パッケージの変遷


パッケージの形態座談会

88のソフトパッケージというのはいろいろな形態に変化してきた。その変遷をパソコンソフトコレクターの長瀬英二氏と共に座談会形式で話し合って見た。

座談会のメンバー

長瀬英二氏・・・約1000本のソフトを持つコレクター。本CD-ROMにも多大なる貢献をしていただいた。
Y.ROMI・・・本CD-ROMの編集者。



コレクターって何だ

(Y.ROMI):本日は遠くからこんな座談会のために来てもらいましてありがとうございました。

(長瀬):そのわりにはお茶の一杯もでてないな。

(Y.ROMI):・・・・いや、まぁ私と長瀬さんの仲じゃないですか!

(長瀬):でも親しき仲にも礼儀ありっていうけどな。

(Y.ROMI):わ、わかりました!(お茶を入れてくる) どうぞ。

(長瀬):ウム、よろしい。

(Y.ROMI):では、さっそくはじめたいんですけど、長瀬さんってソフトは何本くらいおもちなんでしたっけ?

(長瀬):そうだな、だいたい1000本くらいかな。

(Y.ROMI):全部箱とか説明書があるんですか?

(長瀬):当たり前だろ!コピー1000本もっててこんな堂々と座談会するかよ!

(Y.ROMI):いや・・たしかにそれはそうなんですけど(笑)。全部PC8801用のソフトなんですか?

(長瀬):いや、X1とかFM-7用のソフトも結構あるよ。昔のソフトパッケージなんて他の機種も全部同じだからね。特に88にはこだわっていないよ。

(Y.ROMI):88でもX1だも、パッケージの機種の文字が違うだけのがほとんどですからね。

(長瀬):まぁね。

(Y.ROMI):しかし、そんなに持っててなにするんですか?

(長瀬):なにって・・・・・老後に楽しむんだよ。

(Y.ROMI):あれ、もう老後のことまで考えているんですか?

(長瀬):うるさいなぁ・・このCD-ROMのパッケージはほとんど俺が提供したんだから、それで役だったじゃん。だいたいおまえ一本ももってないんだし。

(Y.ROMI):いや、金ないですから・・(貧乏)

(長瀬):別に金なんてそんなにかかってないよ。

(Y.ROMI):だいたい一本いくらぐらいだったんですか?

(長瀬):計算してないからわかんないけど、だいたい1000円ぐらいじゃないかな。安いのはタダだし、高いのは10,000円払ったやつもあるよ。

(Y.ROMI):けっこう安いんですね。

(長瀬):まぁほとんど8bit機が終わったころに集め出したから、ゴミ状態だったね。

(Y.ROMI):でも、いまは(西暦2000年)、ヤフーオークションとかでめちゃプレミアついてますよ。

(長瀬):ま、今から集め出したんじゃしょうがないんじゃい?



*昔のパッケージ

(Y.ROMI):話が全然違う方向に行ってるんで、ちゃんとパッケージのこと話しましょう。昔のパッケージって全部カセットケースでしたね。

(長瀬):そうだな、普通のカセットテープに一枚ペラの表紙説明書が入っているくらいだったかな。(写真参照)


(Y.ROMI):カセットの頃はパッケージで差別化しようという動きは見られなかったですね。

(長瀬):そうだな、カセットケースの大きさも小さいし、デザインも凝れなかったからしょうがないよな。それにゲームの説明っていっても数行で終わるようなものばかりだったから、マニュアルも薄かったしな。

(Y.ROMI):一番最初に衝撃を受けたパッケージってなんですか?

