キュービーパニック
ゲームアーツより1985年4月に発売
ストーリー
ノッツ氏はいつも奇妙なものばっかり作っては楽しんでいる発明家。あの日、ノッツ氏のところへとある遊園地から仕事の依頼がありました。-あなたさまにお客様をアッと言わせるような迷路を作ってもらいたいのです。- それから一ヶ月後、ノッツ氏は動く迷路、名付けてキュービーパニックを完成させました。しかし、困ったことにノッツ氏がその中へ足を一歩踏み入れると、突然左右から暴走したキューブが追ってきて迷路の中に閉じ込められてしまったのです。脱出する方法はただ1つ。キューブの中にあるカギを取って脱出ロを探せばいいのですが、なにせキューブに挟まれてはいっかんの終わり・・・(Beep誌より抜粋 実はマニュアルにはストーリーはありません)。
テグザーの影に隠れた不幸な名作
このゲームは、「テグザー」と同時にゲームアーツから発売されたPC8801mkIISR専用のアクションゲームである。だから、このゲームが初のSR専用ゲームといういい方もできるわけである。しかし、その知名度は残念ながら低い。テグザーがロボットという人気のあるキャラクターをメインにした爽快感のあるアクションゲームで、実に一般受けが良かったのに対し、キュービーパニックは、固定画面の迷路の中をプリンのオヤジを操ってカギをとって迷路に抜けるという、非常に地味でインテリなゲームである。そこがくっきりと2つのゲームの明暗を分けたのだろう。
しかし、このゲーム、やってみると実に奥が深いゲームに仕上がっている。その内容を探って見よう。
ぐにゃっとする快感
このゲームは、移動するキューブにつぶされないようにしながら、出口である白いキューブにタッチするというものである。途中、キューブにつぶされそうになるとノッツの体力ゲージが減少し、体力がなくなるか、完全にキューブにつぶされると死亡してしまう。
脱出するには、その面にあるカギ(キューブの中にある)を取らなくてはならない。そのカギをとって、白いキューブまでたどり着くという作業が、簡単そうでなかなか難しいのである。キューブは一定のパターンと一定の速さで移動している。一個一個のキューブが全く異なる動きをするので注意が必要である。キューブは最大120個にもなる。よくキューブの動きをみてノッツ氏を動かさないとキューブの間にあっという間に挟まれてしまう。キューブはどの面もキチッとした法則で動いているので、まずそれを見つけることが大切である。
キューブの動きを見切ったら、カギへ向かって移動するのだが、途中でキューブに挟まれそうになっても、ノッツ氏はプリンのように柔らかいので、キューブに完全に挟まれない限りは即死しない。プリンのように弾力性があり、ギリギリで抜けると「プリンッ」「ビョーン」とはずむのである。これがこのゲームの1つのウリで、なんともいえない快感である。面によって、この「ビョーン」を繰り返しながらでないと進めない面などもあり、スリル満点である。
すべてはタイミング
このゲームをデザインしたのは、「ちゃっくんぽっぷ」を制作した酒井氏。酒井氏は、PC-6001のAX-5の作者である竹内氏(滝口氏)などと同様、東大マイコンクラブに所属していた人で、「ちゃっくんぽっぷ」制作後、このゲームを制作した。「ちゃっくんぽっぷ」はアーケードでは冴えないゲームであった。それというのも、ルールが複雑で理解しにくかったのと、アーケードではじっくり考える時間がなかったためである。しかし、パソコンに移植され、これらの問題が解消されると大ヒットとなった。キュービーパニックはその反省からか、「ちゃっくんぽっぷ」のような複雑なルールと自機の動きを廃して、明解で単純なルールにした。その分、「ノッツ氏」や「キューブ」の動きにかなりの凝りが見られる。
また、パズル性はかなりアップしている。全50面の中にはどうやってカギをとるのか本当に悩んでしまうような面や、キューブに挟まれながらひたすらダッシュして移動するというキー裁きが重要な面、「時計」というアイテムを使ってキューブを一定時間とめて(その間、ノッツ氏の体力は減りつづける)移動しないと解けない面など、実に多種多様である。この面を考えただけでも相当な作業だったと思われる。
また、このゲームは他のパズルゲーム同様コンストラクション機能を持っており、128個のキューブの移動軌跡(1個のキューブにつき48ステップ)や配置を自分で作成できるという贅沢な機能もついていた。
SR専用でありながら
このゲームはSR専用だが、一見すると動きが遅いため、「テグザー」のような明確なSRの恩恵を見逃しがちである。しかし、ゆっくりだがすべて異なる動きをする120個ものキューブをよく見れば、これだけ大量の個数をノーマルの88で動かすのは難しいことに気がつくだろう。
参考文献:Beep1985年
キュービーパニックに関連するすべての画面写真、パッケージ写真の著作権は株式会社ゲームアーツに帰属します。
「倉庫番」のような敵が全く動かない従来のパズルゲームから逸脱して、多数のキューブが織り成すリアルタイムの迷路を移動するという、SRのスピードがあっこそ実現したこのゲームを、私はテグザー同様、高く評価したい。