ブライ上巻
リバーヒルソフトより1989年11月に発売
ストーリー
海賊たちが商船を襲い、妖術師が不思議な力を見せるキプロスの星には、人間たちのほかにもトカゲのようなリーザス族と、縫いぐるみのクマのようなウォッシュ族が暮らしていた。いろいろな勢力のぶつかり合いによって、ところどころには争いの火種が見えるものの、キプロス王家統治のもと、キプロス大陸と7つの島からなるキプロスの世界には平和が続いていた。
しかし、海賊たちの争いなどとは比べ物にならないほど危険な、しかしまだ小さな火種が、キプロスの地には潜んでいた。この世界を根底から覆すような、恐るべき力が現れようとしていた。ビドーと7人の部下たちが闇の神帝ダールを6千年にわたる眠りから呼び起こし、その力によって皇帝ビドーと七獣将に成り果てたのだ。
こうして世界の表舞台にその姿を現した火種は、まさに新鮮な空気にであった火種のように、そのありとあらゆるものを燃え尽くすような力で、わずか半年のうちにキプロス王家を滅ぼし、キプロス全体に広がった。ダールは神帝であるがゆえに、神ならぬ身の人間には抵抗しえないのだ。
しかし、すべての希望までもが焼き尽くされたわけではない。伝説にあるとおり、光の神帝リスクが光の御子として降臨し、神の力をうけた8つの玉が、リスクを守る定めをもつ8人の勇者のもとに現れた。
この8人の戦士が何よりも先になすべことは、光の御子が襲われたときに張られた光の結界が消え去るまでの1ヶ月の間に、光の御子の待つソルテガに集まり、ダールの徒に対抗する態勢をとることだ。しかし、光の結界の影響下にあるとはいえ、ダールの力は強い。反乱者として最高刑務所に閉じ込められた主人公、海賊のハヤテにとっては刑務所から脱出することから闘いが始まる。
(ログイン1989年No.14 P.14から引用)
発売当時
このゲームは、発売前から宣伝や紹介がすごかったと記憶している。雑誌「ログイン」では発売の半年も前からこのゲームを取り上げていたし、他の雑誌も同様であった。雑誌から得られるその情報量の多さや世界観の広さに、88ユーザーの期待は非常に高まったが、発売予定だった秋になっても一向に発売されず、雑誌による紹介だけが延々と続いていた。
雑誌から想像するに「すごいゲームらしい」ということは分かっていた。なにしろ「ラストハルマゲドン」で一躍有名になった飯島健夫氏がシナリオを担当、テレビアニメ版「聖闘士星矢」、「ベルサイユのバラ」作画監督を担当した荒木伸吾&姫野美智氏(写真:左が荒木氏、右が飯島氏)がキャラクターデザインを担当するというのだ。
また、日本初の女性ハードロックバンドとして当時活躍していたSHOW-YA(写真)が音楽を担当。これだけでも88ユーザーは期待に胸を膨らませていた。
ようやく我々がプレーできたのは、1989年の12月の終わり頃だった。正月に「BURAI」を遊んでいた人も多かったのではないだろうか。そしてこのゲームは筆者の期待を裏切らないすばらしい内容であった。
40分もあるオープニングデモ
ブライはディスク9枚組である。88のゲーム史上、最大のディスク枚数のゲームはおそらく「トンネルズ&トロールズ」のディスク12枚組だと思うが、ディスク9枚でも88史上5本の指に入る枚数の多さであると思う。そのうちの2枚はオープニングデモに使われていた。飯島氏は前作「ラストハルマゲドン」でもオープニングデモに2枚のディスクを使い、オープニングデモのビジュアルとストーリーでユーザーの心を掴もうと意識していたようである。
「ブライ」は「ラストハルマゲドン」以上にオープニングデモに気合が入っている。それは「ブライ」がテレビアニメのような世界設定と人物設定を持っているために、ビジュアルデモによる表現が、容易かつ効果的だったのと、ゲームを開始する前にユーザーにブライの世界観を理解してもらいたいという熱意によるものなのだろう。なんとデモは全体で40分をこえる(4MHz時)。当時、このデモの長さだけでも開発者の物凄い気合をヒシヒシと感じることができた。デモの内容も、これから始めるゲーム人たちへの期待を高めるような作りになっており、好感がもてた。また、キャラクターのポーズやアングルなども、荒木・姫野両氏が実際の作画を担当したため、「ラストハルマゲドン」のようにただモンスターが口をパクパクするだけではなく、まるでアニメを見るような、実に見ていて快いものに仕上がっている。
デモが長ければ良いという分けではないが、パソコンゲーム史上、40分のデモがあるゲームというのは他に存在するのだろうか? まさに当時のパソコンゲームならではの容量の使い方、コンシューマーゲームでは味わえないスケールの大きさを88のユーザーは堪能できたのではないだろうか。
八玉の勇士たち
ゲーム進行を説明する前にメインとなるキャラクターたちを紹介しよう。
ザン・ハヤテ | ある目的のために海賊となって、ジャック・ランスロットの一派と共に海で暴れまわっていた。無鉄砲で直線的にしか物事を考えられない単細胞なヤツだが、情に厚く、家族のように過ごしてきた海賊仲間とは強い信頼関係で結ばれている。戦闘ではゴンザとともにパワーがあるので中心的な存在となる。いちおう本編の主人公。青玉を持つ。 |
ゴンザ・プロット | ウォッシュ族というクマと人間の中間のような種族に属する。体が大きくて力もあるのでとにかく強い。第1部ではスタート直後から敵をバキバキ倒せるキャラクター。攻撃力の上がりは速いが、頭を使うことは苦手。ゴンザのしゃべり方は「てにをは」が抜けており、ゴンザの朴訥さがよく現れている。スターウォーズの「チューバッカ」をイメージして作られたらしい。藍玉を持つ。 |
