殺しのドレス by 平井氏


フェアリーテールより1987年10月に発売


ストーリー

8/15深夜。古谷1丁目公園の公衆便所で主人公の女友達が殺害される。なぜか右手の小指を切り取られて・・・。主人公は、友達の死の原因を探るため、動き始める。


渡辺雪三郎監督作品

アダルトの捉え方

この作品はアダルトゲームだが、Hシーンは所々にさりげなくしか用意されおらず、また大した描写も数も用意されていない。
このゲームをアダルトゲームだと期待してプレイした人にとっては、非常に物足りないゲームだろう。わかりやすく言うと、ソフト路線の『土曜ワイド劇場』や『火曜サスペンス劇場』といった感じだろうか。ただこう書くと、なんだか安っぽいゲームのような気がしてくるので止めておく。(って、書いているって)

女の人のシルエットが映し出され、手から血を流しているという、今見てもショッキングなアニメーションでゲームはスタートする。そのオープニングでは、殺されている女性の小指がないシーンが描写されており、この頃の”表現”に対する認識の曖昧さが感じさせられる。現在、このような画像があるゲームは、間違いなく問題 になるはずである。

当時としては、サスペンスドラマ仕立てで作られたゲームというのは珍しく、練り混まれた人物設定、実写画像をスキャナで取り込んだような暗い背景が、当時発売されていたAVGと雰囲気が違っていた。つまりHなシーンがあるからアダルトと言うよりも、その作品から漂う雰囲気が”アダルト”なゲームだったのである。

当時のアダルトゲームは、『天使たちの午後』を代表に、性の描写に対しての”アダルト”だった。その状態の中で発売されたこのゲームは、アダルトという概念を変化させたゲームだといえよう。


問題点

惜しまれるのは、画像表示のスピードの遅さだ。サスペンスゲームの醍醐味である”スリル”を展開していく上で足かせとなっており、最後までプレイヤーを離さずにゲームの中の世界へ引き込めたとは言い難い。

しかもコマンドを選んだときに対するメッセージがまちまちで、プレイヤーの操る主人公が喋る形によるメッセージ、古いゲームでよくあった第三者の視点による「~のようです」といったメッセージが出てきたりと、プレイする側にとっては見苦しい点もあった。

また話の内容も非常にチープで、ヒネリがあまり無い。犯人がゲーム中盤で分かってしまい、なぜその犯行に及んだかの心理状態まで理解できてしまう。

しかしこの後発売されるサスペンス仕立てのAVGの原点となる雰囲気は、このゲームからはじまったと言っても過言ではない。また作られた時代から考えるに、このような内容が精一杯だったのだろう。現在多発している猟奇的犯罪は当時は頻繁に起こっていたわけではない。にも関わらずこのような事件に着目した点については、社会的事件の到来を予感したシナリオライターに対して驚くばかりである。


文章:平井氏

殺しのドレスに関連するすべての画面写真、パッケージ写真の著作権はフェアリーテールに帰属します。