セイレーン by 成川氏


マイクロキャビンより1987年12月に発売


セイレーンのあらすじ

トビネズミのプリルは、生き別れになっている妹のクリスを探し出すため旅を続けています。旅の末、プリルはセイレーンの森にたどり着きましたが、そこでは大変な事が起きていました。森に住む動物たちがあろうことか石像に変えられてしまっていたのです。かろうじて難を逃れた動物達から、それがパズラードの魔王パズルの犯行ということを知りました。それと同時に、妹のクリスが魔王パズルにさらわれたことも。プリルは唯一の手がかり-セイレーンの聖石-を握りしめ、パズラードの魔王パズルを倒し、森の動物達、そして何よりクリスを救うと堅く心に誓ったのでした。しかし、パズルを倒すことの本当の意味を、その時プリルは全く知らなかったのです。(ストーリーをマニュアルから抜粋)(左は88版パッケージ、右はMSX版パッケージ)


セイレーンとは

『セイレーン』は、1987年の暮れにマイクロキャビンが発売したアドベンチャーゲームです。現在はパソコンゲームよりコンシューマーゲームに力を入れているマイクロキャビンですが、同社は1982年に『ミステリーハウス』を世に送り出した、パソコンゲームの老舗の中の老舗です。当時のマイクロキャビンのアドベンチャーゲームのラインナップは、『うる星やつら』『めぞん一刻』『ホワッツマイケル』『きまぐれオレンジロード』と、原作ありのいわゆるキャラクターものがほとんどでしたが、唯一『セイレーン』は全くのオリジナルストーリーのゲームでした。

主人公のプリルは魔王パズルを倒すため森の中を探検します。森の中は迷路状になっており一応マッピングは必要ですが、それほど複雑ではありません。アドベンチャーゲームとしての謎もさほど難しいものではなく、素直に考えれば自然に答えがわかるレベルに抑えられています。そもそもこのゲームはマイクロキャビンが過去に発売し、予想以上に低年齢層からの手応えが大きかった『は~りぃふぉっくす』シリーズの路線を踏襲するものであり、難易度がその層に合わせて調整されているのだと考えられます。

グラフィックはアニメ調のもので、今あらためてプレイすると少々アクの強さを感じますね。音楽の出来は非常に素晴らしいと思います。88版はサウンドボード2にも対応しており、小川のせせらぎ等の効果音もPCMで流れます。



セイレーンあれこれ(注意:ネタバレあり)

四つ耳ウサギのポトムの元ネタが『不思議の国のアリス』の時計ウサギであるように、今自分のいる世界そのものが、ある人の夢の中で起きていること、というのは『鏡の国のアリス』の「赤の王様」の話を元ネタにしているのは明らかです。

ポトムはプリルとラトクに、自分に課せられた役割-セイレーン世界の時間と運命をつかさどること-を明かし、プリル達がパズルに立ち向かうことを思いとどまらせようとするのですが、プリル達は決心を変えません。結局ポトムは、パズルを倒した後に何が起こるのかを知っていながら、その事をプリル達に(プレイヤーにも)告げなかったのですが、おそらくパズルを倒すということは、夢の終わり-セイレーン世界の終焉を意味しているのだと思います。最後の戦いにおいて、ポトムはわが身を犠牲にしてプリルを助け、パズルの爪に貫かれて死んでしまいます。そしてプリルはパズルの不意を突き、セイレーンの聖石を使ってパズルを倒します。その後プリルとクリスは思いもよらない形で再会を果たします。ポトムの忠告にもかかわらず、最後にはハッピーエンドに至りますが、これはおそらく、ポトムの死によってセイレーン世界の未来が全くの白紙になったということなのでしょう。そして、セイレーン世界そのものである夢は終わったものの、プリル達の強い希望がセイレーン世界と現実の世界を融合させ、セイレーン世界は終焉を迎えることなく、幸福な再会という形をとって新たなスタートを切ったのでしょう。

・・・というような話は『セイレーン』ではさほど重要ではなく、つまるところ「未来は自分の手で作る」という、非常にオーソドックスなテーマに尽きるのではないかと思います。『セイレーン』では様々なエピソードから、台詞回し、設定に至るまで、この「オーソドックス」が徹底しています。「オーソドックス」とは悪い言葉ですが、何らかの魅力があるからこそ「オーソドックス」なんですね。つまり「オーソドックス」は感動のノウハウというわけです。