マイマイ・プロット | ゴンザの妹なのだが、体格も性格もゴンザと正反対。リスのようにすばしっこく、頭がよくて予知能力もある。マイマイは15歳とは思えない風貌と喋り方であるが、見かけによらずずる賢いところもあり、第1部ではプレーヤーを騙してしまうことすらある。両親が死んだあとはゴンザと2人で助け合って旅を続けているのだが、頑固者のゴンザを言い聞かせるのにいつも苦労しているようだ。ゴンザとは凸凹コンビでいい味を出している。戦闘になるとほとんどお荷物的な存在で、一撃で戦線を離脱してしまう。赤玉を持つ。 |
幻左京 | 左京は人間ではなく、神である。竜の一族の頭領・氷竜の人間としての化身が左京なのである。普段は天界に身をおく彼だがなぜ八玉の勇士として参加するのかはゲームをプレーしなければ分からない。彼は自分自身のことをあまり語らない。光と闇の闘いの意味を知っているのも彼だけだろう。第1部では1度氷竜の姿になるのだが、そのときの戦闘力のすごさはスゴイの一言である。彼の水術はパーティには欠かせない存在である。「抜忍伝説」の幻妖斎その人。白玉を持つ。 |
アレック・ヘストン | アラメンテ島にある占い師の村の長老で、水晶玉を使っての遠見の術を得意とする。かなりの高齢だが、多くの特殊能力があり、頼れる存在でもある。しかし、彼の性格は問題があり、オープニングから敵のハジャを騙したりと、とんでもないジジイである。紫玉を持つ。 |
クーク・ロー・タム | 念術師のバビルとマリアのひとり息子。バビルは立派な念術師であるか、息子のクークはちっとも念術を覚えていない。たった9歳の子供でかなり過保護に育てられたのか、臆病で人見知りもはげしい。暗くジメジメしたところに行くとストレスの値も最高値となる。しかし、クークは動物たちと話をすることができる。この動物たちとの結びつきはゲーム中でも大いに効を奏する。八玉の勇者に選ばれたのはバビルだが、運命のいたずらによって最後に勇者として旅立つのはクークとなる。黄玉を持つ。 |
ロマール・セバスチャン7世 | トカゲのような容貌をしているリザード族だが、振るまいは人間と変わりない。しかもロマールは、ベルンバ島きっての名門貴族、セバスチャン家の嫡男という立派な肩書きをもつ紳士である。彼は何不自由ない生活を拒否し、10年前に勘当同然で家を飛び出し、それからは持ち前の剣術を活かしてサーカスの曲芸師として勝手気ままな放浪生活をしていた。後に父の危篤を知り、それがゲームの舞台となる。モデルはアルセーヌ・ルパンで、左京とキャラがぶつからないように、設定がトカゲになったらしい。緑玉を持つ。 |
リリアン・ランスロット | このゲームの紅一点。幼い頃に男の子と交わした結婚の約束を今でもしっかりと覚えていて、その子の行方を探して旅をしているとしてロマンチストである。それだけに思いこみも激しく、感受性も強いので周りの人間はオロオロするばかり。彼女の勝手な思いこみのために、ハヤテはすっかり嫌われ者となってしまう。針を使うことが得意。紅玉を持つ。 |
ゲームの進行
さて、基本的なゲームの進行について触れて見たい。このゲームは、大きく2つに分かれている。まず第1部は、主人公であるザン・ハヤテを中心とする八玉の戦士たちが光の御子のもとに集結するまでを描き、第2部ではみながパーティを組み、ダールと戦うまでを描いている。第1部では8人のストーリーが別々に語られる。この形式によって、プレイヤーはキャラクター一人一人の性格、背景をしっかりとつかむことができた。また、そうさせるだけブライのキャラクターはきちんとした性格付けがなされていた。なお、この、最終的にパーティーを組むことになるメンバーそれぞれのシナリオをプレイした後に全員があつまる、というゲームスタイルは「キングスナイト」(スクウェア、ファミコン)が最初だったと記憶している。
各シナリオでは、それぞれのキャラクターの生い立ちや、宿命といった要素が別々に語られ、これが後のストーリーの伏線へと繋がる。それぞれのシナリオは非常にバラエティに富み、ハヤテの「刑務所から脱出する」という大脱走をイメージさせるものから、ゴンザの「宿命を受け取らずに自分の敵討ちをする」という話や、ロマールの「お家騒動」、左京の「恋人の墓参りに行く」という八玉の勇士としての戦いとまるで関係ない話までさまざまである。そのために、第1部の8つのシナリオは、まるで違ったゲームのもののようにさえも感じる。
ハヤテの章ではボス級のキャラ(ブライでは「Aキャラ」と呼ばれている)がバンバン登場し、どうやって出口まで体力をゼロにしないでたどり着くかという、大脱出ゲームのようになっている。左京の章では、彼が神帝であるために中盤で左京が竜に変身してからの強さはほぼ無敵。どうして左京が経験値かせぎをしなくてはならないのかは、物語を進めていくうちに分かってくる。リリアンの章では途中からナゾナゾを解くという、リバーヒルソフトお得意の推理を絡めたゲームになる。ロマールの章は途中からお家騒動をテーマとしたお使いゲームに変身する。クークの章では、本来の八玉の勇士であるはずの父親のバビルが途中で殺されてしまい、まだ幼くて何もできないクークが代わりに勇士となるという感動的なエピソードでプレイヤーを泣かせる。どれも非常に個性的だ。また、どのシナリオから始めるかはプレイヤーの気分次第である。気に入ったキャラクターから始めるのもよし、上から順番に終わらせるのもよし、である。
