冒険者達 賢者の遺言 by 若林氏
アスキーより1986年7月に発売
概要
中国も既に近代。時代おくれともいえる風水家のお師匠、駆雲について修行中の球少年。とつぜん謎の老人から黄金の鍵を押し付けられてしまった。そして冒険への旅路を歩み始めるのであった(いやいやながら)。
既に時代錯誤な描画方式
1986年7月当時としても「いまさら」ラインペイント方式のアドベンチャー。ラインペイント方式はパソコンで絵を描く方法の1つ。線を引く、面を塗りつぶすといった動作をその場で行って絵を表示する方式。記憶媒体がカセットテープ程度しかなかった頃はともかく、フロッピーディスクが普及した当時、既にディスクから画像データを一気に読み込む「瞬間画面表示」が一般的になっていた。
同時期に発売されたアドベンチャーに「アルファ(スクウェア)」がある、というとどれくらい時代遅れだったか見当がつくであろう。しかし、ラインペイント方式故のチープさが、かえって味わいのある絵となっていた、というのはファンである故の戯れ言か。
豊富なコマンドの登録による「半」コマンド入力式アドベンチャー
このゲームでは、コマンド入力を最初から登録されている単語を選択して行う。"L"キーを押すとファンクションキーに"LOOK" "LISTEN" "LOCK" "LIGHT"とLで始まる動詞が並ぶ。F1キーで"LOOK"を選ぶと、何を(誰を)?と聞かれ、目的語(これは日本語)を選択する。対象が5つを越えた場合はスペースキー/リターンキーで次の選択肢がでてくる。動詞によっては、目的語を2つ聞かれることもある(たとえば、"BREAK"。何を、何で)。動詞の数が多いが故に総当たりはきかないし、かといって単語探しに悩まされることもない。この方式は「あたり」だったと思う。
リアクションとゲームオーバー
また、リアクションの豊富さが「単語の多さ」を煩わしくないものにしている。
たとえば最初の画面で試してみよう。
・どこにでもあるような,ただの砂です.さらさらしています(LOOK 砂)
ほぼすべてのアクションに対して、上記のように異なる反応が返ってくる。コマンドの多さに対してこれは偉大だ。といっても、「どのシーンでも全く同じように豊富なリアクション」ではあるのだが、これはないものねだりか。
また、最後のパターンのように、オープニング1発でゲームオーバーになる選択もある。私もその口でありました。実際、ゲームを通して一発死は多い。好みの分かれるところではあるが、そういう「軽い」死ははじめてかな。ゲームオーバー後、リトライすると『作者「その意気でがんばって!」』という人を食ったメッセージが表示される。
・あたりにはブキミな沈黙がただよっています(LISTEN)
・壊れてなくなってしまいました.あーぁ,もったいない(BREAK 金の鍵 WITH 手)
・ひとりでジョーダンを言ってもおちこむだけなのでやめましょう(JOKE)
・とびはねたりして,何かうれしいことでもあったんですか?(JUMP)
・泣きわめいたことで何も解決しません.涙をふいてつづけましょう(CRY)
・あなたは家に帰る道をあるいていく.するととつぜん…(NORTH)
スチャラカ中華風世界観
寝ぼけたキャラクター設定、安易な女の子の裸、でかい肉まんといった意味のないオブジェ満載、とストレート直球のB級作品。それがこの作品の基本といえよう。「悪霊を倒す」「冒険者」「姫」と、基本ストーリーこそファンタジーの王道だが、悪霊による影響が、ハガキを読み続けるアルマジロだったり、本が3つしかない図書館だったりと、基本的に緊張感のないゲームである。そのわりに最後の対決シーンは意味なくシリアスなのだが、それはむしろB級のお約束でしょう。
古き時代のアドベンチャーとしての謎解き
マップの広さに対して謎の密度はそんなに高くありません。世界観を楽しむゲームですね。実際、当時は広いマップをうろつくこと、それ自体が楽しかった。その醍醐味は「タイムトンネル(ボンドソフト)」に近いかも。
マッピングをしっかり行えば、ネックとなる謎は高々5カ所程度でしょう。ただし、「ここがくさい」と気づきにくいポイントもあるので、はまると無為に歩き回ることになってしまいます。これはZORKから始まるアドベンチャーゲームの宿命でしょう。醍醐味でもあるのだし。
まとめ
古き時代の「アドベンチャーゲーム」が好きな口にとっては、非常に心地よいゲームであった。『とりました.落ちているものを拾うのがアドベンチャーゲームのだいごみです』というメッセージがすべてをあらわしている。
ヒント集?
ヒント集?
・マップを必ず書くこと。進める方向は右下に表示されるので、確実に。
文章:若林氏
「賢者の遺言」に関連するすべての画面写真、パッケージ写真の著作権はアスキーに帰属します。
・基本コマンドは何はなくともGET。
・食べちゃいけません。
・マンホールではなくて…
・お姉さんの言うことは聞きましょう
・○○は自分で1つ。誰かに1つ。なに、どうにかなります。
・デゼニランドの気球
・最後のコマンドはちと盲点かも。個人的には、途中で南○で○○した○○○○を
使わせるような終わり方が美しいと思う。