ゲームというのは-特にアドベンチャーゲームは-面白い性質があって、もし同じストーリーが映画だったら「ありがち」という言葉で片づけてしまうような代物でも、ゲームにおいては非常に高い効果をもたらすことがままあります。例えば名作として名高い『ジーザス』ですが、もしあのストーリーのSF映画を見せられたら、私は多分笑ってしまうと思います。他の名作ゲームも大方そうでしょう(アレンジ次第ということもありますが)。しかし、そういった噴飯もののストーリーも、双方向性とか、達成感とか、はっきりとは説明できないゲーム特有の何らかの理由によって、大きな感動をもたらすことがあります。『セイレーン』では、坦々と積み上げられた「オーソドックス」さを、ゲームというメディアのブースト効果によって大きな「感動」に変換させることに成功しています。まさにこれが『セイレーン』の面白さです。

最近は、特にコンシューマゲーム機において、ムービー・ボイス再生が当たり前になり、ゲームというメディアは既存のメディア-映画-の機能を取り込みつつあります。ということは、ゲームがかつて持っていた感動のブースト効果に期待できなくなるわけで、そうなるとストーリーの良し悪しがあからさまになります。ゲームを作る側にとっては大変な時代ですが、だからこそ良いストーリーが光る時代とも言えますね。



セイレーンこぼれ話

これはマイクロキャビンのホームページにも書かれていることですが、旅の途中でプリルの力になってくれる少年、ラトクは同社のロールプレイングゲーム『Xak』シリーズの主人公と同じ名前です(シリーズ第一作の『Xak』では名前は決まっていなかった。正式には『Xak2』から)。両者が同一人物という裏設定があるのかどうかは知りませんが、他のゲームでも使いたくなるようなキャラクターではあります。どこが魅力的というわけでもないんですが、とにかく健気なんですよね。同じマイクロキャビンということもあって、私は『Xak』の主人公の名前を「ラトク」に設定していましたが、『Xak2』から「ラトク」に決定したのを知ったときは、制作スタッフにも思い入れのあるキャラクターなんだなぁ、と驚いた覚えがあります。

『セイレーン』のエンディングでは、プリル達の旅はまだまだ続く、とありまして、確かにラトク君はその後もXakの世界でさんざん苦労したようですが、プリルのその後はとんと音沙汰がありません。『めぞん一刻完結編』のリメイクもいいんですが、『セイレーン』のその後も覗いてみたい気がします。マイクロキャビンさん、いかがでしょうか?


文章: 成川氏



ゲームをちょっとやってみましょう

セイレーンは1987年に発売されたゲームです。このころのアドベンチャーゲームは徐々にコマンド選択式のゲームに移行しつつあり、難易度を安易にし、シナリオをプレーヤーに見せるという紙芝居的なゲームが増えていきます。セイレーンもこのパターンの作品です。セイレーンは、キャラクター、物語、音楽、どれをとっても1987年~1989年に発売されたマイクロキャビンのアドベンチャーゲームの中で最もすぐれたゲームでした。名作「はーりぃふぉっくす」を意識したストーリーとキャラクターは、独特の雰囲気と愛らしさを持っていました。
ただ、欠点もあります。難易度を上げるために、不自然に同じコマンドを何度も実行しなくてはならないということ。プログラムが「めぞん一刻」以降、ずっと同じシステムを使いまわしているために、全体的に非常にスピードが遅いこと。音源ドライバ関係の出来が悪く、効果音と曲の継ぎ目がうまくいっていないことなどです。PCMを効果音として使用したゲームは、このゲームがたしか初めてのはずですので、そのあたりの思考錯誤はあったと思いますが、作者の加藤雅史氏(「英雄伝説サーガ」からの開発者)にはもう少しがんばってほしかったところです。
ここでは、セイレーンのほんのさわりをプレーしてみます。答えになるようなことが書いていますので、ご自分でプレーされるかたは読み飛ばしてください。(Y.ROMI)

さらわれたクリスを救い出すためにプリルはいま旅立つ!