第1部がすべて終了すると、中間デモがあり(このデモは本レビューの最後におまけとしてつけておいた)、第2部が開始される。第2部は八玉の勇士が勢ぞろいし、画面左のキャラクター欄もようやくすべて埋まることになる。ただし、同時に敵もかなりパワーアップする。また、自分の扱うキャラクターの数も多いので、隊列や戦闘方法をいろいろと工夫しないと楽勝というわけにはいかない。町には数多くの武器(本当に多い)が売られている。また、本を読んで特殊技を身につけていくことも大切である。第2部はそれぞれの戦士に必要な8つの神器を見つけることが当初の目的となる。大陸にはさまざまなイベントが用意され、そのイベントをクリアするたびに、ブライの世界に関する重要なカギが提示される。そして先に進むと、数千年前から始まった光と闇の闘いの本当の関係を知ることとなるのだ。後半では、七獣将の根城に次々と潜入し、物語は大いに盛りあがりをみせる。そしてラストはビドーのいるキプロス城へと突入する。
ゲームシステム
ブライのゲーム画面は、「イース」のような斜め上からの見下ろしタイプである。またゲームシステムは、それまでの他のロールプレイングゲームとそれほど変わりはない。変に新機軸を取り入れてプレイヤーの意識をシナリオからそらしてしまうよりは、そのほうがよかっただろう。ただし、細かいところで新たな試みを取り入れ、それが楽しい要素になっているのは見逃せない。キャラクターには、魔法ならぬ「特殊能力」がある。これは念術や水術、針術などキャラクターによって違うが、基本的な技の効力はどれも似ている。体力を回復する回復系の技と、相手にダメージを与える攻撃系の技、そして移動系、防御系などがある。
こうしてみると普通のロールプレイングゲームの魔法となんら変わりないようだが、その技の習得と技の名前や概念がおもしろい。これらの技を習得するには、「本」を読んで勉強しなければならない。本は歩いているときに装備することによって、「読む」ことができ、その本の厚さ(ページ数)によって読み終わる速度が違う。つまり効果的な技ほど、なかなか読み終えることができないようになっている。本は何種類もあって、どの本を誰が読もうが自由である。しかし、関係ない本を読んでも何も身につかなくて、時間の無駄となる。本のタイトルから「この本はハヤテが読む本だろう」と推測しなければならない。たとえば「男は闘いだ!」という本をハヤテが読むと「めった打ち」と「暴れ雷」という技を覚えさせることができる。「針の神秘」という本をリリアンに読ませると、「マシュラト」「ラガムッシュ」といった技を覚えさせることができる。また、一見して全然関係ないように見える本もある。「男の身だしなみ」という本は読む必要があるのか迷うが、左京に読ませると「知力」がアップする。同様に「犬の手帳」という本をクークに読ませると「知力」がアップする。
続いて、画面のステイタス表示について。画面の左側にはキャラクターとそのステイタスが表示される。このステイタス表示がちょっと変わっていて、玉の色によって数値を示している。玉が輝いているときは最大値の80%~100%状態、そしてだんだん数値が下がると輝きが暗くなっていくというものである。しかし、ちょっとこれは分かりにくかったと思う。「攻撃力」や「すばやさ」「ストレス」いった項目は常時みる必要はないと思うし、それを削ってもっと見やすいステイタスにして欲しかった。
敵キャラクター
ブライの敵キャラクターは、ビドーと七獣将の他にも「Aキャラ」と呼ばれる、出てくると必ずイベントとなるキャラクター(いわばボスキャラのようなもの)が実にたくさんでてくる。Aキャラは敵の表示画面を個別のグラフィックで占領する。それまでのロールプレイングゲームでは、このような個別のグラフィックをもった通常の敵とは別格の敵キャラクターは、物語の節目や最後に出るものと相場が決まっていたが、ブライではこのようなキャラクターが序盤から気前良く登場する。特にハヤテの章では、最初の敵がなんとAキャラである。これはユーザーに対するサービス心が旺盛であると感じられたし、物語も冗長にならない効果もあってよい試みであったと思う。
また、このゲームの敵キャラクターで大変おもしろいのが、「人数を持った敵」である。たとえば、「屯田部隊1000人」とか「歩兵500人」といったものである。これらはダメージを与えると数がどんどん減っていきゼロになると敵を倒したことになる。しかし、いくら「敵は2億4千万」と広告にあるからといっても、一気にこれほどの数の敵が出てくるとはなんと大胆な発想である。しかし、それを一撃で100人以上を殺してしまう八玉の勇士もまた・・・恐ろしいヤツラである。
キャラクターに個性のあるゲーム
ブライは「南総里見八犬伝」のパロディーであると原作の飯島健夫氏が当時語っていた。また、「荒野の七人」なども意識しているらしい。しかし、「ブライ」はそれら基になった物語を超えるような個性のあるキャラクターを生み出した思う。それはゲーム(アニメ)という世界だからこそ出来たものだ。トカゲのようなリーザス族や、クマのようなウォッシュ族、人間以外の存在がメインキャラクターに含まれているために、実にバラエティーに富んだ構成になった。さらにそれらが最近流行りの美男美女ではなく、老若男女入り混じっているところも筆者は好きである。また、敵もビドーを中心として実に個性が強い。原作の荒木氏の力によるところが大きいが、この個性あるキャラクター群は、通常のアニメーション番組にも見られないような、すばらしい出来であると思う。
すばらしい音楽