(長瀬):やっぱりエニックスのパッケージかな。あれをみたときは何か新鮮だった。カセットテープ版のソフトも、きちんとパッケージを作って他社よりもグレードの高さを表現しようとしたんじゃないかな。


(Y.ROMI):しかし、色がいいですね。昔の国鉄のL特急みたいな肌色と赤・・・。

(長瀬):おまえも例えが古いね。

(Y.ROMI):・・・・もう30ですから。

(長瀬):まぁそれはいいとして、エニックスのパッケージの特徴は軽いことだな。素材が紙でてきているし、中のプラスチックもけっこうチャチだけど、軽い。エニックスはたしか自社流通だったから、梱包で1度にまとめて運べるように軽い素材を選んだのかもしれないな。

(Y.ROMI):なるほど・・。いろいろと考えているんですね。

(長瀬):確かなことはわからないけどね。

(Y.ROMI):1983年ころから、ディスク版のソフトもたくさん普及してきましたよね。

(長瀬):ディスクだと自然とパッケージも大きくなるからデザインもいろいろ増えてきたな。それにこのころからアドベンチャーゲームやロールプレイングゲームが発売されて、ストーリーなんかも厚みがついてきたから、マニュアルもでかくなったし、箱も大きくせざるを得なくなった面もあるな。

(Y.ROMI):このころだと、まだ各ソフトメーカーも、どういう箱を作るかスタンダードみたいなものがなかったから、試行錯誤していたみたいですね。

(長瀬):特にすごいのは、日本ファルコムの「ぱのらま島」かな。


(Y.ROMI):あれは当時やたらと目立ってましたよね・・。

(長瀬):あの真ん中の「ねぇちゃん」はなんだったのかね。ゲームにも全然関係ないし(笑)。あのねぇちゃんに騙されて買ったヤツもいるのかもな。

(Y.ROMI):んーでもこれはやりすぎですね。

(長瀬):いや、そうでもないよ。昔のゲームってグラフィックが貧弱だった分、パッケージでイメージを補っていた部分もあると思うんだよね。「ぱのらま島」のねぇちゃんをみていると、「がんばろう」って思うじゃん。

(Y.ROMI):いゃ、別に思いませんけど・・・・。

(長瀬):・・・あとは実際みたことがないんだが、システムソフトの「珊瑚海海戦」のパッケージが同じくらいの大きさだったらしい。

(Y.ROMI):並べるショップも大変でしたね。

(長瀬):他にもかっこいいパッケージはあるよ。まずシステムサコムの「ヴァリアント」。これは98版だけどね。まるでレコードのジャケットだね。


(Y.ROMI):昔のシステムサコムのはどれもかっこよかったですね。ムーンボールとか、ブラウンズラン、WOOMも同じような感じでした。

(長瀬):あとメルヘンヴェイルもかなり個性的なパッケージだったな。


(Y.ROMI):なんかダンボールみたいな素材でしたね。

(長瀬):そうだな。他だと「倉庫番2」。これはおもしろい。立方体パッケージっていうのは、後にも先にもこれ一本じゃないの?。


(Y.ROMI):そうですね。シンキングラビットだとやっぱり「鍵穴殺人事件」のパッケージはとてもカッコよかったです。


(長瀬):お、いろいろ出てきたね。

(Y.ROMI):まぁ私も当時はレンタル屋に行って、指を食わえてパッケージをみてましたから・・・・

(長瀬):まぁ6000円もするソフトを高校生は買えないしな。

(Y.ROMI):まぁ後に違法になっちゃいましたけど。。

(長瀬):他のパッケージだとスタークラフトのは強烈だな。


(Y.ROMI):ええ、あの冊子のようなパッケージはすごい高級感溢れていますよね。

(長瀬):あのパッケージの発想というのはすごいと思うよ。まずディスク版しか発売しないということを前提にしている作りだしな。


(Y.ROMI):スタークラフトは一本もテープ版のソフトはないですしね。他のメーカーはあのパッケージは真似できなですね・・。

(長瀬):しかし、ディスクを収納しずらいパッケージで、中古で買うとディスクが落ちて抜けていたりしたんだよな(笑)。

(Y.ROMI):がはは。そりゃひどいですね。

(長瀬):スタークラフトのは当時14800円と高額だったし、いまではほとんど残ってないな。俺はソフトのコレクターの人と会うと、スタークラフトのソフトを何本持っているかで、だいたいその人のマニア度を計ってるよ。もちろん後期に発売された3800円の安物パッケージは却下だけどな。

(Y.ROMI):他には何かありますか?