ブキミの森は昨日の嵐であたりはすっかりと静まっています。ふと周りをみると石にされた動物たちが・・。なんてむごいことをするんだ。パズルめ、絶対にゆるさないぞ。ここの石像をよーくみると下にクリスがもっていたブルーの宝石が落ちているので、拾っておこう。


ちょっと進むと長老のモルグじいさんがいた。でも、昨日の嵐がひどかったのか疲れていて話し掛けても相手にしてくれない。どうやら水をかけてほしいらしい。そこで川で水をくんできて、かけてあげたら、昨日の嵐でクリスがさらわれたことや、仲良く暮らしていたこと、そしてさらわれた理由は天上界のセイレイなら知っているということを教えてくれる。


なんだ? いきなり4つ耳ウサギが登場。いきなりなれなれしく話しかけてくる。どうやらセイレーンの時間を管理している見習いウサギらしい。魔王パズルの影響で時間の流れが早まっていることを教えてくれる。さらにパズルは明日朝きっかりにクリスを我が物にしてしまうと話しかけるのだが・・・。


おいおい、話の途中でいきなりいなくなるんじゃない! どこにいっちゃっうんだ、まったく・・。しかし何者なのだろう、このウサギは。(とっても重要な役割を果たすウサギなんですけどね)


今度はキツツキさんに遭遇。キツツキさんは虫が木の下に落ちてしまって困っているので、虫を拾って投げてあげよう。お礼に木の実をくれる。


ヤマアラシがうずくまっている。はなしかけても「お腹が・・」といって相手にしてくれない。でも木の実をあげたら喜んで食べてくれた。とってもお腹がすいていたみたい。このヤマアラシ、とっても冗談ずきで、「もう一個ちょうだい」とか「NANNO(南野陽子のシャレ)」とか言ったりする。また自分のハリを一本くれる。これは後々とっても役立つアイテム。


ビーバー出現。昨日の嵐で水かさが増したので、木をきって塞き止めているらしい。とっても働き者なんだなぁ。魔王を倒しに行くことを伝えると、木を歯で加工する術をおしえてくれるんだ。木の剣をここで作ってアイテムにできる。これも後々役立つぞ。


またまた4つ耳ウサギ出現。「詳しくはセイレイさんに聞いて」だって。なんか忙しいやつだなぁ。またどっかにいってしまった。でもその後でいきなり突風が吹いて・・・


どうやらここは天上界!? ここのどこかにセイレイさんがいるはず。まずはセイレイさんを探さなければ・・・。


という感じでほんの序盤をやってみました。このあとどうなるかはぜひ購入して御自身でプレーされてみてください。え?ちょっとだけこのあとをみたい? ではほんの少し載せましょう(笑)

これがセイレイさん。とってもやさしいお方なのよ。クリスがセイレーンを治める人になること、そして魔法の鏡という心強いアイテムもくれるのねん。このあとも度々プリルのことを助けてくれる。


魔王パズルの罠にはまり地底メイズに落ちてしまうプリル。果たしてプリルの運命は・・。


地底メイズで次々に襲ってくる魔王の手下たち。サソリは毒をもっていて強敵だ。いったいどうやってこいつを倒すかはゲームをやってのお楽しみ。


地底メイズで襲いかかってくるオオトカゲ。こんな大きいやつに剣で立ち向かうプリル。


仲間になってくれる動物もいる。このモグラさんもその一人(一匹)。


このゲーム中、1,2を争うほどの強敵のコブラ。毒はあるし、獰猛だし、注意してかからないと死んでしまう。また、ある武器をここで使ってしまうと、次にでてくる強敵「テン」で死亡するので注意。


たくさん敵がでてくるけど、森にはプリルに味方してくれる仲間もいっぱいいる。クマさんはとっても心強い味方なのだ。ただし、クマさんを出すにはある条件が必要。


プリルの行く手に待ち構えているのは、敵だけではない。大自然の脅威もまたプリルに容赦なく襲いかかる。


物語の終盤、Xakシリーズでおなじみのラトクがマイクロキャビン製品の中で初めて登場する。ラトクはとっても勇気ある少年でプリルといっしょにパズルと戦ってくれる。


バクのパックおじさんはプリルたちを夢の世界へと案内してくれる。猫のキャットはなぜかラトクのことが好きになってしまう。


純真な心をもつ少女の夢の世界へと飛び立つプリル。もうここは物語の終盤。


一体結末はどうなるのか・・みなさん自身でぜひプレーしてくださいね。



「セイレーン」に関連するすべての画面写真、パッケージ写真の著作権はマイクロキャビンに帰属します。