音楽を担当したのは、日本初の女性ハードロックバンドと言われた「SHOW-YA」である。今では解散(98/09/30に解散)してその名を知る人も少ないと思うが、当時は人気があった。SHOW-YAの作曲した曲が、「BURAIプロトタイプ」というCDに収録されているものだとすると、その数は10曲も満たないが、実のところは不明である。元々、飯島氏は音楽をSHOW-YAに頼もうと最初から思っていたのではなく、たまたま音楽関係者にあたったところ、SHOW-YAがこの企画にOKを出したという経緯だったとなにかの雑誌で読んだ記憶がある。SHOW-YAの制作した曲はどれもパソコンゲームミュージックとはかけ離れたイメージテーマであった。
この漠然としたイメージテーマを、88の音源にコンバートした人は藤岡千尋氏である。彼は、クリスタルソフトの初期からのメンバーで、バンドマンとしてミュージシャンの活動も行っていた人だ。クリスタルソフトでは「バトルゴリラ」、「アドヴァンストファンタジアン」などの曲を担当した、といえば分かる人には分かる、実に通な人である。彼の制作した楽曲は88の音源(OPN)を実に使いこなした見事な音楽である。恐らくここまでさまざまな手法を用いてFM音源とPSG音源を巧みに操った人も、そうはいないであろう。もしブライの音楽を、藤岡氏が担当しなかったならば、ここまで完成度の高いモノにはならなかっただろう。
ブライの音楽の特徴として、それぞれのキャラクターに合ったテーマ曲が用意されていたことが挙げられると思う。ハヤテには「ハヤテのテーマ」、左京には「左京のテーマ」である。これらの曲にはSHOW-YAが絡んだと思われ、それまでのゲームミュージックとは異質な感じがした。特に「ゴンザ&マイマイのテーマ」は当時はゲームミュージックというより、ゲームをなめているような曲のようにさえ聞こえた。しかし、これはこれでよかったのではないかと今は感じる。それだけインパクトもあり、暖かい心を感じさせてくれるメロディだったのではないかと思うのだ。これらの曲は、藤岡氏のテクニックも加わって、10年以上経ったいまでも色褪せないていない。ブライの曲は筆者の大のお気に入りの1つである。
最後に
ブライが発売された1989年から1990年にかけては、ユーザーがPC9801やX68000といった機種へ乗り換えをし始めていた時期だ。最初の開発機種がPC98をターゲットにしたゲームも増えていた頃だった。しかし、ブライは当初PC8801で開発され、宣伝や豪華なスタッフ、デモなど気合の入れようは凄まじかった。88ユーザーにとってはとてもうれしかった。
筆者は「ザ・ブラック・オニキス」からロールプレイングゲームをずっとPC88でプレーしてきた。しかし、ロールプレイングゲームでここまでドラマを持ち合わせた、スケールの大きなゲームが出現するなど、思っても見なかった。「ブライ」はちょっと時代遅れになりつつあるPC88でも、ここまですばらしいゲームが出来るということを証明してくれた。
ブライは、作画に荒木氏を起用したことによって、一般層へ十分アピールした。これは他のゲームと明らかに違っていたことである。ブライと同時期に発売された「エメラルドドラゴン」もかなりヒットした作品であるが、どちらがより一般層へアピールしたかと考えるとブライの方が上であったと思う。これは荒木氏による絵の効果が大きい。荒木氏の絵は80年代のテレビアニメでは見慣れたものだったので、キャラクターや世界観に感情移入しやすかった(もちろんこの絵が受けつけない人もいただろうが)。木村明弘氏による「エメラルドドラゴン」の絵は、ちょっとキザで、「美少年美少女」を狙った絵である。パソコンユーザーの一部はこの絵を歓迎したが、筆者には入れこめなかった。そして現在のパソコンゲームの絵はこのようなちょっと「オタク好み」の絵ばかりになってしまった。
パソコンゲームの過去を回顧するユーザーの多くが、「イース」シリーズや「ドラゴンスレイヤー英雄伝説」、「エメラルドドラゴン」に注目しがちだ。それはパソコンゲームを回顧する人たちが、現在でも存続する日本ファルコムを応援していることや、「エメラルドドラゴン」に見られる絵の美しさを基準にゲームを評価しがちな人が多いためだろう。しかし、当時88で「ブライ」をプレーしていた人は相当な数がいたと思うし、人気もかなり高かったと思う。それなのに、どうしてシナリオ主導型ロールプレイングゲームを回顧したときに、このゲームの名が出てこないのかと筆者はとても残念なのだ(やはり下巻までプレーしていないユーザーが多いのと、PC-Engine版の「ブライ上巻」の出来が悪かったのが災いしているのだろうか)。そう、「ブライ」は88では残念ながら完結していない。下巻まできちんと解けば、このゲームのシナリオ、特に登場人物の人間関係が実によく出来ていたことが分かるだろう。これが実に惜しい。
筆者は「ブライ」をプレーして、制作者のゲームに対する気合、執念、こだわりをヒシヒシと感じた。現在のプレイステーションなどのゲームは、「ブライ」同様にドラマチックなビジュアルシーンを交えたRPGまたはADVが多い。そして現在のマシンはPC88とは比べ物にならないくらいの表現力、サウンドを手に入れ、実際にそれを使ったおもしろいゲームも発売されている。しかし、いまのゲームで「ブライ」ほどの気合や熱意が伝わってくるゲームが果たしてどれくらいあるだろう? 時代はどんどん流れている。いま「ブライ」を見ても別にすごいと思わない。だが10年以上前にこのゲームは作られたのだ。今回改めてプレーしてみたが、そんな昔のゲームだったということを吹き飛ばすパワーがこのゲームにはあると思う。
おまけ:中間デモ
ブライのオープニングデモは長いことで有名だが、第1部と第2部の間にさらに非常に長い中間デモがある。このデモは、勇者たちが1つに集うところを中心に描いているもので、ゲーム途中にこれほど長いビジュアルシーンがあるゲームは、88ではたぶんないと思う。しかし、この中間デモは、1度見ると第2部の最初に自動的にセーブされてしまうため、2回みることができない(もちろん最初からやり直せばみることができる)。ここでは、滅多に見ることが出来ない中間デモを特集してみた。ちなみに、PC-Engine版はこの中間デモが半分以上削られていて却下である。