(長瀬):俺はもっていないんだが、「ストンボール」っていうゲームのパッケージが丸い形をしていたらしい。

(Y.ROMI):私はシステムソフトの「ロードランナー」「チョップリフター」「ミッドナイトマジック」の3色のヤツが好きでしたね。


(長瀬):あー、忘れていたな。あのパッケージデザインはかなりグッドだな。色も赤、緑、青できれいだったし。


(Y.ROMI):なぜか三折になっているんですよね。でも初期のやつは、その上にパッケージカバーがあって、それをいちいち取るのが面倒だったですね。


(長瀬):あれは苦情がすごかったんだろうな(笑)。



本棚サイズのパッケージの増加

(Y.ROMI):1985年以降になると、だんだんパッケージの大きさも統一されてきましたね。

(長瀬):まぁ、逆にいうとそれまでがすごすぎたよね。ある製品でこれほど統一がない形態も珍しかったと思うよ。

(Y.ROMI):そうですね。このころだと本棚に入るくらいのサイズにだいたい落ち着いてきましたね。

(長瀬):このサイズのパッケージは「BOOK型」とでもいうかな。要するに、販売店の棚のサイズがみんな本棚サイズだったから、パソコンパッケージも自ずとこのサイズになっていったんだと思うよ。

(Y.ROMI):あんまりでっかいサイズを作ると販売店も置くのが大変でしょうしね。

(長瀬):それとこの時期、SSTとかTrinityとか、ソフトハウスが提携して流通コストを下げようという動きがあったじゃない?

(Y.ROMI):あ、ありましたね。いつのまにか消えていった・・。

(長瀬):こういう提携でパッケージの統一が図られていったという面もあるよね。

(Y.ROMI):そうですね、みんなで同じパッケージを使えば、コストも安くなりますし。でも、このころでも特徴的なパッケージはありましたね?

(長瀬):そうだな・・・まずはマジカルズゥのザ・スクリーマーかな。


(Y.ROMI):そうですね。このパッケージは超カッコいいですよ。本みたいになってて中にディスクがくりぬく形で入っているんですもん。

(長瀬):一緒についていたマンガもけっこうよかったな。

(Y.ROMI):ええ。あとはスクウェアの「Will」のパッケージは白くてなにか新鮮でした。

(長瀬):あれは逆転の発想だな。目立たせようとしたら、普通はいろいろと小細工するもんだが、真っ白で何も書いていないというのは、ホント、よく考えたよ。


(Y.ROMI):「ブラスティ」や「アルファ」は変わってしまいましたけど、ソノシートがついていて、サービス満点な会社でした。

(長瀬):あとはボーステックのレクリスはおもしろいな。


(Y.ROMI):たしか、中の発砲スチロールが色を塗ってなにかの模様になるようになっていたんですよね。

(長瀬):そうだな。ボーステックはけっこうおもしろいよ。このあと「トップルジップ」や「ザ・スキーム」では缶ケースだろ?


(Y.ROMI):しかもチョロQ(トップルジップ)までつけてましたね。

(長瀬):缶ケースの場合、購入するときはよく見えないから、あんまり店頭でのインパクトにはつながっていないと思うんだけどな。

(Y.ROMI):まぁ確かに。あとは「アートオブウォー」ですか。これ目立ち度ではナンバーワンじゃないですか?(笑)

(長瀬):あぁ、あれね。箱もでかいし、色もピンクだろ。ゲームとは思えないようなパッケージだったな。最初はびっくりしたよ。あの色使いは。


(Y.ROMI):まぁいかにもアメリカといった感じなんでしょうかね。

(長瀬):そうだな。しかし、87年以後はみなコスト削減のためにパッケージはほとんど統一されたな。

(Y.ROMI):そうですね。あまんりおもしろくなくなっちゃいましたね。



最後に

(Y.ROMI):いろいろと話してきましたけど、長瀬さんお気に入りのパッケージってのはなんなんですか?

