サザンクロスby M.DO!氏
バンダイより1985年1月に発売
どんなゲーム?
「サザンクロス」は「デゼニランド」,「サラダの国のトマト姫」のヒットに乗じてバンダイが発売したコマンド入力式AVGです。画面のイメージ,コマンドの入力方式等は完全に模倣した形となっていますが、 ストーリーのボリュームが適当であること,幾つかの解き方がある場面等から 話題になり、「マイコンBASICマガジン」誌上で紹介された頃から人気も上昇。当時の三大AVGとして、「デゼニ・サラトマ・サザンクロス」という 呼び方をされたほどでした。(余談ながら、第二弾「ロボパル君の大冒険?」はマイナーでした)
簡単なあらすじ
主人公は始め自分の部屋にいるのですが、どこにも移動できません。実はここか らUFOを呼ばなくてはならず、呼ぶためのキーワードが隠されているのです。やがて主人公はUFOを呼んで宇宙へ飛び出します。ところがここでハプニング発生。なんとUFOは見知らぬ星へ墜落してしまいました。
そこは星座になっている生き物達が住んでいる世界。物知りの牛飼いに助けられながら数々の冒険をこなしていきます。竜を石に変えたり、カニを柄杓で取って水のある場所まで運んであげたり、カシオペア城に潜入したり・・・。ようやくゲートを抜けて元の世界へ戻ったかと思うと、そこは宇宙船の中。宇宙人の話によると、もうすぐ目的地に着くとのこと。そう、今までの事はただの夢だったのです。
こうしてあなたは第13セクター環境会議に地球代表として出席することになりますが、無事フェニックスへの挨拶もし終わり大役を果たすことが出来ました。後は地球へ戻るだけ。宇宙船に散々苦労した上で入手したパスワードを入力するとそこはもう地球。あとは着陸してハッピーエンドというお話です。
初期のAVGとは?
「サザンクロス(デゼニ・サラトマ等々初期AVG)」を語るには、どうしても初期AVGの持つ特色を肌で感じていただかなくてはならない。よってこの場を借りて少々詳しく語りたいと思う。
さて、この頃のAVGといえば、英語,日本語はともかく、コマンド入力方式と相場が決まっていた。よってゲームの進め方も単純明快で、 コマンドを入力->メッセージで応答->画面が書き変わる
この繰り返しである。しかしそれは今のAVGとは全く違う雰囲気を漂わせていた。今でこそAVGは小説+画像+音声というインタラクティブゲームとして「如何に感動させるか」を第一とした作品作りがされているが、初期のAVGはそんな生易しいものではなかった。
あなたは「初期AVGは言葉探し」という話を聞いたことがあるだろうか? この「言葉探し」。今のコマンド入力方式のコマンド部分を手で入力しているだけだと思ってはいけない。初期AVGの神髄がここにある。
では「言葉探し」の実態を垣間見てみよう。プレイヤーはただ先の画面を見るために、それこそストーリーすら忘れるほど入力する単語を考え抜かねばならず、まさに画面を舐めるように見ていた。勿論、入力する基本単語は「ミル」。
「ミル」から始まり、「ミル ドア」,「ミル ユカ」,「ミル カベ」,「ミル シタ」,「ミル マド」,「ミル テンジョウ」・・・。とにかく画面に存在する全てのものを「ミル」しないと気が済まないのだが、肝心のグラフィック自体がショボいので、一体何を「ミル」すれば良いのか分からない。
普通に「ミル」と入力しても「ミタトオリデス。」なんて表示されて全く役に立たない極悪ゲームも存在するので、自分で当たりを入力するまで果てしなく続くのである。これが「名詞の言葉探し」である。また、「動詞の言葉探し」も存在する。これはもっと難解であり、作者(だけ)が意図した行動を取らなければいけない。一般に難所と呼ばれるのは大概こちらである。某D・Wでは、「ナデル」ではNGで、「ナゼル」だとOKという標準語すらも無視した「動詞の言葉探し」を披露し、プレイヤーを震撼させた。
「サザンクロス」はそういった難所は比較的少ない部類なのだが、一箇所だけ、尋常ではない言葉探しが存在した。それは第13セクター環境会議でフェニックスに挨拶をする場面なのだが、「アイサツ スル」では相手にされない。ここで名詞,動詞を含めた言葉探しが始まる。「アイサツ イウ」,「コンニチハ イウ」,「オジギ スル」・・・
結局どれもダメ。ではどうするか? 実は、いつもは「名詞+動詞」なのにこの画面だけは直接的に「コンニチハ」又は「HELLO」と入力しなくてはいけないのだった。イカサマではない。確かに説明書の「コマンド入力方法」というところに小さく載っていたような気がする。見落としていたプレイヤーが悪いのだ。
このように、初期AVGでは画面を見ることが全てであり、先の画面を見るためにはそれまで進んできたストーリーなんて何の意味も為さなかったのである。では、どうしてそこまでAVGにこだわったのかといえば、それは人それぞれなので単純な答えは出ない。ただ、当時はコンピュータにCGが描かれているだけで人が寄ってきた時代だと考えて欲しい。満足な、どころか普通のグラフィックツールすらまるで無く、一般ではBASICの命令でもっとしおしおな絵を描くしかなかった時に綺麗な絵を次々と見せてくれるAVGは非常に魅力的に写り、絵を見ること自体が楽しみだった、という一面は確かに有ったと思う。
これは、当時のAVGの売り文句の一つに「画面数:XX枚」というものがあったことからも窺い知ることが出来る。
1位:物語が良かった。 2位:達成感があった。 3位:とにかく解けた。
初期AVGでは、多分この3つが上位のはずである。
1位:征服感 2位:達成感 3位:満足感
「今までの長い道のりの末、遂に解いた」という達成感と、「遂にこのゲームを制覇した」という征服感が先に来る人が多いのではないだろうか。そして後から満足感が現れる(場合もある)。でも下手をすると解いた時点でストーリーを忘れている事も有り得るのである。
このように初期のAVGはゲームの存在意義からプレイヤーの姿勢まで今とは全く違う種類のものである。やがてコマンド入力式でもストーリーを重視したものが発売されるにつれ言葉探しはストーリーの流れを妨げるものと解釈され、コマンド入力方式の時代へと移っていくのである。
また、この難易度故にエンディングに到達した時の感動も現在の比ではなかった。今のAVGを解いた時の感動とはどういうものだろう?
ゲームの感想
このゲームってAVGなのに確かデモが付いていたと思います。X1版では音も鳴っていました。さて、非常に無難にまとまっているAVGです。特に第2章では始めから移動できる場所も多く、クリア方法も3通り用意されているため、全く行かない場所があってもクリア出来るのが特長でした(勿論全画面を見ましたけど)。また、第2章は移動出来る場所もやることも多いため、牛飼いがヒントをくれます。このヒントはそれまで進んでいるフラグに対してメッセージが表示されるので、うまく調整すると6つも7つもヒントが表示され、何個同時に表示されるか競うこともできました。
ファンタジー色の強い2章と違って3章以降はSF。ここは何といっても倉庫番でしょう。あの鍵には誰もが一回は引っかかるはず。でも最大の難所は最後の宇宙船だと思います。ここは強引な画面の繋がり方をしていて、マッピングが通用しません。そして最後の赤い地球。ガーリック(笑)の名言が忘れられません。
「チキュウ ハ アカカッタ」
言葉探しとストーリーの進み具合が程よくマッチしたAVG。2年に一度くらいはこのようなゲームをやりたいと考えるのは僕だけ・・・かな?
<文章 M.DO!氏>
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