(注意)画面とコメントはチェックしたわけではないので、細かな言い回しはかなり間違いが多いです
リリアン「いまの私が気が立っているんだよ!ケガだけじゃすまないよ」
兵士「しゃらくせぇ」
アレック「ホッホー、どうやら三人目の勇士が来よったようじゃわい」
ロマール「そのようですな」
リリアン「あー、あなたがクソじじぃ・・いえ、アレックさんね。もー、なによあの村は」
・・と話が弾んでいるところにハヤテが登場
リリアン「うそ・・せっかく明るくふるまおうとしていたのに・・冗談じゃないわよぉ!!!」
ハヤテ「なんだ?なんだ?」
リリアン「なんであんたが八玉の勇士なのよ・・わぁーん」
ハヤテ「いきなり襲ってきてどういうつもりなんだよ!」
アレック「この子はしばらく近づかん方がいいよ」
ハヤテ「はいはい、さいですか。わかりました。全く分けがわかんねぇよ」
ロマール「さぁ、お嬢さんこちらへ」
そのとき、ゆっくりと扉が開いた。
ハヤテ「おい、坊主、ここはあぶねぇから早く帰った方がいいぜ」
アレック「これこれ、子供がおびえているではないか。もうちっと優しくできんのかい?」
クーク「その左腕のリング・・おじいちゃん、おじいちゃんだ!!」
クーク「おじいちゃんにこんなに早く会えるなんてぼくちっとも思わなかったよ。ぼクーク、クークロータムです。」
アレック「クークちゃん?あ、バビルの息子か!」「バビルはどうしたんじゃ?ヤツが勇士の1人だと思っておったが・・」
クーク「お父さんはビドーに殺されちゃいました。お母さんといっしょに・・」「そのリングは念術師の長老の証でしょ?」
アレック (まさか、おじいちゃんまで死んだなんていえるかい・・ハッサム、おぬしを恨むぞい) 「ああ、もうクーク悲しむことはないぞ、これからはずっとおじいちゃんが一緒じゃ」
クーク「うれしいよ、おじいちゃん!」
その3日後、新たな客がやってきた。
ハジャ「ビドー様、八玉の勇士がぞくぞくと光の御子のところに結集しております」
ビドー「まぁよい。この城で迎え撃つのは一興かもしれんな。それまで生きていればの話だが。すでに手は打った。ゾルトバとバルバラの軍勢をソルテガに向かわせておる」「やつらはまだ何もわかっていない・・・ハッハッハ」
ゾルトバ「たかが子羊8匹だろう。何も我らが10万の軍勢を使わんでもカタがつくとおもうがな」
不知火「私は心配でございます」
ゾルトバ「またおまえの心配性か・・。おまえは俺のそばにいればよい」
ゾルトバ「うるせい!俺は気なんかぬいていねぇ」
ゴッゴ、ゾッゾ、ドッド登場。「バルバラ様の水術にかなうものは誰もおりません」
バルバラ「しかし、私の水術は伝説の氷竜の教えを請うてこそ完璧なものとなる。ビドー様の念願がかなえば天界への道が開く。そして私は伝説の竜神、氷竜に会う!」
ゴンザ「ゴンザ、ゾルトバ倒す」
ロマール「しかし、残りの1人は遅いですな・・」
そのとき扉が開いた。
ハヤテ「ようやく八勇士がそろったっけわけだ、ほんじやさっそくでかけようぜ」
アレック「事を起こす前に1つ自己紹介と行こうではないか」
それそれが自己紹介をはじめる。
ハヤテ「それじゃそろそろ行こうぜ」
ハヤテは勢いよく扉を開いた。
その小屋を囲むようにしてゾルトバとバルバラが率いる軍勢が待機していたのである。
ハヤテ「これじゃ身動きがとれないぜ」
アレック「なにをいっとるんじゃい。さっさとあるかんかい」
アレックはすたすたと歩き始めた。
ゾルトバ「ヤツらめ、気でも狂ったか。この軍勢に向かってくるぞ」
不知火「違うと思いますがね」
ゾルトバ「皆の者、一気に勝負を決めろ!」
兵士が一斉に動き始めた。
兵士たちは八玉の勇士に襲いかかり、火花が散った。
アレック「我々はいま光の結界に守られておるんじゃぞ。ビドー軍など怖くないわい。ほれ、近づくとケガするぞい。」
ハヤテ「そうだったのか、ホレ道をあけねぇか」
ビドー軍がしぶしぶ道をあける中、バルバラが勇士の前に立ちふさがった。
リリアン「なにいってんのよ、アンタいまの話をきいてなかったの?」
バルバラ「闇の者たちが近づけないといえど、おまえらを倒す手段はいくらでもあるのさ、たとえば溺死させるとかね。」
ハヤテ「こんなところでどうやって溺死するんだよ。おもしろいねぇちゃんだぜ」
バルバラ「私の水術であの世に送ってやる。水術、荒乱水舞!!」
バルハラ「私は大気中の水分を増大させ、どこにでも水を呼ぶことができるのさ」
アレック「ガボビエ(苦しい)」
ロマール「ブ、ブビャブ(不覚)」
勇士たちはバルバラが作った水の中でどうすることもできずにもがきつづけた。
バルバラ「なんだと!」
左京の体が一瞬ひらめくと、大量の水が嘘のように跡形も無く消えてしまったのである。
左京「世の中は広いのだ。さらなぬ修行に励めよ、小娘。」
左京「すまんな、お世辞でもうれしいぞ」
ゾルトバ「どうにもならんのか!このまま黙ってみておれというのか!」
不知火「無理ですね。いくらゾルトバ様が木々を操る木獣将といえども・・」
ゴンザ「ゾルトバ!?」
マイマイ「ゾルトバでちゅって!?お父たまとお母たまを殺したゾルトバ!!」
アレック「いかん二人とも。結界の外にでるではない。いまは抑えるのじゃ」
ゴンザ「う・・ゾルトバ・・覚えとけ。俺ゴンザ。おまえ必ず倒す!」
ロマール「まずはガンマの町へ行きましょう。何かと準備しなければなりなせんからね。」
