じて2タイプに変形可能な高機動メカ「THEXDER」は2門のビームライフルを装備、飛行形態時マッハ4.1を誇る。また、戦闘形態に可変した時にはオート・エナミー・チェイサーが働き全自動照準で毎秒15発ものビームライフルを発射することができる。また被弾に備え、局部的なバリアを発生して機体を守る。バリアは非常にエネルギーを消費するため、過度の使用は出来ない。戦闘中のエネルギー補給は両胸(飛行時は両翼)に装着されたサプライ・システムにより、敵の爆発時に放射されるエネルギーを吸収するものである。
君は、惑星内部を探って装置を破壊、脱出しなければならない。「THEXDER」は敵を破壊するのに十分な性能を持っているはずだ。成功を祈る!(マニュアルより抜粋)



ルール

デグザーは85年4月に発売された初のPC-8801mkIISR専用のゲームである(ちなみに同社から88mkIISR専用の「キュービーパニック」も同時発売されている)。
ゲームは自機を操りながら、次々と現れる敵を撃破し、エネルギーを補給しつつ最下層を目指していく。操作はロボット形態と飛行形態のときでも操作が異なる。ロボットのときは、[4][6]で左右に移動し、[8]でジャンプすることができる。ただし、ある程度しかジャンプできず、また[8]を離すと降下が始まる。1度降下すると地面につくか敵の上に乗るかしないと次のジャンプはできない。飛行形態に変形したいときは[2]のキーを押す。バリアを発生させるには、[SHIFT][Z][X][C]のいずれかを押す。ただ、バリアを張るとエネルギーを10%消耗する上、一定の時間が経つと消えてしまう。エネルギーゲージがレッドゾーンの時はバリアは使用できない。
飛行形態のときは[8][2][6][4]で移動、斜めに移動することもできる。ロボットに変形したいときは、逆噴射つまり、現在の進行方向と正反対の方向に対応するキーを押すと変形できるが、変形できる十分なスペースのある場所である必要がある。



発売当時のあのころ

テグザーはPC8801mkIISR専用のゲームとして登場した。「発売されて間もない、SR専用のゲーム、果たして何人買う人がいるのだろう?」と筆者は当時思ったものだ。そう、そのときはまだ筆者はSRに秘められている機能がどんなものであるのか、全くわからなかったのだ(筆者はプログラムとかハードとか、全く詳しくありません(笑))。そして友人の一人がSRをすぐに購入し、そして当然テグザーも購入した。筆者はさっそく友人宅に遊びにいったのだ・・・そして・・・。


「なんだぁ~。このスピード!音楽! おもしれ~」

このゲームをプレーしたきっと誰もがそう思ったと思う。ここまで高速なスクロールゲームが88にはなかった。そしてもう1つ誰もが思っただろう。

「NECに騙された~」

そう、筆者の別の知り合いには、このSRの発売直前に8801mkIIを購入したものがいた。こんなヤツにテグザーを見せたらきっと失神してしまうに違いないと・・。(筆者も自分がSRを買う余裕がなかったので、必死にテグザーを拒もうとしたが、その約半年後についに誘惑に負けてしまった)。

まぁ上のは筆者の例だが、少なからずこんな人はいたと思う。



テグザーのどこがおもしろい?

テグザーはそれまでPC8801で発売されたどのゲームにもなかった、高速スクロールとアニメーションが一番の特徴だろう。変形に慣れるのに最初時間がかかるのだが、指さばきさえうまくなれば、自機をスムーズに変形させながら、思い通りに動かすことができる。
また、ビームの自動標準という点も目新しい。勝手に高速なビームが敵を狙うのである。爽快感と簡便さが伴ったすばらしいアイデアだ。また、敵も1つずつのキャラがアニメーションし、相当にたくさんの敵が同時に出現しない限り、処理スピードは落ちない。このスピード感を殺さないプログラムテクニックはさすがというところである。
続いて、FM音源による音楽。音楽が入っているとこんなにゲームが変わるものなのかと実感させてくれたゲームである。曲が全く変わらないのはちょっと残念だったが、初物にそんな注文を出すのは酷だろう。この音楽だが、初物にしてはFM音源にPSGを組み合わせた使い方をしており、なかなか音源自体を使いこなしたものだったと思う。また、エンディングのムーンライトソナタも哀愁が漂い、アクションゲームなのに妙にマッチしていた。