(長瀬):・・・・・「ななこSOS」。


(Y.ROMI):え?なんですか?聞えませんけど・・。

(長瀬):い、いや、「ぱのらま島」か・・な。

(Y.ROMI):やっぱりそうですか。

(長瀬):と、ところで、おまえの好きなのはなんなんだ?

(Y.ROMI):そうですね~、「デイドリーム」とか「あしたのジョー」とか「キン肉マン」とか・・。

(長瀬):・・・・・・。おまえがクソゲーマニアなだけだろ。

(Y.ROMI):失礼しました。


パッケージ座談会いかがでしたでしょうか?めちゃめちゃな対談でしたので、意味不明も多数ですが、ご容赦をば・・。




ソフトの値段

PC88のソフトの値段というのは、現在ではどれくらいの市場価値があるのだろうか?1990年以降になって、88から98へメインマシンが移行すると、88のソフトはほとんど価値はなくなり、各レンタル屋や販売店ではまとめて安売りをしたりしていた。レンタル屋も廃業するところが続出し、このような店では一本100円ぐらいで叩き売りされていた。

しかし、このころにはすでに1983年あたりの古いソフトは手に入れにくい状態にあり、ソフマップがまだディスクソフトを扱っていた頃でも、「デーモンズリング」「鍵穴殺人事件」は、5,000円以上の値がついていたことも確かである(しかし、最後にはあの「タイムゾーン」が800円で売られていたのも筆者は目撃している)。

そして、ソフマップが中古ディスクソフトの販売をやめ、1995年以降は、市場にはほとんどPC8801のソフトは見かけなくなった。唯一購入する方法は、パソコン通信などで人から購入するか、地方のレンタル屋くずれの店に行くしか方法はなかった。

そして西暦2000年になってから、ヤフーオークションというインターネットオークションが開始された。ここで、我々は恐ろしい光景を目撃することになったのである。

昔のパソコンソフトが高いのである。あの「ゴミ」同然で売られていたソフトがびっくりするような値段で取引され始めたのだ。以下は筆者が目撃した激高ソフトである。


夢幻の心臓\100,000
タイムトンネル\50,000
ザ・病院\50,000
ファイナルロリータ\50,000
カオスエンジェルス\40,000
Expert88\37,000
アルファ\30,000
パックランド(8001mk2SR)\25,000
ミスティブルー\20,000
団地妻の誘惑\17,500
ファイヤークリスタル\17,000
ブラスティ\16,500
アドバンスドファンタジアン\16,500
ウィングマンスペシャル\15,500
WILL\15,000
ザース\15,000
Genji\15,000
ガルフォース\12,500
ウィングマン2\11,500
ヴァリス\8,250
コピーエイド\25,500
ファイルマスター\13,500
ロイヤルブラッド\100

アダルトゲームは軒並み高い。特にPSK、チャンピオンソフト、ジャストなどの人気メーカーは高騰が目立つ。また、かなりの数を販売したと思われるソフトでも高い。たとえば、「ブラックオニキス」「ブラスティ」「ヴァリス」などでもそれなりの値段がつくということは、このころのゲームがいかに市場に残っていないかということの証明だろう。しかし、逆もある。光栄の歴史シミュレーションなどは全く売れない。これらはさすがに持っていても価値がないと思う人が多いのだろう。まだ家の倉庫に昔のソフトが残っているアナタ。いまなら一攫千金も夢ではありませんぞ。

各パッケージ写真の著作権は各メーカーに帰属します。