各々の数奇な宿命をもった旅がここに始まったのである。
下巻について
注意:ここからはBURAIの物語のネタバレがあります。これから解こうという方は読まないでください。おもしろくなくなります。
このゲームはタイトルに「上巻」とあるとおり、これだけでは物語は完結しない。下巻へと続くのである。開発当初は、上巻、下巻になる予定はなかったと記憶しているが、飯島氏が構想を膨らませたためか、その年の秋には「上巻」「下巻」に分かれるということが発表された。しかし、惜しむらくはPC88版で「下巻」が発売されなかったことだ。ブライ下巻が発売されたのは、1991年に入ってからで、88のゲームも数少なくなってきた頃であった。98版の発売後、88版の移植を筆者は期待していたが、リバーヒルソフトからは「88では容量が足りないから無理」という無情な回答があったと記憶している。いくらユーザーが98に移行しはじめたといっても、多くの88ユーザーがフラストレーションが溜まったまま置き去りにされたことは事実である。利益優先も構わないが、ユーザーの期待を裏切ったのは非常に残念だった。これは、「スナッチャー」や「アンジェラス」にも言えることである。
下巻を解いていない元88ユーザーはかなりたくさんいたのではないかと推測している。そこで、昔に上巻を解き、下巻が発売されずにそのまま置き去りにされた方々のために、下巻の簡単なシナリオをご紹介しようと思う。
上巻で、8つの神器を集めた八玉の勇者たち。ビドーのキプロス城へと乗り込み、ついにダールを倒した。しかし、光の神リスクは赤子から抜け出そうとはしなかった。なにかに怯えていた。リスクは無理矢理赤子から引き出され、ビドーがもつアンバロの短剣(光の神を唯一突き殺せる剣)によって突き殺されてしまう。
ビドーは実は光の神リスクの息子であった。リスクがダールに勝利し、そのときの気まぐれで人間の女性を愛したときに生まれた子供がビドーなのである。ビドーは母が悲しむ姿を見てリスクを恨み、光の神が死んだあとに王座に着こうと考えていたのだ。そのために自らを封印して六千年後に甦り、ダールを復活させたのである。光と闇が再び対決するには六千年という期間が必要なためである。
リスクの死後、上空に「ブライ」が開いた。神の消滅とともにブライが開いたのである。ブライとは「武神来往道」といい、「神が消滅したときに天界と下界を神になるべく者が武によって行き来する道」のことである。神の座になる資格のあるものは天界と下界の間に生まれたものだけである。ビドーにはその資格があった。また、光と闇の戦いを綴った「キプロス創世記」は、来るべき六千年後の戦いのためにビドーが書いたものだったのである。
ブライを閉じるためには、もう1人の神を消滅させて干渉させるしかない。左京は自らを犠牲にしようとブライに飛びこむが、そのとき虫の息だったダールも左京に続いてブライに飛びこんでいった。こうしてブライは閉じた。
ダールが死に、リスクも死んだ。光の神と闇の神の二人を同時に失ったのである。左京はいう「ブライはまたいずれ開く・・」。
(実はダールも六千年前の戦いの被害者の1人だった。光の神リスクに下界に封印されてしまったのだ。これは神の世界にとって重罪であった。闇の側についた種族(月狼の一族、影の旅団など)もみな光を見ることさえできなくなった。人間やウォッシュ族、リーザス族の繁栄は、闇の者たちの衰退を意味した。しかし、闇のものたちが「悪」だったのではないのだ。)
さて、ここから下巻である。まずはハヤテとリリアンから。海賊の頭領として初仕事に挑むハヤテ。そしてハヤテを親の仇と狙うリリアン。相変わらず口ゲンカが絶えない二人である。ハヤテたちはムサシの提言でキプロス中の海に散らばる海賊の連絡船を回ることになる。しかし、他の海賊船はいままでに見たことも無いような化け物に襲われていた。実はこの化け物、前作でハヤテに顔をボロボロにされた空獣将サイモンが作り出したものだった。彼はハヤテたちに罠をかけ、ハヤテたちは絶体絶命に陥ってしまう。しかし、ハヤテの父親である天界16神のひとり、邪鬼丸があっという間にサイモンを倒し、親父だの天界だのと話の飲みこめないハヤテ(リリアンも)を6000年前のキプロスに飛ばしてしまう。ハヤテが天界と人間の子供だったことがここではっきりする。
ゴンザとマイマイはかつての勇者の面影もなく、無一文のために飢え死に寸前だった。そこでなにか食べるためにと職探しを始めるが、どこの会社でとりあってくれない。「かつての勇者をバイトで雇うなんてもってのほかだ」と言われたり、意味不明な部署たらい回し攻撃にあったりするのだ。彼らは広告にサーカスの募集があるのに気づき、そこに行ってみる。そのサーカスはかつてロマールが所属していたところであった。団長さんから大道芸の巻物をもらい、ゴンザたちと同じく親の仇と木獣将のゾルトバをねらうボンゴレ、ボロネーズ、ナポリタン、メンタイコらと旅芸人として一座を組むことになる。そしてついてにゾルトバの居場所をつきとめた彼らであったが、戦いの途中、6000年前のキプロスに飛ばされてしまう。
幻左京とナインテールは、かえでが眠るカムイ島で安息の日々を過ごしていた。しかし、かえでの墓にかける水を汲みにいった左京の前に現れたのは水獣将バルハラだった。彼女は左京に、水術の最高術である凍結行を教えてくれと迫る。しかし左京に拒絶されたバルバラは、ナインテールの子供を誘拐してしまう。悲しみのナインテールは左京とともに水獣城へと向かう。そして左京はバルバラの罠に落ち身動きが取れなくなってしまう。