テグザーの魅力

テグザーの魅力はいくつかあるが、インパクトとしては、高速なスクロールと、自機のなめらかな変形の2つにあると思う。まず高速スクロールから。テグザーは、「アルフォス」で使われたプレーンの使い分けを使用している。テグザーの背景は、黒なのでまず背景との重ね合わせ処理は必要ない。また、"B"と"R"(3つのうちの2つのプレーン)で自機や背景、敵などのキャラクターを表示している。2プレーンしか使用していないので、書き換えも楽だが、その分色数は4色(赤、青、白、黒)に限られる。もう1つのプレーンは、ビームライフルに使用され、複数の色を割り込みなどで同じパレット定義しなおすことにより(フラッシング)、レーザーや爆発パターンをこのパレットに書きこむことによって点滅したパターンを表示している。ビームが7色に光って見えるのはこのためである(図のcの部分がテグザーのパレット)。またスクロールやキャラクタ移動の際に背景の黒で書きこむ必要があるが、この際にALUの同時書き込み機能が活用されていたと考えられる。88mkIIに比べて単純に2倍の速度が得られる。

続いて自機のなめらかなアニメーション。テグザーでは自機が走るシーンに8個、戦闘機に変形するシーンに8個ものアニメーションが使用されている。このパターンをマシン語で扱いやすいように配列に格納し(細かく書くと難しそうなので割愛)、速度の面で向上を見せている。
以上の2つの特徴はいずれもSR特有の機能をフルに活用して実現しているわけではなく、従来の方法を利用して、効率よく処理されている(もしかすると当初よりMKIIへの移植を配慮したためかもしれない)。また、SR自体の処理スピードが高速なため、いままでのゲームにはなかった高速感が得られたのだろう。後にノーマルPC8801で動作する「テグザー88」が発売されたが、アニメーション処理の簡略化などにより、これが実現できたというのは、不思議な話ではない(ちなみにノーマル88版のテグザーだが、解析していないので分からないのだが、背景、敵のアニメーションカット、スクロールの処理(たとえば、動いたときに、絵が残るのでそれをつぶす処理とか)をを別に追加しているのではないかと思われる)。




テグザーのプログラマー池田公平氏(五代響氏)

池田公平氏はテグザーをプログラミングした人。当時22歳でゲームアーツの副社長も兼ねていた。池田氏は小さい頃から物を分解したり、電子ブロックで遊んだりとメカは好きなほうであった。中学に入ると、パーツ屋さんでアルバイトをし、そこで無線機の調整とか部品を売ったりしていたのだが、そこにインテルのCPU 8080のNEC製のものが入ってきて、それを使って自分でパソコンを作ったのが最初だという(ワンボド・マイコンの前の時代のもの)。中2のころにTK-80が発売され、それを購入しハードをいじっていた。また、高1になってからはPC-8001を購入し(考えてみるとお金持ちなんですかね)、バイトで顧客管理や在庫管理のソフトを作っていたという。
池田氏はI/Oに1度、競馬のゲームで投稿したことがあるが、本格的にゲームを制作しはじめたのは、PC-6001が発売され、ゲームのニーズが生まれてからであった。静岡から東京に上京した池田氏は自作のゲームを秋葉原などのショップブランドに持ちこんだが、彼にとってたいして高くはなかった(2万から3万)。そしてうろうろしているうちに、アスキーの浜田本部長(当時)に声をかけられ、アスキーでプログラマーとしてアルバイトすることになった。アスキーのPC-6001用のソフト「AX-7」「ライズアウト」「ペアーズ&ローターズ」は池田氏の作品で、百万以上を稼いだという。
アスキーには、ゲームアーツ創立時のメンバーの多くが在籍していた。そしてその仲間と会社を作ろうということになったのである。このときに株式会社にしたほうが外面的にも対面的にもいろいろと都合が良いということで、みなでお金を出し合い、「ゲームアーツ」を設立。設立時には、なるべく失敗しないような線で見た目もウケがよさそうなロボットゲームと、パズルゲームをつくることになった。ちょうどこのころNECからPC8801がモデルチェンジするということで、この新機種にターゲットを絞ったという。
テグザーのプログラミングは、驚くべきことにたったの2ヶ月(4ヶ月という話も)だということである。ゲームのアイデアは、ロボットものがよく売れるということで、その線で行こうという提案と、池田氏が縦割りというか断面図を見ている感じのゲームが好きなので、その2つを組み合わせたという。テグザーのプログラムとして、FM音源を扱う部分(前例がないために手探りで開発することになった)を担当し、また他にも複数のキャラクターが出てきてもスピードが落ちないようにしたり、スクロールがちらつかないようにしたり、といった部分にいろいろと気を配ったらしい。
ちなみに池田氏は、テグザー発売のあと、いろいろと内部であったらしく、シルフィード発売前にはゲームアーツを辞めてしまっている。



最後に

テグザーの発売は我々88ユーザーにとって、たいそう出費のかさむ歓迎となった。しかし、このゲームによって88SRはあっという間に世間に広がり、88mkIIの時代から88SRの時代への牽引車としての役目を果たしたといえるだろう。16面もある広大なこの世界を征服するのには、かなり時間がかかったが、筆者は16面を解き終えたときの感動をいまだに忘れることは出来ない。

参考文献:テクノポリス86年、ログイン85年7月号

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