ロマールは家に戻り安息な日々を過ごしていたが、従兄弟のアルベルトがギバ島でバーを開いたという手紙を読み、かつての放浪の血も騒いだこともあって、これを方便にしてギバ島を目指す。船に乗る途中で影のバージルと出会い仲間となる。そしてバーについてみると、記憶を喪失した1人の青年がいた。ソフィーと名付けられたその青年はキプロス王家の三銃士のひとりらしい(実はダニエルである)。ソフィーというのは光の御子をのせたロバの名前である。ロマールはソフィーを連れてベルンバ島に戻る。しかし愛するシャロンのもとへ急ぐ彼を待ちうけていたのは、紅蓮の炎に包まれた我が家だった。そしてその炎の中で、愛するすべてのものを失ってしまうロマール。ロマールの前に現れたのは、火獣将ガスロ。彼はロマールを6000年前の世界へと送ってしまう。一方、ソフィーは炎の中、地獣将マントスと出会う。なんとマントスの正体はかつての三銃士の盟友、タロスであった。タロスは光の心と闇の心を同時に持つ多重人格者であった。6000年前に送られたロマールは、そこでラーフとテリスという炎を操る2人の美女に出会う。彼女らの崇拝する者の名はガスロであった。
続いてアレックとクーク。アレックは悩んでいた。自分を本当のおじいさんだと思っているクークが不憫でならない。せめてハッサム最大の奥義冥府転道をクークに伝えてやりたい。そこで天下一図書館に向かうアレック一行であったが、そこで分かったのは、冥府転道の術はモード島の険しい渓谷に住む「三華仙」と呼ばれる3人の賢者に正当な人物だと認めてもらわなければならないということであった。モード島といえばクークの故郷である。モード島で3人の賢者に出会うが、そのうちの1人が虎に襲われて死にそうだったのをアレックが救ってあげる。その後、冥府転道を求めて水獣城へと向かう。水獣城ではバルバラの罠に落ちた左京がいた。左京を助けようとするアレックたちだが、バルバラの作った炎の檻はさすがのアレックも手が出ない。しかし、そこに現れたのは、ナインテールを引きつれた邪鬼丸であった。邪鬼丸はナインールの子供たちを救った。そして左京たちは邪鬼丸にハヤテたちがいる6000年前に送ってもらうのであった。
みなが飛ばされたのは、6000年前のキプロスの世界だった。左京、アレックたちは途中で山賊に身を変えていたゴンザとマイマイに出会う。そしてピラミッドにとてつもなく強い男が立てこもってることを聞く。ピラミッドの中にいたのはロマールと2人の女であった。すべてを失ったロマールは光と闇の戦いに疑問を持ち、一緒に戦うのを拒んでしまう。
しかたなく、左京たちは6000年前(いま彼らはその時代にいるのだが)リスクとダールが対決するラガンテ山に向かう。もし、リスクがダールをキプロスの地に封印することを阻止し、天界に帰すことができれば、6000年間苦しんだすべての者たちを救うことができ、ビドーもこの世に生を受けることも無くなるからである。ランガテ山頂に続く道でハヤテとリリアンに出会う。そして一行が山頂についたとき、まさにリスクがダールに勝利を収めたところであった。リスクはダールをキプロスの地に封印しようとするが、そこに勇者たちが割って入った。また、天界から麗鬼も現れて2人の神の前で神の掟を破ることができなくなったリスクは、ダールとともに天界へと帰るのであった。
6000年前のキプロスから現在へ戻ろうとした勇者たちは、異次元空間に放り出されてしまう。この異次元空間はあのビドーが作り出したものだ。光の神と闇の神がキプロスから去ったため、ビドーはもはや存在しないはずであった。しかし、彼は異次元空間ではまだ存在できるらしく、勇者たちに「異次元城で待つ」と言い残して居なくなってしまう。しかたなく異次元城へ向う一行。異次元城で待っていたのは、あのロマールであった。ロマールはこの戦いに参加するために戻ってきてくれたのだ。異次元城では、七獣将たちが待ち構えていた。
まずはじめに現れたのは、火獣将ガスロだった。ロマールはガスロと対決するため、他の勇者を先に進ませた。すべての愛するものを失ったロマールは、ガスロに6000年前のキプロスに飛ばされた後、ラーフたちとともにピラミッドにこもった。そしてシャロンたちを殺してしまったのは、光と闇の戦いに巻き込まれたからであり、その戦いに参加していた自分が悪いのではないかという自責の念にとらわれていた。そしてすべての光と闇を恨み、自分に負け、自分を捨てた。そして醜い仮面をかぶり、ガスロと名乗るようになった。その後ガスロは闇の魔将としてビドー軍に加わり、シャロンたちを自らの手で殺したのだ。だがロマールはそんな過ちを犯してしまう自分に気が付いた。だからこの最後の戦いに参加したのだ。
ガスロはロマールに自分を殺せるわけがないと、高笑いするが、ロマールの決意は堅かった。ロマールはガスロと対峙し、ガスロの胸を剣で貫く。しかし、ガスロが死ぬということは、ロマールの死も意味するのだ。ロマールはガスロと共に壮絶な最後を遂げてしまう。そして、その戦いをバージルはしかと見届けたのである。
次の部屋に待ち構えていたのは木獣将のゾルトバと不知火であった。ゾルトバを親の仇と追っていたゴンザとマイマイはこれが最後のチャンスとばかりに他の勇者を先に進ませ、自分たちはゾルトバと対峙する。戦いの中でゾルトバをあと1歩のところまで追い詰めたゴンザとマイマイ。しかし、ゾルトバはもはやかなわずと見て、いきなり降伏を申し出て、いままで自分の犯した罪を償いたいという。あまりの変わりように、ゴンザとマイマイもゾルトバを許すことにした。 しかしゴンザがゾルトバを起こそうとした瞬間、ゾルトバが隠しもっていたナイフがゴンザの胸に突き刺さった。ゴンザはマイマイの必死に話かける声に、なんとか応えるがそのまま死んでしまう。あざ笑うゾルトバ。怒ったマイマイはゴンザの藍裂斧を持ち上げ、ゾルトバ目掛けて投げつける。ゾルトバのあまりに汚い行動に、不知火は自分の犯した大変な過ちに気づき、わざとゾルトバに藍裂斧が当たるように仕向ける。そのままゾルトバは息絶え、不知火は一生かかってもこの過ちを償うとマイマイに誓う。しかし、マイマイはただ泣くばかりだった。
次の部屋ではハジャが待っていた。ハジャとアレックの因縁の対決である。この戦いは苦手だと部屋を早々に退散する他のメンバーだが、クークだけはハジャに残るように言われる。ハジャはクークの目の前で、クークの祖父を殺したのは他でもない、アレックであることを暴露する。しかし、クークはもしそれが本当だとしても、アレックは自分のおじいちゃんであると反論する。思惑がはずれたハジャは、奥義冥府転道が自分の最も愛するものをこの手で殺さない限り手に入らないとデタラメを言う。その言葉を信じたアレックは、クークがハジヤに向けて放った攻撃をわざと食らい、そのまま息絶えてしまう。クークは、ハジャに向かって冥府転道をかけようとするが、ハジャは今話したことがすべてデタラメだと高笑いする。しかし、死んだはずのアレックがムクッと起きあがり、ハジャに文句を言い始めたではないか。そう、アレックは死んだフリをしていただけである。そんな中、下界の三華仙のうちの2人がアレックたちの前に現れる。なんとハジャは三華仙の中の1人だったのだ。そして昔死にそうだったハジャを助けたのは他でもない、アレックなのだということを告げる。命の恩人にひどい仕打ちをしてきたと分かったハジャは、そのお礼にとクークに冥府転道を教えることを約束した。
次の部屋では水獣将バルバラが待っていた。バルバラはどうしても左京に水術の最高術である「凍結行」を教えて欲しいと言う。しかし、所詮バルハラは人間。凍結行を会得することはできない。バルハラは左京に戦いを挑むが、もはや神の力を取り戻した左京にかなうはずもなく、あっさりと破れてしまう。負けたバルバラは人間である自分を恨むが、左京はそんなバルバラを叱り、凍結行は無理でも別の意味での水術を極めないかとバルバラに手を差し出すのであった。
残ったのはハヤテとリリアンである。最後の階に行ってみると、そこに現れたのは風獣将リーであった。驚くリリアン。リリアンが長年探していた恋人がビドー軍の将軍の1人だったのだ。リーはハヤテの後ろにいる女性、つまりリリアンを幸せにしてくれるなら、潔く身を引くという。しかし、リリアンは自分のことをリサという名前で名乗っていたために、ハヤテはずっとリリアンのことを別人だと思っていたのだ。頭が混乱するハヤテ。リーはハヤテが雷神の息子だと知って、戦いを挑んでくる。ハヤテはリーを倒した。リーはハヤテに潔くリリアンを譲った。ハヤテはリーにリリアンを幸せにすると約束する。自分をモノのように扱わないでと怒るリリアンだが、ハヤテはリリアンを好きだと告白し、リリアンはこの戦いが終わったら自分の気持ちを打ち明けると言う。
いよいよ、ビドーとの対決の時がきた。ハヤテたちは、光と闇の戦いがすでに終了したことをビドーに話し、もはやビドー自身が存在せずに異次元空間を抜ければその存在さえもなくなってしまうことを告げる。しかし、それを冗談にしか受けとらないビドー。ハヤテとビドーは戦い、ビドーはハヤテに敗れる。「なぜ貴様らごとに虫けらに私の野望を打ち砕かれなければならない」と負けセリフを吐くビドーだが、もはや神の座は開いていなく、ブライも開かないことを知ると、異次元の玉を割ってハヤテたちを異次元空間に閉じ込めようとする。しかし、とっさにハヤテはビドーに飛びかかり、玉を粉々に割ってしまう。
キプロスに戻ったリリアン、左京、マイマイ、アレック、クーク、そしてバルバラと不知火、ハジャ。しかし、ハヤテとゴンザ、ロマールはいない。一見落着したはずの勇者たちだが、どこか哀愁が漂っている。リリアンはハヤテの「必ず帰ってくる」という言葉を待つという。
マイマイはナポリタンたちウォッシュ族の仲間、そして不知火と「招き猫大道芸団」を続けることになった。彼らの夢と希望溢れる芸はキプロスの人々に広く親しまれ永きに渡り繁栄したという。
クークはしばらくの間、ハジャのもとで冥府転道を習うために修行するという。彼は技を習得後、アレックのもとにいき、占い師の村で暮らす。そしてその後、占い師の町は念術師の町としても栄えたという。アレックは村に戻り、引退を考えたが、老いてもますます盛んとなり、クークが戻ってきてからもますます元気になる。当分死にそうもない。
左京はバルバラとダゴウ山に戻り、水術を伝授する。しかし、その後彼がこの地に住み着いたのか、それとも天界に戻ったのかは不明である。
1人、ハヤテの帰りを待つリリアン。しかし、いつまで経ってもハヤテは戻ってこない。あきらめかけるリリアン・・・そこにハヤテが天から勢いよく落ちてくる。「バカ・・戻ってきちゃったよ・・ハヤテが戻ってきちゃったよ・・」。ハヤテの胸に飛び込むリリアン。「もう絶対に放すもんか!私がハヤテが大好きだよ!」 彼らの物語はここから始まるのである。
なにか一気にネタばらしをしてしまい、リバーヒルソフトの方々、飯島健夫さん、もし「ブライ」をリメイクして出そうなんて思っていたのでしたら、大変ご迷惑をおかけしました。しかし、ブライを上巻だけで終わらせてしまった人に、是非ともすべてのストーリーを知ってもらいたかったのです。筆者はそれだけこのゲームが好きなのです!
飯島氏と荒木氏の写真:コンプティーク89年12月号付録より引用
SHOW-YAの写真:ログイン89年9月号より引用
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